問題は名前を覚え切れないこと

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 小中学校の女子でしたら、かわいいお人形を集めるのが好き、という子も多いでしょう。リカちゃん人形とか、そういうかわいい系には当時、興味なかったんですか。

 「当時、父方の祖父母と同居していまして、時々は母方の祖母が来て、お土産にお人形を持ってきてくれたんですが、うちの縫いぐるみを見て、『まあ、ここはワニばかり!』とあきれていました」

 ワニの他には?

 「変なヌイ(縫いぐるみ)がどんどん増えていって。最近では、ピロリ菌やペニシリンのヌイも。どんどん変なヌイを作っているメーカーがあるんですよ。カンブリア紀の生き物や、教材用でしょうか、カツオを三枚におろしたものとか」

 家の中にそれだけ数が多いと、一つ一つに目配りできないのでは?

 「いえ、家族ですから、目が合ったら手を振ったり、『久しぶり!』と話し掛けたりしています。それにみんな名前を付けています。ピロリ菌のヌイにはピロリンとか。問題はそれを覚え切れないこと。例えば、ウサギ一族ならウサギ一族で分類してパソコンで管理しようと思ったこともあるんですが、なかなかできません」

 ご主人の協力もあるんですか。

 「はじめは私に合わせてくれていたんでしょうが、今では私より旦那さんのほうが好きになっていて、自分でも欲しがっているようです。今年の元日には、私がおせちを作っている間に、うちの玄関に羊の縫いぐるみを並べてくれていました。マメだなと思いました」

 それだけたくさんの縫いぐるみがあると、中にはお宝のような希少品はあるんですか。

 「高く売れそうなものですか。資産価値はないですね。この世界では、唯一テディベアでしょうね。うちで資産価値があるものといえば、本ぐらいなものでしょうか。でも私は本を読んだら、帯や月報も捨ててしまうので、価値はないかなあ」

 本に囲まれて育ったそうですね。

 「両親、それに祖父が講談社の編集者をしていたので、小さいころから紙と鉛筆には不自由しない家でした。家じゅうやたら本があって、毎週1冊は本を買ってもらっていました」

 子どものころからずっと本好き少女だったんですね。

 「ええ。ただ家を預かっていた祖母が『本は読んではいけない』という教育方針でした。というのも、父は目が悪くて、それは本を読みすぎたせいだろうということで。でも子どもって禁止されると余計に燃えるものでしょ。本をたくさん読んで、自分で話を作るのが好きになりました。自分では覚えていないんですが、幼稚園のころ『小説家になりたい』と言っていたそうです。さらに中学生の頃は『腰巻作家になりたい』と。一日中本を読めるから、そう思ったんですね」

 親もそれを助けた?

 「いえ、『作家では食っていけない』が親の持論でした。だから、高2で作家デビューはしましたが、大学だけは行けと言われて進学しました。でも、もうその頃は小説家で生きていこうと思っていましたから、大学の4年間、あまり大学には行かず、小説を書いていましたね」

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  • 日本推理作家協会