- インタビュー
- Interview

- 日本薬剤師会 常務理事
- 原口 亨さん
新型コロナウイルス感染症の流行で急速に進んだのが、オンラインでの診療や服薬指導といった医療のデジタル化です。情報通信技術(ICT)の発展は、薬局や薬剤師の役割をどう変えるでしょうか。17~23日の「薬と健康の週間」(主催・厚生労働省、日本薬剤師会など)に合わせ、日本薬剤師会常務理事の原口亨さんに解説していただきました。
医療はデジタル化がなかなか進んでいない分野でした。患者さんの様子を目でチェックし、聞き取りをするには「対面」が最も有効ですし、医療機関や薬局と同時に患者さんの側でも必要な機器をそろえなければならなかったからです。個人情報を扱う関係上、セキュリティーの問題もありました。
ですが、コロナ禍で肝心の対面が思うようにできなくなり、機会の提供を維持するために、パソコンやタブレット端末、スマートフォン越しに問診したり薬の説明をしたりする行為が公的医療保険でできるようになりました。最初は初診を認めないなど限定的な解禁でしたが、やってみると医療アクセスが悪い地域などの住民のニーズが高いことも分かり、対象は広がっていきました。
日本薬剤師会では、オンラインを活用する上での要点をまとめた「eラーニング」のコンテンツを作り、全国の薬剤師に見ていただきました。強調したのは、状況が十分に把握できない場合はすぐに患者さんを訪問し、対面対応に切り替えましょうということ。最近の医薬品は、吸入など独自の器具を使うタイプも増えており、患者さんの使い方などの理解があやふやなままではお渡しすることができません。実際に私自身も患者さんに問題なく説明しお渡しできるようオンライン服薬指導の練習をしました。

自宅にいる患者さんと話すと、薬局に来ていただくより把握しやすい点も多いことが分かりました。例えば「飲み残しの薬が少しある」と聞いた時、数量や保管状況を画面越しに見せてもらうことができるのです。自分の生活リズムに合わせて指導を受けられるので、患者さんのメリットも大きいと思います。
今年1月からは、医療機関と薬局が処方や調剤する薬の情報をオンラインでやり取りする「電子処方箋」の運用が始まりました。患者さんは医療機関が発行した紙の処方箋を薬局に持って行く必要がなくなります。まだシステムに対応していない施設もありますが、これから徐々に広がっていくことでしょう。
データの電子化によって、患者さんの同意があれば過去の処方や調剤の履歴も参照できるので、既に服用されている薬と重複するリスクが減り、手持ちの薬との相互作用(飲み合わせ)もチェックしやすくなります。最近は薬局が処方箋に書かれた薬と成分は同一だが名前やメーカーが異なり自己負担の少ないジェネリック薬(後発医薬品)をお渡しするケースも多いのですが、それもリアルタイムで医師や医療機関に伝えられます。
マイナンバーカードをお持ちの患者さんなら、ポータルサイト(マイナポータル)で受診した日、処方された薬、自己負担額などの一覧をご自身で確認できます。より安心で安全な医薬品使用につながるはずです。
ただ、この仕組みにも弱点があります。履歴が過去数年(現在は3年)しか残らず、さらに処方箋なしで買える一般用医薬品(市販薬)のデータは反映されません。
これを補完するのが「お薬手帳」です。日本薬剤師会はスマートフォンなどで使える「電子お薬手帳」の最新バージョンを、7月に公開しました。無料でアプリをダウンロードできます。
最新版はパッケージのバーコードを読み込んだり、写真を撮って記録したりすることで、簡単に自分で買った市販薬の情報も登録できます。また年度内にも、アプリを通して薬剤師にオンライン相談できる機能を付ける予定です。将来は市販薬を使う際に、処方された薬との相互作用を人工知能(AI)がチェックするといったシステムの搭載もできればと考えています。いろいろな技術を積極的に取り込み活用することで、安心して服薬できる環境が整っていくのではと考えています。
電子お薬手帳は、災害で避難生活を余儀なくされた場合、あるいは入院せず自宅での療養を希望される場合などは、とても役に立つツールになります。現在では、日本薬剤師会の電子お薬手帳だけではなく、さまざまな機能が付いた製品もありますので、かかりつけの薬剤師や薬局にご相談いただき、スマートフォンにダウンロードして活用されることをお勧めします。
もちろん、薬局が健康に関する地域の「よろず相談所」であり、薬剤師は「街の科学者」であるという役割は、今後も変わりません。「処方箋がないと入りづらい」という薬局から脱却し、地域の皆さんと寄り添う薬局になれるよう活動を進めています。テクノロジーの進歩とともに多様化するニーズに応えつつ、患者さんとのリアルな関係性も高めていく。それがICT化の進んだ薬局のあるべき姿だと考えています。
日本薬剤師会は7月、無料スマホアプリ「eお薬手帳3.0」の提供を始めた。紙のお薬手帳と同じように、処方されたり自分で買ったりした薬を記録しておけるほか、電子版ならではの機能も満載だ。
その一つが、よく利用する薬局の「お気に入り登録」。こうすると医療機関で処方箋を受け取った時、その画像や印字された二次元コードを読み取って送信ボタンを押しておけば、その薬局で待ち時間を少なく薬を受け取れる。調剤された薬は自動で手帳に記載されるため、入力の手間も省ける。
カレンダーも付いており、服薬のスケジュールを設定しておくと、アラームで時間を知らせてくれる。今後は、薬剤師にオンラインで相談できる機能なども加わる予定だ。
家族全員分を一つのアプリで管理でき、旧バージョンからのデータ引き継ぎも可能。下記のURLからダウンロードできる。
詳細は日本薬剤師会の特設サイト(https://www.nichiyaku.or.jp/e-okusuri3/)。

