育み合い、成長し合うアスリートとサポート企業 ラグビー×丹青社
育み合い、成長し合うアスリートとサポート企業 ラグビー×丹青社
育み合い、成長し合うアスリートとサポート企業 ラグビー×丹青社

 いよいよ、アジア初のラグビー・ワールドカップ(W杯)開催の年。商業施設やイベント会場などの空間デザインを手がける丹青社は、女子7人制ラグビーの原仁以奈選手を同社初のアスリート社員として迎え入れ、4年前からサポートしている。原選手の所属チーム「PEARLS(パールズ)」(三重県四日市市)のスポンサーにも名を連ねるなど、社を挙げての応援だ。日本ラグビーフットボール協会専務理事として日本ラグビーの強化と普及に努める坂本典幸氏と、原選手の2人に「ラグビー年」にかける思いを語ってもらった。

ラグビーを楽しむ文化を日本に

坂本氏 20カ国の代表チームが日本各地で熱い戦いを繰り広げるW杯は、多くの人にラグビーに触れてもらう絶好の機会です。一度試合を見れば好きになる人が多いものの、これまではなかなかスタジアムに足を運んでもらえませんでした。4年前のW杯で日本代表が頑張ってくれたので、注目度は増しています。自国開催の今回はぜひ、決勝トーナメントに進んでほしい。

原選手 前回のW杯以降、私たちの試合も観客が増え、ファン層が広がりました。今回はそれを上回る波及効果を期待しています。W杯は15人制で、80分の試合時間中に2、3トライしか入らないことも珍しくありませんが、7人制は14分の時間内に5、6回もトライが生まれることもあります。スピード感にあふれ、ルールをよく知らなくても楽しめるのが7人制の魅力。まずはぜひ、来場してみてください。

坂本氏 7人制は同じ会場で1日に何試合も行うので、多彩なチームによる多様な展開を堪能できます。海外ではビール片手に観戦する人が多く、まるでお祭りのような雰囲気です。
 今回のW杯でも、観客に喜んでいただけるさまざまな仕掛けを考えています。開催都市に設置するファンゾーンでは、試合をパブリックビューイングで観戦するだけでなく、ご当地グルメを味わったり、特産品を買ったりすることができます。子ども向けアトラクションの横にはボールに触れるコーナーも設けるなど、ラグビーに親しむ文化の醸成を狙っています。

空間が伝えるスポーツの魅力

原選手 スポーツの魅力を堪能する空間づくりは、丹青社が得意とするところです。13年に当社が展示企画や設計・施工の一部を担当した横浜スタジアム(横浜市)では、外観デザインやコンコースの飲食スペース、歴史展示コーナーをリニューアルし、エンターテインメントの要素を取り入れることでファン同士の交流が生まれる空間を演出しました。
 また、老舗の和菓子店「とらや」が18年、東京・青山に開いた新店舗「TORAYA AOYAMA」では「スポーツのお供に羊羹(ようかん)を」を掲げています。スポーツウェアのままで気軽にお立ち寄りいただけるような設(しつら)えが特徴で、毎週月曜日には店内でヨガ教室を開催しています。お菓子とともに、体を動かす楽しさを味わえるこのショップを設計・施工したのも当社です。
 私自身は、当社が設計・施工を担当し、当時運営を手がけていた子ども向け施設「ギャラクシティ」(東京都足立区)で16年に、当時のチームメイトを招いて体験イベントを開催し、日頃の仕事で得たプレゼンテーション力を生かして、トークショーにも登壇しました。スポーツと接点のある会社で働いているおかげで、アスリートとしての視点を仕事に生かせています。

坂本氏 スポーツをエンターテインメントとして楽しめる空間づくりは非常に大切ですね。「ラグビー場に行ったら、何か楽しいことがある」と思わせる空間演出ができれば、縦横に広がりが生まれます。

横浜スタジアム
横浜スタジアム
コンコースのリニューアルでは
球団カラーの青や横浜らしいレンガを取り入れて
ファンの気持ちを高める空間を実現
※画像は2013年オープン当時
TORAYA AOYAMA
TORAYA AOYAMA
可動式の什器を移動させた
早朝の店内はヨガスタジオに“変身”。
レッスン後には羊羹(ようかん)でエネルギーを補給

企業が選手を支え、選手が企業の力に

坂本氏 企業はまた座学に加え、仕事を通じた教育(OJT)でコミュニケーション力を育ててくれます。それがやがて、選手生活を終えるときに生きてきます。かつてのコーチは、自分が選手時代に身につけたことを教えればできていました。いまはそうはいきません。時代に即した技術や知識を学び、そこに自身の経験を加えて初めて、コーチとして通用するのです。「いずれセカンドキャリアの準備を」などと構えていては間に合いません。「デュアルキャリア」を実践し、成長を支えてもらえるのは、とてもありがたいことです。
 ラグビーは1人ではできません。仲間と連携しないと成り立たないスポーツです。そこで育んだ力は仕事にも有益なはずで、「ラグビーをやっている人材なら、使える」という共通認識が広がってほしいと願っています。

原選手 社内初のアスリート社員なので、手探りでやってきました。朝練をすませて出社し、昼過ぎに退社して夕方からまた練習という毎日です。大変ではありますが、女子ラグビーが少しずつ社会に浸透しつつある現在、その流れを自分たちで断ち切ってはならないと、いつも強く思っています。次の世代の選手に少しでもいい環境を残したい。多くの方の日常の中に、女子ラグビーが当たり前に存在するようになってほしい。そのためにいま何をすべきかを考えながら、日々を過ごしています。

