10月17日~23日は「薬と健康の週間」 薬と健康を考える
家族の健康のために役立てたい「お薬」。インタビューとコラムでこれからの付き合い方をご紹介します。
インタビュー
Interview
「セルフケア・セルフメディケーション」の強い味方が薬剤師
日本薬剤師会 常務理事
富永 孝治さん

健康維持や病気の予防で「自己管理」の大切さが叫ばれています。市販の薬や健康食品を上手に活用したいところですが、消費者が自分で選び、正しく使うのは簡単ではありません。そこで心強い味方になってくれるのが薬剤師です。10月17~23日の「薬と健康の週間」(主催・厚生労働省、日本薬剤師会など)に合わせ、日本薬剤師会常務理事の富永孝治さんに、アドバイスをいただきました。

薬剤師が健康管理をサポート

「医者の不養生」ならぬ「薬剤師の不養生」でしょうか。私は薬局に来られる方に薬の話をするのはうまくても、自分自身の健康管理は苦手なようです。先日、人間ドックで保健師の指導を受け、お酒の「休肝日」を設けるようにしたら、体重、腹囲、血糖値など、いろいろな数値が一気に良くなりました。「セルフケア・セルフメディケーションを自分一人で実践するのは難しい」と、実感した次第です。

セルフメディケーションとは、世界保健機関(WHO)で「自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当てすること」と定義されています。栄養バランスのいい食事、適度な運動、十分な睡眠が大事なのは言うまでもありませんが、それに加えて「市販薬(OTC医薬品)の上手な活用」も鍵になります。

OTC医薬品にはたくさん種類があり、効果や副作用もさまざま。風邪などの症状を緩和するだけでなく、最近は内臓脂肪減少薬など、生活習慣病の予防に役立つとされる薬も増えています。

自分だけで選ぼうとすると、間違った判断をしてしまうかもしれません。他の薬や健康食品との組み合わせ(相互作用)で、思わぬ影響が出る恐れもあります。まずは、お近くの薬局で薬剤師に相談してみてください。薬剤師はセルフケア・セルフメディケーションを支える国家資格を持った専門家です。

消費者のヘルスリテラシーの向上にも尽力

薬剤師の仕事は重要性を増してきています。例えば、薬局では、処方箋に基づく調剤により薬剤の交付を受けた患者に対して、次回来局されるまでの間、薬を正しく使用できているか、薬が効いているか、副作用の兆候が表れていないか等を確認する目的で、薬剤師が患者に電話やオンライン等を通じてフォローアップをするサービスを行っており、心配があれば処方医と連携の上、受診することを促します。

マイナンバーカードによるオンライン資格確認などが普及し、ご本人同意の上で薬局でも特定健康診査(特定健診)時の検査データなどを確認できるようになってきました。これは薬剤師が検査結果を正確に読み取り、処方医と連携して薬学的知見から指導する力も求められることを意味します。

今年は「紅麹」を含有するサプリメントを摂取した人の健康被害が大きな社会問題になり、健康食品の安全性が注目されました。これは製造工程の管理上に問題がありましたが、元々健康食品は医薬品ではないので、病気を治療する目的のものではありません。しかし、医薬品と誤解されるような表示や広告がされていることも事実です。消費者のヘルスリテラシー(健康や医療に関する理解力)を高めることも、薬剤師の大事な役割になります。

若い世代の市販薬の過剰摂取(オーバードーズ)を防止することも、喫緊の課題です。本来の効果を期待してではなく、大量に飲むことで気分などを変調させるのが目的のようですが、医薬品自体の副作用等が生じたり、薬物乱用の入り口になる危険な行為です。そのような不適正使用を防ぐため、薬剤師会では店舗でもインターネットでも適切な販売方法がとれるよう、行政や関係者とで協議をしています。

学校現場での啓発も欠かせません。中学・高校では、保健体育の授業で医薬品の適正使用教育をすることになっているのですが、実際は十分ではなかったり、専門家の活用が進んでいなかったりするケースも見受けられます。学校薬剤師らが積極的に関与し、みんなで子どもたちを守る体制を作っていかねばなりません。