- 第1回
- 感染症対策もご相談ください

新型コロナウイルス感染症の感染拡大から3年がたちました。消毒用アルコールやマスクが手に入らない時期があったり、外出や移動が制限されたり、通常の医療が受けにくく なるなど、私たちの生活は大きな影響を受けました。
この間、薬剤師は通常の医療体制を維持するとともに、感染対策の支援や自治体のワクチン接種のサポート、抗原検査キットの販売等を通じて地域の医療・健康を守ってきました。
ワクチンについては、当初は様々な情報で不安に感じられた方もおられたかと思いますが、今では多くの方が複数回の接種を済ませ、感染拡大や重症化の防止に繋がりました。初期に接種したワクチンはすでに感染を防ぐ力を失っているといわれています。9月にはXBB.1株に対応したワクチンが導入され、接種は続けられます。しっかりと情報を得て適切に対応いただきたいと思います。
抗原検査キットは、第1類医薬品として薬局で薬剤師から情報提供を受け、入手できるようになりました。検査キットや解熱鎮痛薬を家庭に常備しておき、体調に異変を感じたら適切なタイミングで使用できるようにしておきましょう。
特に基礎疾患をお持ちの方は、感染予防とともに普段の治療を継続することが大切です。次に感染拡大があっても服薬が継続できるように、お住まいの近くに相談しやすいかかりつけの薬局を決めておきましょう。
新型コロナの感染症法上の区分は5類となりましたが、これまで同様、感染対策を適切に行う必要があることは変わりありません。
感染対策についてご不明なことがあれば、街の薬局でご相談ください。私たち薬剤師は、地域の健康を守るために、お役に立ちたいと考えています。
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- 新型コロナ検査キット 取扱い薬局・薬店情報
- 第2回
- セルフメディケーションを支援する薬局製剤

