海の植物プランクトンから地球温暖化に迫る

工学部光・画像工学科
虎谷充浩 教授

 ――今後どのような研究を考えていますか。

 台風によって植物プランクトンが増えているのかどうかを中長期的に調べたいと思っています。太平洋の中心部は海の栄養分が少なく植物プランクトンが少ないのですが、台風が発生して海中をかき混ぜると海底にたまっている栄養分が海上付近に上がり植物プランクトンが増えます。温暖化が進むと台風の発生個数は減るけれども勢力は強くなると言われています。過去の観測では台風で植物プランクトンが増えたという研究もあるのですが、今は増えていない。深海部から栄養が上がれないほど水温の差が大きくなっているとも考えられます。これらの真実を突き止めるためには、私一人だけではできません。海洋物理学者をはじめとして化学や生物学の専門家の力が必要ですし、自分もそれぞれの分野を知らないといけない。海の研究は、こんな学際的な面が魅力です。

 ――人工衛星からの画像の中で印象に残っているものは何でしょうか。

台風通過後に大量の土砂か“流れ込んた”東京湾
2017年10月23日撮影
普段の東京湾
2018年2月7日撮影

 ベーリング海(太平洋の北部)が植物プランクトンの円石藻(えんせきそう)の大発生で、まるでミルクを流したような白い海になった画像はとてもきれいでした。米航空宇宙局(NASA)の発表した画像で、私が関係していないのが悔しいのですが(笑)。円石藻は電子顕微鏡でしか見えないくらい小さいのですが、実際に2000年に現地に行ったときも大発生していて白く見えてビックリしました。他にも海流の影響で植物プランクトンの分布が渦の模様を描くこともあり、衛星画像を見るのは楽しいです。

 国内では東京湾、伊勢湾、大阪湾といった内湾です。衛星データを見ると、湾の外側の太平洋と湾の内側では、色の違いがよくわかります。水質をきれいにする活動が続いていて、最悪の時期に比べると良くなっていますが、まだまだということも分かります。高解像度な「しきさい」のデータを活かした沿岸の海洋環境モニタリングが期待されています。

 ――海へ興味が向いたきっかけは何ですか。

 自分自身の記憶はないのですが、3歳の頃、家族旅行で海に行ったとき、海が塩辛いと聞いて「(こんなに大量の水があるのに)塩辛くなるわけがない」と言って、海水をなめたんだそうです。実際には塩辛いわけですから、すごく不思議そうな顔をしていたらしいです。小さい頃から自然が好きだったので、その辺りが原点かなと。海は広いし未知なこともいっぱい、南極や北極にも行けると東海大海洋学部に進学しました。院生時代は水産庁の南極海のオキアミ調査に参加して半年間船上にいたこともあります。水中の光の観測やオキアミの体長を測定する仕事でしたが楽しかったですね。修士課程から現在に至るまで人工衛星を使って海の色を解析する衛星データ解析を専門にしています。

 ――研究のためにコンピューターに向かうだけではなく海にも出るとのことですが、学生を実際に船に乗せていると聞きました。学生の反応はいかがですか。

 昨年度から学生を実際の海洋調査に加えてもらっています。コンピューターの前だけだと、実際の海の様子やサンプル集めの大変さが分かりません。海は凪の時も荒れる時もあります。航海に出ると自分で海水をくみ、船中でろ過し、凍らせ、分析をする作業をこなすことになります。観測データの重要さや大切さ、分析してくれる人への感謝の気持ちを身につけてくれます。研究への向き合い方も変わりますので、積極的に航海に行かせるようにしたいと考えています。ただ航海は時に比較的長期になるので、大学の授業との兼ね合いがあり、悩ましいところです。私自身も海に出たいのですが、授業期間中だと断念することが少なくありません。

 ――若い人たちにメッセージをください。

 人工衛星から見る地球の姿は、美しいです。人の影響によって地球の姿は徐々に変化しつつあります。コンピューターやスマホの世界だけでなく、自然にも興味を持って欲しいですね。私の専門で言えば、コンピューターも海(自然)も好きだと理想ですが、なかなかそんな学生は少ないのが実情です。自然はおもしろいということを若いときに知ってほしいです。

東海大学工学部光・画像工学科 教授
虎谷 充浩(とらたに・みつひろ)
東海大学海洋学部海洋工学科卒業、同大学院海洋学研究科海洋工学専攻博士課程前期・後期を経て、1992年に東海大学開発工学部情報通信工学科助手。1996年に同講師、2002年に東海大学開発工学部感性デザイン学科助教授、同准教授、2010年に東海大学工学部光・画像工学科准教授を経て2011年より現職。2006年に1年間、東京大学海洋研究所附属海洋科学国際共同センター客員助教授。1994年東海大学大学院海洋学研究科において博士号(工学)を取得。1987〜1988年に水産庁第5次南極海調査航海に補助調査員として乗船、2000年アラスカ大学北極圏研究センターに5ヶ月間滞在。修士課程の頃から継続してJAXAの海色衛星データの大気補正アルゴリズム開発などを担当。

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