朝刊科学・医療面
-
科学の森
ウイルスの力でがん撃退 東大発、逆転の発想の治療法
2023/6/1 02:01 1753文字人に病を、社会に混乱をもたらす厄介者・ウイルス。しかし、その性質を変えることで、がん治療に使える可能性が見えてきた。悪性の脳腫瘍では新薬も登場。ウイルスの力でがんを撃退させる逆転発想の治療法に迫る。 2022年8月、米医学誌ネイチャー・メディシンに掲載された論文は大きな注目を集めた。 脳内にできる
-
暮らしの中の科学
アジサイの色はなぜ変わる? 土の酸性度のほか残る謎も
2023/6/1 02:01 808文字青、紫、ピンク、赤……。梅雨を彩るアジサイの色は七変化。「移り気」の花言葉を持つこの植物の色はどのように決まっているのだろう。 「最も影響が大きいのは土の酸性度。土の中に溶け出したアルミニウムを吸収する量の大小で色が変わる」。愛知工業大学の吉田久美教授(天然物化学)はそう解説する。 アジサイは日本
-
広葉樹残せば鳥類維持 「人工林伐採と生物保全両立」
2023/6/1 02:00 474文字木材生産のために人工林を伐採する際、針葉樹に混ざって自然に生えている広葉樹を少し残しておくと鳥類の生息数が維持されるとの研究成果を、森林総合研究所などの研究チームが米生態学会誌に発表した。チームの山浦悠一・森林総研主任研究員は「木材生産と生物の保全の両立が可能であることを示す成果だ」と語る。 チー
-
科学の森
関東大震災時の進講原稿発見 「地震博士」防火対策を訴える
2023/5/25 02:01 1789文字1923年9月の関東大震災の翌月、「地震博士」として有名だった今村明恒東京帝国大(現東京大)助教授が皇太子の裕仁親王(後の昭和天皇)に緊急で進講した際の手書き原稿が見つかった。孫の英明さん(88)=東京都在住=が自宅に残る遺稿の中から発見した。 原稿「一般地震と関東大地震とに就(つ)いて」は計20
-
青野由利の時を駆ける科学
「脱原発」ドイツと「回帰」の日本
2023/5/25 02:00 1757文字ここは書かないわけにはいかない。ドイツが4月15日に脱原発を達成した。「とうとうその日がきたのか」と感慨深い。 思い出すのは2015年、ドイツに「エネルギーベンデ(大転換)」の取材に出かけた時のことだ。国内最大の電力会社「エーオン」のエネルギー政策担当者が淡々と語っていた。「個人的には原発はクリー
-
-
科学の森
氷の世界で生命の起源探る 木星3衛星へ向け「JUICE」出発
2023/5/18 02:01 1738文字この広い宇宙に地球外生命はいるのだろうか。私たち地球の生命はいかにして生まれたのか――。そんな疑問に迫る探査機が4月に打ち上げられた。向かうは太陽系最大の惑星、木星と、その周りを回る三つの氷の衛星だ。一体どんな新発見が待ち受けているのだろう。 4月14日、南米フランス領ギアナから欧州宇宙機関(ES
-
PICKUP
ブラックホールのガス円盤とジェット 初の同時観測
2023/5/18 02:01 574文字<ピックアップ> 地球から約5500万光年離れたM87銀河の巨大ブラックホールで、周囲のガスが吸い込まれてできる「降着円盤」と、近くから高速で噴出するガスの「ジェット」を初めて同時に捉えたと、国立天文台などの国際チームが4月26日付の英科学誌ネイチャーに発表した。それぞれの現象の関連については謎が
-
PICKUP
国連大報告書 ボトル水市場1.7倍 109カ国、過去10年で
2023/5/18 02:01 622文字<ピックアップ> 世界でペットボトルなどに入った水の市場規模が2030年までに現在の2倍近くに増え、地下水の枯渇やプラスチックごみ問題などを悪化させる懸念があるとの報告書を国連大の研究グループがまとめた。「ボトル入りの水を買えない貧しい人との間で不平等を拡大させ、飲み水に関する持続可能な開発目標(
-
科学の森
植物の耐性、お酒でアップ エタノールが「生物刺激剤」に
2023/5/11 02:01 1770文字「生物刺激剤」という物質や微生物が注目されている。植物に働きかけて環境ストレスへの耐性を高める働きがあり、世界の農業に変革をもたらすと期待されている。その候補に、ある「身近な液体」が名乗りを上げているという。いったいなんだろうか。 理化学研究所のチームは5年ほど前、効率のよい生物刺激剤を探す実験を
-
青野由利の時を駆ける科学
植物はストレスで叫ぶ?