皆さんは「薬局製造販売医薬品」(以下、薬局製剤)という医薬品をご存じですか?
医薬品は、薬局医薬品、要指導医薬品、一般用医薬品(1、2、3類)の3種類に大きく分けられます。「薬局製剤」は薬局医薬品の中に医療用医薬品と共に分類されており、 薬剤師が薬局内の設備及び器具を用いて製造する医薬品です。
現在、風邪薬や解熱鎮痛薬、胃腸薬や湿疹の塗り薬など400品目以上の内服薬(飲み薬)、外用薬(貼ったり塗ったり等する薬)、漢方薬があります。漢方薬の中には、医療用や一般用の漢方エキス製剤として流通していない処方も含まれるため、自分の症状や体質に合った市販薬がない場合でも薬局製剤ならあるかもしれません。
薬局製剤を製造し販売するためには、薬局ごとに薬局製剤の製造や販売の許可が必要です。そのため薬局製剤を取扱う薬局も限られています。一方、広く流通している大手製薬メーカーが製造する医薬品とは違い、薬剤師の判断のもとで製造し、その薬局でのみ販売される医薬品です。また薬局製剤は一般用医薬品と同じく、症状のない時でもあらかじめ購入することが可能で、包装単位も薬局が独自で決めることができるため、特定の品目ではその時のニーズに合わせた包数等で購入することもできます。
このように色々と特色のある薬局製剤にご興味をお持ちの方は、症状の相談も含めて一度かかりつけ薬剤師・薬局に相談していただき、皆さんのセルフメディケーション支援として是非ともご活用ください。
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- 薬局製剤のご相談はかかりつけ薬剤師・薬局に
- 第3回
- ポリファーマシー、 患者さんへのフォローアップ

「ポリファーマシー」という言葉をお聞きになったことはありますか。ポリファーマシーは「ポリ(多くの)」と「ファーマシー(薬剤)」からなる造語で「多剤服用」とも言います。この概念は、単に服用する薬剤数が多いことではなく、それによって有害な事象が起きている、あるいは起きやすい状態や、薬を飲み忘れやすくなる状態等を指します。
ポリファーマシーを防ぐためには、薬の服用等は自己判断をせず、医療機関で薬の処方を受ける際や薬局で調剤を受ける際に、医療用のお薬だけでなく、市販薬やサプリメント等の情報も、医師や薬剤師等に伝えるようにしましょう。かかりつけ医師やかかりつけ薬剤師・薬局を持つことも大切です。また、医師や薬剤師がお薬手帳からあなたの使っている全ての薬を把握できるように、お薬手帳は一冊にまとめて、継続して記録するようにしましょう。
さて、薬局ではこのポリファーマシーを防ぐため、薬を正しく使用できているか、薬が効いているか、副作用の兆候が表れていないか等を確認する目的で、薬剤師が患者さんに電話やオンラインなどを通じてフォローアップするサービスを行っています。このフォローアップは、一人ひとりの状況に合わせて薬を適切に使用していただくための大変有効な方法となっています。また同時に、患者さんと薬剤師のコミュニケーションを強化し、安心して薬を使い続けるための大切な機会ともなります。フォローアップを受けることで、薬の正しい知識が身に付き、より安全な使用につながりますので、薬剤師から連絡があった場合には何でも気兼ねなく聞いてみてください。
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- お薬のご相談はかかりつけ薬剤師・薬局に
- 第4回
- 市販薬の飲み過ぎ「オーバードーズ」に要注意

毎日を生き生きと暮らすためには、健康であることが欠かせません。健康を保つためには食事や運動、睡眠などの生活習慣に気を付けることが大切です。しかし、風邪を引いたりお腹が痛くなったりすることがあるでしょう。そういった比較的軽い症状の場合、自らの判断で市販薬を利用して症状を緩和し、自然治癒を促すことができます。これをセルフメディケーションと言います。市販薬を利用する際に気を付けていただきたいのが薬の説明書(添付文書)を確認することです。説明書には使用上の注意や「1回1錠」、「1日2回まで」など服用方法が必ず記載されています。この決められた用法・用量などをきちんと守ることがとても大切で、症状が良くならないからといって自己判断で飲む量や回数を増やすことは、症状の悪化や中毒症状を起こしてしまう原因になります。
近年、自らの判断で医薬品の不適切な使用を繰り返し行い(濫用)、その薬を飲まずにはいられない依存状態に陥って健康を害してしまう事例が増えています。これは大麻や覚せい剤などの薬物依存と同様の状態です。さらに最近では、意識的に市販薬を大量に服用する「オーバードーズ」を繰り返す若者が急増していると報告されています。
このような医薬品の不適切な使用を防ぐため、薬局などでは濫用等のおそれがある成分を含んだ市販薬について購入数を制限するなどの対策を行っています。ご自身やご家族が濫用をやめられないなどの悩みがある場合には、お近くの薬局・薬剤師までご相談ください。
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- 薬物乱用防止に係る取組み
- 第5回
- ご存知ですか?学校薬剤師

