朝刊科学・医療面
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科学の森
任期付き、子育ての壁大きく 女性研究者、キャリア中断余儀なく
2022/6/23 02:01 2695文字仕事と子育ての両立は女性の社会進出の大きな課題だ。とくに女性研究者にとって、子育ては高いハードルになっている。任期付きポストに就くケースが多く、短期間で成果を出さなくてはならない一方、出産や育児で研究の中断を余儀なくされるためだ。 理化学研究所(埼玉県和光市)で研究員をしている、宇宙物理学者の木邑
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いきものと生きる
トビが人なれするわけ=五箇公一
2022/6/23 02:01 1293文字先日、鳥取市内の公園で家族と昼食を楽しんでいた女性が、手にしたハンバーガーを背後から飛んできたトビに奪われ、ほおに傷を負ったという新聞記事を見た。トビが人の食べ物を強奪するという事件は、神奈川県の江の島でも頻発してニュースになっている。 トビは、俗称で「トンビ」とも呼ばれる猛禽類(もうきんるい)の
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数字を読み解く
14
2022/6/23 02:01 459文字日本を含む多くの国では、ヒトの受精卵を体外で14日を超えて培養することを禁止する「14日ルール」がある。受精卵で最初の組織として、背骨の「もと」ができるのが受精後14日ごろだ。ヒトを実験に使うことは倫理上禁じられているが、これ以前は「ヒトとしてのアイデンティティーがない」として例外的に研究利用を認
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科学の森
「宇宙天気」生活にどう影響? インフラに深刻な被害、大停電も
2022/6/16 02:00 1989文字「あすの宇宙は大荒れになりそう」――。宇宙天気予報と呼ばれるシステム整備の強化に、日本や各国が乗り出している。もちろん、宇宙にくもりや雨の日があるわけではない。「宇宙天気」とは何を指すのか、私たちの生活にどんな関係があるのだろう。 東京都小金井市にある、情報通信研究機構(NICT)の宇宙天気予報セ
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お宝拝見
水晶硯 山梨大
2022/6/16 02:00 345文字水晶の産出地として知られる山梨県。山梨大には、1927年に建設された「水晶庫」があり、貴重な水晶の鉱物結晶や工芸品計22点を保管・展示している。主に県内の薬種商、百瀬康吉から大正期に寄贈を受けたものだ。 その一つが、透明感あふれる水晶硯(すずり)だ。すでに閉山した竹森鉱山(甲州市)で採掘された水晶
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坂村健の目
未来のロボットの姿は
2022/6/16 02:00注目の連載 1165文字電気自動車で有名な米テスラ社は、開発を続けていた人工知能(AI)制御の人型ロボット「オプティマス」のお披露目を9月末に行うと発表した。現時点で公開されているデザインのシルエットは人間そのもの。だから、白い全身タイツをまとった漆黒ののっぺらぼう姿が余計に不気味だ。 先行する米ボストン・ダイナミクス社
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科学の森
「科」越え遠縁種、接ぎ木可能に 再生の仕組み解明、新品種へ期待
2022/6/9 02:01 1793文字大抵の動物は手足などの器官を失うと再生できないが、一部の植物は、枝や根から体全体を再生することができる。近年の研究で、その驚異の再生能力の秘密がわかってきた。これまで不可能と考えられてきた技術への試行錯誤も始まっている。 植物の再生能力を使った技術として、古くから知られているのが接ぎ木だ。土台とな
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PICKUP
MAIT細胞、がん抑制か iPS使い増殖、マウスで確認 独協医科大
2022/6/9 02:01 1028文字<ピックアップ> 免疫をつかさどるT細胞の一種で、ヒトの体内に多く存在するもののその働きがよくわかっていなかった「MAIT(マイト)細胞」が、がんの転移を抑制する可能性があることをマウスの実験で確かめたと、独協医科大の研究チームが発表した。 MAIT細胞は培養などで増やせないことが難点だったが、チ
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PICKUP
米ボーイング社、来年有人飛行の予定 無人試験の宇宙船帰還
2022/6/9 02:01 473文字<ピックアップ> 米航空宇宙大手ボーイングが開発中の新宇宙船スターライナーが5月25日、地上と国際宇宙ステーション(ISS)を往復する無人の飛行試験を終えて米西部ニューメキシコ州に着陸、帰還した。同社幹部は記者会見で「極めてうまくいった」と評価。結果を分析した後、年内に有人試験の機体を準備し、来年
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科学の森
どうなる、露の学術的孤立 侵攻影響、国際協力停止の動き
2022/6/2 02:01 2464文字ロシアによるウクライナ侵攻の影響で、欧州を中心にロシアとの研究協力を停止する動きが広がっている。旧ソ連時代にも研究が海外から孤立し、分野の低迷や若い研究者が育たないなどの事態を招いた。今回の侵攻はロシアの科学技術にどのような影響をもたらすのか。歴史をひもときながら、科学史の専門家と考えた。 文部科
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暮らしの中の科学
