夕刊文化
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詩の橋を渡って
根源的な深い孤独感=和合亮一(詩人)
2022/6/23 13:14 1282文字◇6月明け方の雨は散ってしまった花びらの後を追うように夢のなかの夏の地図を濡らしていった 明け方に雨が降った。音で目が覚めたのだが、不思議とまだ夢が続いているような気がした。寝床のなかでうとうとしていると、様々(さまざま)な記憶がとめどなく浮かんできた。ふと現実と非現実と雨音の寂しさが入り混じるよ
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没後200年・伊能忠敬を歩く
/42 東京・渋谷 かつて水車のあった風景
2022/6/23 13:14 1720文字伊能隊が大山街道を測量した1800年代前半の東京・渋谷は、江戸の西外れの田畑が広がるのどかな地だったとされる。伊能図の一つ『江戸府内図』を開くと、中渋谷村を通る街道沿いには町家が並ぶが、周囲は薄緑色に彩色され、木々も点在する。伊能忠敬の同時代人の幕臣、村尾嘉陵が記した散策紀行『江戸近郊道しるべ』の
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書の世界
「全国書美術振興会 五十年の歩み」刊行 ビジュアルに
2022/6/23 13:14 914文字「全国書美術振興会 五十年の歩み」=写真=が刊行された。会派を超えて全国の書家が集う「日本の書展」が第50回を迎えた記念の出版。時代を反映してか、ビジュアル重視の構成となっている。 全国書美術振興会の主な事業である「日本の書展」▽「日本の女流書展」▽「国際交流と海外展」▽「記念展・特別展」▽「書の
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田宮文平 三回忌追悼シンポ開く
2022/6/23 13:14 629文字「田宮文平 三回忌追悼シンポジウム」がこのほど、東京・有楽町で開かれた=写真。 田宮文平さんは1937年、東京・小石川生まれ。美術書の編集者を経て、書の評論活動を始め、「『現代の書』の検証」「書―二十世紀の巨匠たち」「現代書家の素顔」「忘れ得ぬ書人たち」などの著書で知られる。毎日新聞文化欄の「書の
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Interview
吉本ばななさん 下町の絶妙な距離感 エッセー集『私と街たち(ほぼ自伝)』
2022/6/22 13:03 1494文字何気ない日常や身の回りの世界を見つめ、人生の機微を柔らかな筆で描いてきた吉本ばななさん。このほど刊行したエッセー集『私と街たち(ほぼ自伝)』(河出書房新社)では、街の思い出を軸に自身の半生を振り返っている。 「ほぼ」とあるように、本書は時系列に沿った「自伝」ではない。小説家としての歩みや創作に関す
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名著を探訪
戦後77年 太宰治「トカトントン」/上 軍国主義を消す音
2022/6/22 13:03 1809文字戦争にまつわる傑作を取り上げる本連載、今回は太宰治晩年の短編小説「トカトントン」(新潮文庫『ヴィヨンの妻』などに収録)を取り上げる。戦闘は終わっても、戦争は終わらない。人の体、あるいは心に残った傷は容易にはいえない。そんな「未完の戦争」の実相を教えてくれる作品である。 物語は26歳の青年である「私
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アートピックス
バンカートの池田修さんをしのぶ6日間 人と人、つないだ人
2022/6/22 13:03 780文字横浜を拠点に現代美術の発表の場をつくってきた、アートディレクターで、NPO法人BankART(バンカート)1929前代表、故・池田修さん。今年3月に64歳で死去した池田さんの足跡をたどり、バンカートの未来を考える会が横浜市内で6日間にわたって開かれた。 池田さんは1957年、大阪市生まれ。2004
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Topics
「保守」政治家たちの精神文化 過去の「帝国」に郷愁 歴史研究家、山崎雅弘さんと考える
2022/6/22 13:03 1579文字何とも景気のいい話である。安倍晋三元首相ら「保守」派が唱える「防衛費倍増」論だ。コロナ禍に加え、物価高が私たちの暮らしを追い詰めているさなかだというのに、なぜこんな発想になるのか? 新著『未完の敗戦』(集英社新書)で彼らの精神文化を読み解いた戦史研究家、山崎雅弘さんと考えた。 今年度の防衛費(当初
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竹の作品「グッチ並木」で 東京・銀座
2022/6/22 13:03 323文字竹を用いた作品で世界的に知られるアーティスト、四代田辺竹雲斎さん(1973年生まれ)による大型インスタレーションが東京都中央区銀座のブティック「グッチ並木」に展示されている。 ブランドを象徴する素材である竹を用い、同店の開店1年を祝って設置された。伝統を表す黒竹と、未来を表す白竹による計約5000
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今どきの歴史
神社の起源と神観の変遷 覆される通説的景観
2022/6/20 13:12 1704文字神社の起源や変容の探究は宗教史、古代史、考古学、建築史、民俗学の大テーマだ。現状、「古くは祭場に立てたサカキなどの依(よ)り代(しろ)に神を迎え、祭り後に片付けた」「神社には初め社殿(本殿)がなく、仏教建築の影響で造られ始めた」といった見方が強い。 こうした通説に再考を促す論考がある。国学院大神道
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Topics