「ノーサイド」の精神を再び世界へ

坂本氏 小学校の学習指導要領にタグラグビーが取り入れられたり、中学校の学習指導要領解説でも例示されたりと、ラグビーに触れる機会は増えつつあります。しかし裾野を広げるには、指導者の育成が欠かせません。授業での体験を「楽しい」と思ってもらうことが、第一歩です。
 指導者と同様にキーパーソンとなるのは、母親です。東京都世田谷区で女子ラグビーが普及しているのは、「お母さん選手」がたくさんいるからです。子どもの試合を見て「面白そう」と始めた母親が、友達を誘ったり、自分の子どものラグビースクールに連れて行ったりする。観客も女性ファンが増えれば、自然と男性もやって来ます。ラグビーは体格、体形に関係なくプレーできる全員参加のスポーツでもあります。ジェンダー、ダイバーシティーの視点からも、性や年齢にとらわれず挑戦していただきたいですね。

原選手 恵まれた環境を存分に生かして多くを学び、身につけて、国外でも活躍できる選手を目指します。

坂本氏 W杯後にどういうレガシー(遺産)を残せるかが大切です。ラグビー憲章では、ラグビーの価値を高める要素として「INTEGRITY(品位)」「PASSION(情熱)」「SOLIDARITY(結束)」「DISCIPLINE(規律)」「RESPECT(尊重)」の五つを掲げています。ラグビーを愛することが、世界の平和につながってほしい。
 また、どんなに激しく戦おうと、いったん試合が終われば「ノーサイド」となり、互いの健闘をたたえ合うのがラグビーの精神です。日本はこの「ノーサイド」の文化を英国に学んで取り入れましたが、残念ながら世界的にはこの言葉は使われなくなっています。代わりに試合終了は「フルタイム」と言われるようになりましたが、「ノーサイド」の精神を再び根づかせたいと考えています。そういう願いを込めて、W杯で活躍してもらうボランティアチームの名前を「ノーサイド」にしました。

原選手 テレビでW杯を観戦する人も多いと思いますが、ぜひ各地の会場で迫力を直に感じてほしいですね。

坂本氏 縦100メートル、横70メートルという広いグラウンドでは、テレビが切り取らないさまざまな動き、いろいろな作戦が展開されています。1番後ろの選手を追いかけたり、ボールの動きに集中したり、それぞれの視点で選手たちに声援を送ってください。

Profile

坂本 典幸氏
日本ラグビーフットボール協会専務理事 
坂本 典幸氏
さかもと・のりゆき1957年東京都出身。80年早稲田大学商学部卒。同年日本交通公社(現ジェイティービー)入社。2009年JTB法人東京取締役総務部長、10年同社常務総務部長、12年JTBコミュニケーションズ社長。13年に日本ラグビーフットボール協会理事・会計役に就任、15年から現職。
原 仁以奈氏
女子ラグビーチーム「PEARLS」副主将 
原 仁以奈氏
はら・にいな1992年福岡県出身。10歳で地元のラグビークラブチームに入部。2010年日本初の7人制女子ラグビーチーム「Rugirl-7」に加入。12年拓殖大学に入学し、同大初の女子ラグビー部員に。15年に卒業後、丹青社入社。コミュニケーションスペース事業部名古屋支店に所属。18年 「PEARLS」に移籍し、副主将に就任。
アスリート社員がもたらす柔軟性に期待
丹青社 代表取締役社長 高橋 貴志氏
丹青社 代表取締役社長
高橋 貴志

 私たち丹青社は「社会交流空間づくり」をフィールドとし、「人」を起点に事業を考えています。人々の豊かな交わりと共生に貢献すべく、価値観の多様性を尊重し、ユニバーサルな社会の実現を目指していきます。

 その一環として、初めてのアスリート社員として原仁以奈選手を迎え入れたことで、社員の働き方に柔軟性が生まれるなど、変化に強い組織づくりに大きな効果をもたらしています。

 綿密な戦略のもとでチームの一人一人が個性を発揮し、力を合わせて壁を破っていくラグビーは、営業やデザイン、制作といった各職種が一丸となってそれぞれの力を発揮し、お客さまと共にゴールへと走る当社とも重なる部分がたくさんあります。男子に比べて競技人口の少ない女子ラグビーの発展を目指し、組織人としてはもちろん、アスリートとしてもストイックに自身を成長させ続ける原選手を、全社を挙げて応援していきます。

 また、スポーツ競技場も多様化が進んでいます。店舗やイベント会場、展示スペースなどの要素を取り入れ、さまざまな人がいろいろな楽しみ方ができる環境を整えた施設が増えています。体験や発見などを通して感性に訴えかけるような演出によって、利用する方にも事業主の方にも喜んでいただける空間を作り出していきたいと考えています。

 ラグビーW杯をはじめ大きなスポーツイベントが続き、当社でも関連施設の仕事が増えていくことが見込まれます。原選手にはアスリートとして、社員として、積み上げた経験を生かし、オンリーワンの視点での貢献を期待します。私たちも、「こころを動かす空間づくり」につながるヒントを、原選手から学びたく思っています。

女子7人制ラグビーチーム「PEARLS」
女子7人制ラグビーチーム「PEARLS」