2023/5/11 02:01 1049文字作家で文化人類学者の上橋菜穂子さんの最新作「香君」は、香りで万象を知る少女が主人公だ。テーマは香りを使った植物のコミュニケーション。虫に食われた植物が香りで虫の天敵を呼び寄せる。それを感じる少女の世界が印象深い。 植物が化学物質を介して害虫を防いだり、他の植物に影響を与えたりする現象は現実の世界で
-
-
迷走プルトニウム
プルサーマル燃料確保できず
2023/5/4 02:01 1534文字<科学の森> プルトニウムを原発で利用するプルサーマル発電で、フランス南東部の燃料加工工場「メロックス工場」で不良品が相次いでいる影響が国内で尾をひいている。2月に電力各社が公表した計画によると、2024年度はプルサーマルに使う新燃料を全く確保できなかった。25年度以降には利用計画があるものの、製
-
暮らしの中の科学
葉はなぜ緑色? 光合成で吸収されず漏れる
2023/5/4 02:01 839文字新緑がまぶしい季節だ。草木の鮮やかな緑は私たちを癒やしてくれる。そもそも、植物の葉はなぜ緑色をしているのだろうか。 「葉から緑色が『漏れ出る』からです」。植物の生態に詳しい寺島一郎・東京大特任研究員(植物生理生態学)は話す。そこには、光合成の仕組みが深く関わっている。 光合成は、植物の中にある「葉
-
コロナの起源、分からず 中国、武漢市場の検体解析
2023/5/4 02:00 465文字中国疾病予防コントロールセンターのチームは4月5日、新型コロナウイルスの集団感染が初めて確認された湖北省武漢の「華南海鮮卸売市場」で流行初期に採取していた検体の分析結果を英科学誌ネイチャーに発表した。タヌキなど宿主となり得る動物がいたことを確認したが、「これらの動物が感染していたと証明できない」と
-
科学の森
世界の開発競争でトップ狙う 理研が国産初の量子コンピューター
2023/4/27 02:01 1813文字膨大な計算を瞬時にこなす量子コンピューターの国産初号機を理化学研究所が開発し、インターネットのクラウド上で使用が始まった。世界で開発競争が激化する中、後れをとっている日本は存在感を示すことができるのか。 「こちらから命令を送って、結果を読み出しています」。3月27日に埼玉県和光市の理研量子コンピュ
-
青野由利の時を駆ける科学
絶滅鳥「ドードー」復活の狙い
2023/4/27 02:01 1490文字引き出しを整理していたら、ドードーのかわいいピンバッジが出てきた。20年ほど前、英オックスフォード大の自然史博物館で購入した覚えがある。 ドードーはインド洋の島国モーリシャスに生息していたが、人間が入ってきたことで17世紀に絶滅してしまった飛べない大きな鳥だ。博物館には標本が残されている。 そのず
-
-
PICKUP
「ベートーベンは肝硬変」 毛髪ゲノム解読で死因推定 国際チーム
2023/4/20 02:00 647文字<ピックアップ> 作曲家ベートーベン(1770~1827年)の髪の毛からゲノム(全遺伝情報)を解読したと、ドイツなどの国際チームが3月22日、米科学誌カレントバイオロジーに発表した。肝臓病のリスクを高める遺伝子変異やB型肝炎ウイルス感染の形跡を発見。大量飲酒の言い伝えもあり、これらが肝硬変での死亡
-
科学の森
含まれていた水と「生命のもと」 リュウグウ試料、「起源」解明のカギに
2023/4/20 02:00 1766文字探査機はやぶさ2が小惑星リュウグウから持ち帰った試料を、日本を中心にした複数のチームが初期分析した結果がまとまった。他天体の物質を持ち帰るサンプルリターンは、太陽系や生命の起源の謎を解くカギになると期待される。その謎にどこまで迫れたのか。 「最も着目すべき点は水の存在。46億年前の水です」 3月2
-
PICKUP
PM2.5吸入で肺がん進行か 遺伝子変異に影響
2023/4/20 02:00 469文字<ピックアップ> 微小な粒子状の大気汚染物質「PM2・5」にさらされると、肺がんの原因として知られる特定の遺伝子の変異が影響を受けてがんの形成が進むとみられるとの研究結果を、英フランシス・クリック研究所などのチームが5日付の英科学誌ネイチャーに発表した。予防法の開発につながる可能性があるとしている
-
科学の森
チャットGPTの未来と懸念 高精度単語予測で「自然な対話」
2023/4/13 02:01 1775文字まるで人間と会話をしているように自然な文章を作成できる対話型AI(人工知能)「チャットGPT」が、世界を席巻している。いったいどんな仕組みなのか。どれだけの能力を秘め、われわれの生活を変える存在となりうるのか。 「おいしい卵焼きの作り方を教えてくれるかな」 記者がチャットGPTに尋ねると、「もちろ
-
青野由利の時を駆ける科学
生き物が伝えるメッセージ
2023/4/13 02:01 1480文字モンキチョウ3月2日、モンシロチョウ3月6日、ナミアゲハ3月8日、ウグイス3月8日、サクラ3月13日――。 これは今年、私が勝手に観測した「初見」「初鳴き」「開花」の記録だ。たまたま気づいただけなので、データとしての価値はないが、「今年は春が一度にやって来た?」と感じさせる生き物のメッセージだ。
-