なぜガラスは透明? 液体を急速冷却し、非晶質に
2022/6/2 02:01 833文字「冷やし中華始めました」の張り紙が出始め、ガラスの食器で涼を呼びたい季節だ。ガラスはなぜ透明なのだろう。 「それは、水が透明な理由と一緒です」。解説してくれたのは、ガラス製品メーカーの勤務経験もある内野隆司・神戸大教授(固体化学)だ。 物質は温度が高まるにつれ、分子や原子の運動が活発になり、固体、
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炭素でメビウスの輪 名大・北大チーム、世界初合成
2022/6/2 02:01 405文字帯にひねりが加わり環状になった「メビウスの輪」の形の炭素でできた分子を世界で初めて合成したと、名古屋大や北海道大などのチームが5月19日付の英科学誌に発表した。「メビウスカーボンナノベルト」と命名。これまでの炭素物質にはない性質を持つ可能性があるという。 名古屋大トランスフォーマティブ生命分子研究
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科学の森
初期宇宙観測へ「巨大な目」 「ハッブル」後継望遠鏡JWST
2022/5/26 02:00 1819文字ハッブル宇宙望遠鏡の後継機として開発されたジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)の観測が2022年夏にも始まる。総額1兆円超の巨大プロジェクトで完成した巨大な「目」が、さまざまな天体を捉え、人類の地平線を広げると期待されている。 JWSTは米航空宇宙局(NASA)、欧州宇宙機関(ESA)、カナ
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いきものと生きる
養蜂業の脅威 外来スズメバチ=五箇公一
2022/5/26 02:00 1253文字4月28日と今月6日、外来昆虫ツマアカスズメバチの女王が相次いで福岡県内で発見された。これはかなり深刻な事態と捉える必要がある。 ツマアカスズメバチは東南アジアから中国南部が原産地とされ、2000年代に入ってから、韓国や欧州に侵入して分布を広げている。いずれも何らかの物資に女王バチが潜んでいて、移
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数字を読み解く
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2022/5/26 02:00 432文字日本国内で2020年1月に始まった新型コロナウイルスの流行。2年以上がたった今も毎日、数万人の感染者が確認されている。 感染しているかどうかを調べる手法として、広く使われているのがPCR検査だ。もともとは遺伝子を増幅させるための手法で、鼻の粘膜などから取ったわずかな量の検体であっても、含まれるウイ
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科学の森
天の川銀河の「中心」撮影 ブラックホールの影直接観測
2022/5/19 02:01 2139文字私たちが住む天の川銀河の中心にあるブラックホールの影の撮影に、日米欧などの国際研究チームが成功した。チームは2019年、別の巨大銀河M87のブラックホールで初撮影に成功している。二つの「黒い穴」は、宇宙や銀河のどんな謎に迫るのだろうか。 ドーナツ状のオレンジ色の光に囲まれた「黒い穴」がスクリーンに
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坂村健の目
軍のDXが見せたもの
2022/5/19 02:00注目の連載 1185文字「デジタルトランスフォーメーション(DX)」という言葉は2004年に使われたのが最初とされる。しかしそれ以前から「最新のデジタル技術を前提に、やり方レベルからの組織再編」を文字通り命がけで進めてきた、負けを許されない組織がある。米軍だ。01年に米国防長官府戦力変革局が創設され「米軍トランスフォーメ
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お宝拝見
日本初の海底電信ケーブル KDDI
2022/5/19 02:00 325文字1871年、デンマークの通信会社が国際通信用に、長崎―上海に日本初の海底電信ケーブルを敷設した。英仏間のドーバー海峡に、世界初のケーブルが敷設されてから20年後のことだ。 ケーブルは銅製で直径3.8センチ。樹木由来のゴム状の樹脂「ガタパーチャ」で覆っている。ケーブルで伝わる微弱の電気信号に電磁石が
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PICKUP
常温常圧でアンモニア生産 再生エネで連続合成も 東大教授研究
2022/5/12 02:01 1117文字<ピックアップ> 燃焼時に二酸化炭素(CO2)を排出しないため、発電や船舶向けのクリーン燃料として注目を集めるアンモニア。生産に高温高圧を必要とするなど、環境負荷が大きいことが課題だったが、東京大の西林仁昭(よしあき)教授(分子触媒)は、常温常圧で合成反応を連続させる研究を進め、将来は再生可能エネ
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科学の森
無尽蔵な原料で次世代電池 「マグネシウム」改良し出力維持
2022/5/12 02:01 1802文字資源量がほぼ無尽蔵で、取り扱いが簡単なマグネシウム電池は、次世代電池の呼び声が高まっている。東京工業大の矢部孝名誉教授(数値流体力学)は、従来の約10倍の出力を誇る独自の電池を開発、製品化した。マグネシウム電池が切り開く未来の循環型社会とは。 マグネシウムは、ジュラルミンケースや自動車、航空機の部
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