アートの労働問題問う映像作品 「共に生きる」とは何か 差別や抑圧 体験者らの対話
2022/6/20 13:12 1590文字セクハラにパワハラ、長時間勤務。近年、表面化しているアート業界の労働問題を扱った映像作品が公開された。協働の可能性とその限界をテーマに制作してきた美術家、田中功起さん(46)の新作「事後勉強会」だ。異なる人々が共に生きるとはどういうことか。さまざまな体験を持つ人たちの対話を記録した本作は、この普遍
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特攻隊員の手紙や遺書 東京・新宿で展示
2022/6/20 13:12 690文字第二次世界大戦下の特攻隊員の遺品を展示する企画、「息子として、兄として、父として 特攻隊員が遺(のこ)した言葉 知覧特攻平和会館所蔵資料展」が平和祈念展示資料館(東京都新宿区西新宿2)で開かれている。 陸軍の特攻基地があった南九州市知覧町の同会館は、戦死した特攻隊員1036人の遺影や遺書、遺品など
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クリップ
展覧会 すごい!たのしい!ちょっとヘン?!○○なカメラ大集合ほか
2022/6/20 13:12 683文字■すごい!たのしい!ちょっとヘン?!○○なカメラ大集合 28日~10月16日、東京都千代田区一番町の日本カメラ博物館(03・3263・7110)。変わった形状や特殊な操作性を持つカメラを紹介する。1937年にスイスの時計メーカーが作った精緻なカメラ「コンパス」や78年に日本のセディック社が作った缶
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クリップ
もよおし 「熊野大学」夏期講座 4年ぶり開催
2022/6/20 13:12 292文字■「熊野大学」夏期講座 4年ぶり開催 8月5、6日、和歌山県新宮市下本町2の丹鶴ホール。作家、中上健次が創設した文化組織「熊野大学」恒例の夏期特別セミナー。2019年は台風、20、21年は新型コロナウイルスの影響で中止されたため4年ぶりの開催。講師は、いとうせいこうさん、奥泉光さん、紀和鏡さん、高
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書の世界
柴山抱海「聞を書く」書展 1文字に挑む難しさ
2022/6/16 13:05 1040文字柴山抱海「聞を書く」書展(18~23日、東京・日本橋のお江戸日本橋ギャラリー)は、ひたすら「聞」という1字に挑んだ企画性あふれる個展。 柴山抱海さんは1941年、鳥取県生まれ。手島右卿に師事。毎日書道展審査会員、独立書人団参事、山陰書人社主宰。 「3年前くらいから、『聞』の字に取り組み続けていまし
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Topics
鶴見俊輔生誕100年 反戦運動「素朴さ必要」 雑誌評まとめた『日本の地下水』刊行
2022/6/16 13:05 1443文字6月25日は哲学者、鶴見俊輔(1922~2015年)の生誕100年に当たる。没後も著書や関連書は継続的に刊行されてきたが、今月は記念出版として、単行本未収録の文章を多く含む評論集『日本の地下水 ちいさなメディアから』(編集グループSURE)が出た。さらに評論集『日本思想の道しるべ』、評論家、吉本隆
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Topics
「発掘された日本列島」展 「魔の一日」生々しく 旧石器時代から近代まで14遺跡速報
2022/6/16 13:05 1571文字遺跡発掘の最新事情を紹介する「発掘された日本列島2022 調査研究最前線」展(文化庁など主催)が、さいたま市の埼玉県立歴史と民俗の博物館で開かれている。コロナ禍で文化財のオンライン探訪が定着し、そのシステムも充実してきたが、実物から受ける刺激はやはり別物だ。 近年の発掘成果としては、旧石器時代から
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ニッポンへの発言
キーワード 吉本隆明、没後10年=中森明夫
2022/6/15 13:07 1710文字重信房子が出所した。2000年に逮捕されて以来の満期出所である。日本赤軍の元最高幹部だ。くしくも今年は連合赤軍が起こした浅間山荘事件から50年である。日本赤軍と袂(たもと)を分かった別組織だが、重信の親友・遠山美枝子が(総括と称する)凄惨(せいさん)なリンチにより殺害されていた。当時の若者たちの政
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Topics
「生活のデザイン」展 道具が伝える強さと過ち ハンセン病療養所での創意工夫
2022/6/15 13:07 1859文字手足に知覚まひや変形を引き起こすハンセン病。療養所に暮らした患者や回復者らは日常生活で直面する不自由をさまざまな道具を活用して乗り越えてきた。東京都東村山市の国立ハンセン病資料館は企画展「生活のデザイン」を開き、実際に使われた道具を通して使い手の人生を想起させる場を提供している。8月31日まで。
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建築 シェルターインクルーシブプレイス コパル 個性認める遊び心=評・五十嵐太郎
2022/6/15 13:07 947文字今春オープンした山形の児童遊戯施設、シェルターインクルーシブプレイス コパル(以下、コパルと表記)を訪れた。障害の有無に関係なく、すべての子どもが楽しめる無料の公共施設である。まず遠くからコパルを見ると、屋根全体がうねる丘のようなランドスケープになっており、蔵王連峰の山並みと呼応する。建築面積は3
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