皆さんは「学校にも薬剤師がいる」と聞くと驚かれるのかもしれません。内科検診や歯科検診で、校医さんや学校歯科医さんと接する機会は多くあるかと思います。同様に、大学を除くすべての学校には、「学校薬剤師」と呼ばれる薬剤師の配置が義務付けられています。
多くの場合、薬局や病院に勤務する薬剤師が兼務しており、児童・生徒や教職員が安心して学校生活を送れるように、様々な検査を実施しています。これは文部科学大臣が定める「学校環境衛生基準」に基づいています。
例えば、プールの水質検査があります。ほかにも黒板や机の上の明るさ、飲料水中の細菌などの有無、教室内の換気や、温度や湿度、など多くの検査をしています。特にコロナ禍にあっては消毒方法や感染防止対策などにも関わっていました。これらの活動により、より良い学校環境衛生を維持することが児童・生徒らが快適に学校生活を過ごせるかに直結しています。環境衛生基準に適合していない場合は、学校薬剤師は学校や園に対して、指導・助言を行います。
また、学校薬剤師はくすりの専門家として、「くすりの正しい使い方」や「薬物乱用防止教室」などを実施しています。昨今では、大麻や覚醒剤といった違法薬物のみならず、若い世代で市販薬などのオーバードーズ(過剰摂取)が問題となっています。たった一つしかない自分の体を守るための教育の手助けをしているのも学校薬剤師としての仕事です。
この機会に一度、ご家庭で「学校薬剤師」についてお話ししていただけると幸いです。学校やこども園で、お子さんが学校薬剤師を見かけた時には、気軽に「何の検査をしているの?」と聞いてみてください。
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- 学校薬剤師の活動
- 第6回
- 災害時の備え 「お薬手帳」の活用を!

皆さん、お薬手帳をお持ちですか?自分がいつ・どんな薬を使ったかを記録するものがお薬手帳です。かかったことのある病気やアレルギー等も記録することにより、薬の飲み合わせや飲んではいけない薬を把握するのに役立ちます。診察時や薬局に処方箋を持参される際には、ぜひお薬手帳をご提示ください。市販薬やサプリメントなどの情報もお薬手帳に記録しておくことが大切です。また、お薬手帳は、これらの普段のお薬の管理だけではなく、災害時にも重要な役割を果たします。
災害時は、普段行く医療機関や薬局が被災により閉まっていることがあります。遠方に避難することもあるでしょう。しかし、お薬手帳の記録があれば、いつも使用している薬も分かり、普段とは違う医療機関や薬局、そして避難所等でもスムーズに診療を受け、薬を受け取ることが可能になります。
今はスマートフォン用の「電子お薬手帳」というアプリもあります。携帯性に優れ、お出かけの際に紙の手帳に比べ持ち忘れも少なく、お薬手帳の内容を長期間にわたり記録することも可能です。また、飲み忘れ防止のためのアラーム機能や、薬の副作用や注意事項を詳しく知ることもできます。電子お薬手帳は将来的に様々な機能が実装され、より便利になりますので、今後は積極的に利用すると良いでしょう。
また、マイナンバーカードをお持ちの方は、「マイナポータル」という自分専用のウェブサイトを利用することで、薬局で調剤されたご自身の薬の記録を知ることもできます。安全・安心に医療を受けられるツールとして、また災害時の備えのためにも、お薬手帳等を有効に活用しましょう。
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