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コロナ感染拡大で広がる企業の「脱東京」 その理由は

新本社のオフィスで働く「アド・プロモート」の社員たち=栃木県小山市で6月26日、浜中慎哉撮影

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 新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、本社などオフィスの「脱東京」を考える企業が増えている。その理由は何か。脱東京はどこまで進むのか。足元の動きを探った。【浜中慎哉】

本社を渋谷→栃木 固定費2~3割減

栃木県小山市に移転した「アド・プロモート」の本社=同市で6月26日、浜中慎哉撮影

 インターネット広告代理会社「アド・プロモート」は今年5月、本社を東京都渋谷区の繁華街、道玄坂から栃木県小山市郊外の国道4号沿いに移転した。「テレワークがこれだけ普及した今、もう東京に本社を置く利点はない。これからは栃木を拠点にやっていく」。吉田英樹社長(50)は、こう話す。

 吉田社長は広告代理店で営業職をしていたが脱サラし、2005年に会社を設立。最初は生まれ育った小山市に本社を置きつつも、「ネット関連の仕事をするなら、東京に足場がないと相手にされない」と考え、東京都新宿区に支店を開いた。東京の仕事が増えたため、08年に本社も小山市からネット関連企業が集積する渋谷区のオフィスビルに移した。「念願の渋谷に出たことで、ようやく同業他社と対等に戦える土俵に立てた。これからが勝負だと思っていた」と振り返る。

 新型コロナの影響で状況は一変した。営業先や取引先も次々と在宅勤務を導入する中で、「高い賃料を払って渋谷に本社を置く意味はない」と考え方が変わった。もともと「即断即決」の性格でもあり、4月中旬には小山市への本社移転を発表した。約20人いた社員を完全テレワークにしたり、小山市の本社勤務などに異動させたりした結果、オフィスの賃料や社員の交通費などの固定費は、昨年の同時期と比べて2~3割も減らすことができた。

 小山市への移転後、都内の取引先とはリモートでやり取りしており、大きな支障はないという。栃木県内の企業は地元密着で、ネット広告の効果に懐疑的なところが多かった。しかし、新型コロナ感染拡大を機にネット広告に力を入れ始めた企業が増えているといい、「新たな受注が期待できる。私にとって新型コロナでの変化は好機でしかない」と意欲を見せている。

「アド・プロモート」の本社が以前に入居していた繁華街にあるオフィスビル(中央)=東京都渋谷区で(同社提供)

東京支社廃止・通勤圏外への移住容認も

 「脱東京」は本社の移転だけではない。広島市のウェブサイト制作会社「ファブリックアーツ」は今年3月、東京都渋谷区のオフィスビルにあった東京支社の賃貸契約を解除した。8人の社員全員を在宅勤務に切り替えたことで、オフィスがいらなくなった。同社担当者は「東京は取引先もテレワークが普及しており、支社のオフィスがなくても十分やっていける」と話す。

 社員の通勤圏外への移住を認める企業も出ている。システム開発を手掛ける「ジョイゾー」(東京都江東区)は、社員15人全員がテレワークできることになり出社が不要になった。本社オフィスは残すものの、社員の地方移住を認める。神奈川県在住の20代のエンジニアの男性は、家族で大分県への移住を決めた。夫と2人で同社を経営する四宮琴絵さん(43)も東京都から、一家での地方移住を検討し始めた。四宮さんは「いつかは、ふるさとの北海道釧路市に戻りたいと思っていたが、具体的に考えるようになった」という。

 大手企業では、大同生命保険が7月から、地方在住の社員でも本社の業務ができる「どこでも本社」制度を始めた。感染拡大を契機に、社員の柔軟な働き方を認める。

 

本社「転出超過」 東京は4年連続

 都産業労働局によると、全国の企業約162万社のうち、東京に本社に置く企業は15.3%の約25万社。資本金10億円以上の大企業に限ると、約5割が東京に本社を持つ。東京は取引先の海外企業の拠点が多く、中央省庁へのアクセスが良いなどのメリットがあるからだ。

 だが、実は新型コロナの感染拡大前から、脱東京の動きは出ていた。帝国データバンクによると、19年に東京都から他県に本社機能を移転した企業は629社で、転入した580社より49社多かった。転出が転入を上回る「転出超過」は16年から4年連続だ。いすゞ自動車も業務効率化のため22年に、東京都品川区の本社を横浜市へ移転することを決めている。

 調査を担当した帝国データバンクの飯島大介・情報統括課副主任は「都内は賃料が高いことから、都内へのアクセスの良い神奈川、千葉、埼玉、茨城など関東近郊の県に移る会社が多い」と説明する。

本社移転先 多くは「関東圏」

 地方の自治体も企業誘致のため、独自に優遇制度を設けるなどの取り組みを進めている。茨城県は、AI(人工知能)など先端技術を持つ企業が、本社や研究所を県内に移した場合、最大50億円を支援する。過去2年間では16社を支援した。うち9社は東京からの企業だ。県担当者は「新型コロナを機に本社移転を考える会社が増えることが期待される。さらに誘致に力を入れたい」と話す。

 ただ、本社の東京からの行き先は、関東圏以外には広がっていない。帝国データバンクの調査では、「大阪圏」(大阪府、京都府、兵庫県、奈良県)と「名古屋圏」(愛知県、岐阜県、三重県)の圏域レベルでみると、転入より転出が上回る「転出超過」だ。

 政府は15年度から、東京23区から主に関東圏以外に本社を移した企業を対象に税制を優遇する「地方拠点強化税制」を始めて後押ししている。内閣府の担当者は「東京23区から関東圏以外への移転をどれだけ増やすかが課題だ」と強調する。

 都知事選では、企業の「脱東京」を積極的に訴える主要候補はいない。現職の小池百合子氏は「金融人材の積極的誘致など国際金融都市力強化の新展開」、元熊本県副知事の小野泰輔氏は「アジアにおいて金融、ICT(情報通信技術)、AIなどの最先端を走る企業の立地を促進する」として、いずれも金融分野などでの人材・企業の東京集中の重要性を主張している。元日本弁護士連合会会長の宇都宮健児氏は、企業と限定せずに「都市の膨張と都心一極集中に歯止めをかける」と訴えている。

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