経験をもとに国民の幸せに寄与

薬局でたくさんの患者さんと何十年と接してきて感じることは、患者さんにはそれぞれのナラティブ(物語)があり、病気もその人の人生の一部である、ということです。薬剤師はそれを知った上で、一緒に治していきましょうという姿勢で対応をしていかないと、ご本人の心には響きませんし、信頼もしていただけないでしょう。

一例を挙げれば、8月になると血圧が上がってしまうと相談に来られた高齢の女性がいらっしゃいました。いろいろとお伺いすると、毎年8月にはお孫さんが帰省で来られることが分かりました。それで頑張ってしまい、疲れがたまるのだろうと考え、少し休むように助言したら、数値は良くなりました。

薬剤師には経験の積み重ねがあります。すぐ薬を出すことだけが仕事ではありません。薬剤師を信頼していただき、国民の幸せと生活の質の向上に寄与したいと考えています。

頼れる存在 かかりつけ薬剤師

「薬局に行っても、対応してくれる人はいつも違う。気楽に相談できる顔なじみの薬剤師がいてくれれば……」。そう感じている人は、「かかりつけ薬剤師」を持つといい。

かかりつけ薬剤師を持つことにより、使用している薬の情報を一元的・継続的に管理し、市販薬や健康食品に関するアドバイスもしてくれる。休日や夜間など薬局の開局時間外も、電話で薬の使い方や副作用等、薬に関する相談に応じている。また、必要に応じて夜間や休日も処方薬を渡したり、外出が難しい高齢者などの患者の場合、自宅に伺い薬の説明や残薬状況の確認をしたりする存在だ。患者側はかかりつけ薬剤師に薬を一元的・継続的に管理してもらうことで、重複投与処方などを避けられるといったメリットがあり、厚生労働省も普及を進めている。

薬や健康のこと等で何か不安があればすぐに相談できるように自宅近くなどの利用しやすい薬局にかかりつけ薬剤師・薬局をもつと良いだろう。

また、このような、かかりつけの機能を有している薬局では「健康サポート薬局」の届出をしている薬局も多い。「健康サポート薬局」は、市販薬や介護用品選びの手伝い、プライバシーに配慮したスペースでの健康相談など、幅広いサービスを提供しているのが特徴だ。昨年9月時点で全国に3000店以上あり、年々増えている。

薬剤師・薬局の上手な活用法
第1回
薬剤師はあなたの健康をサポートします

薬剤師や薬局というと、医療機関で発行された処方箋を持っていき、薬剤師は調剤をする人、薬局は調剤をしてもらう場所のイメージが少なくないかもしれません。実は薬局では市販薬や絆創膏や包帯、体温計や血圧計などのセルフケアに必要なものも購入でき、「薬だけ」ではない一面があります。また地域住民の方々を対象に、薬や健康増進に関する相談会や健康づくりを支援する情報発信などを行っている薬局もあります。

身近な薬局を「かかりつけ」として、処方箋調剤だけではなく健康相談にもご利用いただけると、薬のことだけにとどまらず、健康な時はよりその状態を保てるようアドバイスや、健康に不安があるときには悪化しないよう地域の医療機関とも連携して、薬剤師がサポートいたします。

最も有効な薬局の利用法は、どんなことでも「かかりつけ」の薬局に相談いただくことですが、これから薬局を探す方は「健康サポート薬局」を検索してみてはいかがでしょうか。「健康サポート薬局」は、健康の保持・増進を積極的に支援する機能を備えた薬局です。厚生労働省の「医療情報ネット(ナビィ)」を使うと全国の薬局情報が検索でき、近くの健康サポート薬局も検索できます。日本薬剤師会作成ロゴマークを掲示している薬局もあります。特に、日頃の健康状態が気になる方やご家族の介護を担っている方はぜひ「健康サポート薬局」にご相談ください。

薬剤師は、病気になってからだけではなく健康な状態から寄り添える医療人です。乳児から高齢者まですべてのライフステージにおいて途切れなく関わることができる専門家ですので、日頃から気軽に薬局を訪れてください。

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地域住民の健康づくりを支援
第2回
薬局でも医療DXが進んでいます!

皆さんは医療DXが進みつつあることを感じられているでしょうか。最近、病院や薬局へ行くと、「マイナンバーカードをお持ちですか?保険証の利用登録をされていますか?」と聞かれることがあると思います。いわゆる「マイナ保険証」のことです。マイナ保険証は、マイナンバーカードと健康保険証が一体化したもので、マイナ保険証の読み取り機がある薬局にお持ちになると、過去の医療情報等を薬局とも共有することができます。マイナンバーカード自体に医療情報等が入っているわけではありませんので、安心してご活用ください。この医療情報は、その患者さんが使用してはいけない薬や、重複している薬等を薬剤師が判断する助けになり、その上で処方した医師とも相談することができます。また、電子版お薬手帳等を併用することで、よりリアルタイムに情報を取得でき、一人ひとりの状態に合った薬の選択ができるようになります。

日本薬剤師会がリリースしている電子版お薬手帳「eお薬手帳3.0」は、処方された薬の管理だけではなく、市販薬の管理もできるアプリです。またオンライン服薬指導機能も搭載しています。現在、進んできている電子処方箋と共に、今後の医療DXには欠かせないものとなります。

これまでの健康保険証がマイナ保険証に変わり、紙のお薬手帳もアプリになり、処方箋も電子化が進んでいます。すべての人がマイナ保険証を上手に活用しながら、薬や健康の管理ができるように、薬剤師がお手伝いいたします。マイナンバーカードをお持ちの方で、まだマイナ保険証として活用されていない方は、かかりつけの薬剤師、薬局にご相談ください。

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日本薬剤師会 お薬手帳アプリ「eお薬手帳3.0」とは
第3回
薬剤師によるフォローアップ、ご存知ですか

薬局では、薬を正しく使用できているか、薬が効いているか、副作用の兆候が表れていないか等について、薬剤師が患者さんに電話やオンラインなどで確認するフォローアップのサービスを行っています。フォローアップは、薬を一人ひとりの状況に合わせて安全に使用していただくための大変有効な方法となっています。また同時に、患者さんと薬剤師のコミュニケーションを強化し、安心して薬を使い続けていただくための大切な機会です。フォローアップを受けることで、薬の正しい知識が身に付き、適切な使用につながりますので、気兼ねなくこのサービスを受けてください。

また「ポリファーマシー」という言葉をお聞きになったことはありますか。ポリファーマシーは「ポリ(多くの)」と「ファーマシー(薬剤)」からなる造語で「多剤服用」とも言います。これは、単に服用する薬剤数が多いことではなく、それによって有害な事象が起きている、あるいは起きやすい状態や、薬を飲み忘れやすくなる状態等を指します。

ポリファーマシーを防ぐためには、薬の服用等は自己判断をせずに、医療機関や薬局では、服用している処方薬だけでなく、市販薬やサプリメント等の情報も、医師や薬剤師等に伝えるようにしましょう。かかりつけ医やかかりつけ薬剤師・薬局を持つことも大切ですし、かかりつけ薬剤師からのフォローアップを受けることも有効な手段となります。また、医師や薬剤師がお薬手帳からあなたの使っている全ての薬を把握できるように、お薬手帳はひとつにまとめて、継続して記録するようにしましょう。

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お薬のご相談はかかりつけ薬剤師・薬局に
第4回
薬剤師と考える災害への備え

日本は地形、地質、気象条件などにより、地震や津波、火山噴火、台風・大雨が発生しやすく、世界有数の災害大国といわれています。今年も元日に発生した能登半島地震をはじめとする地震被害、大雪による被害、火山被害や林野火災、大雨による浸水被害や土砂災害など多くの災害が身の回りで発生しています。

災害が発生して緊急避難をしたときに、食料や水と共に必要となるのが治療のためにいつも使用している医薬品です。手持ちの医薬品を持って避難できればいいですが、緊急の場合は着の身着のままでの避難となってしまいます。そんな緊急時でも自分のお薬情報があれば、普段とは違う医療機関、薬局、避難所等でもスムーズに診療を受け、薬を受け取ることが可能になります。そのツールがお薬手帳です。東日本大震災や熊本地震でも重要性が認識されたお薬手帳ですが、最近は紙のお薬手帳のほかにスマートフォン等に対応した電子お薬手帳アプリも普及しています。きっと皆さんは災害時などの緊急時でも、携帯電話やスマートフォンを持って行動するのではないでしょうか。

またマイナンバーカードをお持ちの方は、お薬情報のほかに保険情報や診療情報なども避難所等で確認できるようになります。最近の災害は忘れる前にやってきます。皆さんの「かかりつけ薬局」や「かかりつけ薬剤師」に平時から災害時の対応についてぜひご相談ください。災害発生時や緊急時でも私たち薬剤師は必要な医薬品を皆さんのお手元にしっかりとお届けします。

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災害時における薬剤師活動
第5回
子供たちの健康を見守る学校薬剤師

学校薬剤師は子供たちが学校でよい学習環境で過ごせるように様々な検査を行います。例えば、教室の換気状況や明るさ、騒がしさ、温度・湿度、飲料水やプールの水質などについて検査を実施し、結果を校長などに報告した上で、一定の基準を満たしていなければ改善するよう指導・助言を行います。学校薬剤師はコロナ禍で子供たちが学習と生活を安全に安心して続けられるように様々な感染拡大防止対策に関わりました。特に消毒や換気など、効果的な感染防止対策を図るために中心となって活動しました。

このように学校薬剤師が担う学校環境衛生の維持・管理により、健康的な学習環境を確保することは、子供たちが安全で快適な学校生活を過ごせることにつながります。また、学校薬剤師は、学校で扱う全ての薬品の管理や使用方法について指導しますが、保健指導や健康相談も行っています。

近年、若年者による大麻の乱用や市販薬の不適切な目的外使用によるオーバードーズ(過剰摂取)などが問題となっています。それらを防ぐために学校では、学校薬剤師による児童生徒らの発達段階に応じた「くすり教育」の支援や「薬物乱用防止教育」の講演などが行われています。一度ご家庭でも子供たちと学校薬剤師から聞いた話について話題にしてみてはいかがでしょうか。大麻乱用による健康被害や日常服用している薬について家族それぞれがどんな考えを持っているのか話し合ってみることをお勧めします。もし何か気になることや疑問があれば、ぜひ自分の子どもが通う学校の学校薬剤師や、近くの薬局の薬剤師へ気軽に相談してみてください。

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学校薬剤師の活動
第6回
アンチ・ドーピング活動をする薬剤師

今年はオリンピック・パラリンピックイヤー。パリでの熱戦は記憶に新しいところです。この大会の開会式では、ドーピングのない競技をすることが宣誓されました。ドーピング禁止物質や禁止方法は、全世界・全スポーツ共通のルールとして定められています。ドーピング違反が判明すると、そのアスリートは競技成績を抹消されるばかりか、試合への出場や練習施設の使用も停止されます。意図的ではなく知識不足からの"うっかり"であったとしても、違反は違反となります。

スポーツファーマシストはドーピング防止を支援する薬剤師として世界に先駆けて日本で誕生しました。最新のアンチ・ドーピングの知識を有する薬剤師として、現在約1万2千人が認定を受けています。ドーピング違反となる危険性は意外とアスリートの身近に潜んでいます。市販の風邪薬やサプリメントが原因で違反となることもあります。数多くある製品の中からどれを選んだら良いのか、スポーツファーマシストは相談に応じ禁止物質を含んでいないものを選ぶためのお手伝いをします。

また、病院や薬局からスポーツイベント会場や学校等へと出向いて、アスリートにドーピングのリスクの存在について情報提供し、自分を守る行動をしていただけるよう教育・啓発する活動を実施しています。

薬は本来病気や怪我を治すためのものです。アスリートの方は何でも気軽に相談できるスポーツファーマシストをみつけ、薬を飲む前、使う前にご相談ください。ドーピングのないクリーンでフェアなスポーツを実現できるようサポートします。

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※2024年10月17日時点

公益財団法人 日本薬剤師会