10月17日~23日は「薬と健康の週間」 薬と健康を考える

私たちの身近な存在である薬剤師・薬局について、
対談と全6回のコラムでわかりやすくご紹介します。
日常生活で知っておきたい薬の基礎知識や活用法についても紹介します。

対談
Dialogue
「かかりつけ」で安心
健康を支える薬剤師
日本薬剤師会 第26代会長
岩月 進さん
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タレント
SHELLYさん

10月17日から23日の「薬と健康の週間」を前に、タレントで子供3人の母でもあるSHELLYさんと日本薬剤師会の岩月進会長が8月上旬、東京都内で対談しました。医薬品を正しく使ってもらうために薬剤師が果たす役割や、患者が効果的かつ安全に薬を使うための心得などを語り合いました。

OTC医薬品とセルフケア 薬局・薬剤師の役割

SHELLY病院で診察を受けると、普段は近くにある薬局に処方箋をその都度持ち込んで薬を出してもらいます。特定の薬局や薬剤師をかかりつけにする利点はありますか。

岩月薬剤師の仕事は薬の説明だけでなく、その薬が患者さんに合っているかどうか確認することです。服用中の薬や食生活などの情報を把握している薬剤師がいれば、飲み合わせや副作用のリスクを避けることができます。

SHELLY多忙な薬剤師に相談するのは申し訳なさや気恥ずかしさがあります。

岩月遠慮する必要はありませんよ。薬剤師には説明義務があり、相談したからといって、費用負担が増えるわけではありません。また、処方箋なしで買えるOTC医薬品のうち処方箋薬から移行して間もない「要指導医薬品」の一部は、薬剤師による対面での情報提供や指導が義務付けられています。オンライン全盛の時代ですが、対面で購入する方の表情を見て話す価値は依然大きいです。

SHELLY自分の体を自分で守る「セルフケア」や、軽い体の不調は自分で手当てする「セルフメディケーション」が広まっていますね。私も最近、病院に行かず薬局でOTC医薬品を買うことが増えました。こうした状況で薬剤師や薬局はどんな役割を果たせますか。

岩月2027年5月から「健康増進支援薬局」が制度化され、病気になる前の相談に乗ったり、健康づくりを支援したりする地域の拠点になります。薬剤師は予防と治療の両方に関われる医療職ですので、医師や保健師、管理栄養士らと連携して地域住民の健康をこれまで以上に支えます。

SHELLY自分自身にとって「良い薬剤師」はどう探せばよいでしょうか。

岩月相性は大切ですから、説明が分かりやすく質問しやすい薬剤師を探しましょう。ご自身が「信頼できる薬剤師を見つける」という視点が大事です。

薬との付き合い方 対面確認で安全性を担保

SHELLY決められた用法・用量を超えて薬を大量服用する「オーバードーズ」が社会問題化しています。薬剤師はこれにどう対処していますか。

岩月オーバードーズは単なる薬の問題ではなく、悩みや孤立感の表れでもあります。販売を制限するだけではなく、「なぜそうなったのか」を聞き取り、支援につなげることが大切です。この点でも薬局は、地域の相談窓口として機能しています。

SHELLY子供でも容易に閲覧できるネット上に人工知能(AI)で生成したとみられる薬の情報があふれています。「この薬ですぐに痩せた」といった虚偽の投稿を子供が信じてしまうのではないかと危惧しています。

岩月近年、痩せるために糖尿病治療薬を使用する問題が起きています。オンラインのみで薬の入手まで完結し、第三者による検証が困難になると、不適切な使用を防げないことが懸念されます。対面で確認できる薬局は、薬を服用する際の安全性を担保する役割を果たしています。

被災地への薬剤師や専用車両の派遣も

SHELLY7月に熊本県を中心とした大地震がありました。薬局や薬剤師は災害時にどんな役割を果たしますか。

岩月まず、地域の薬局が可能な限り通常の機能を維持できるように支援します。その上で、被災地に薬剤師を派遣したり、調剤機能を備えた「モバイルファーマシー」と呼ばれる災害対応医薬品供給車両を出動させたりします。つまり、平時のサービスをできるだけ維持しつつ、不足分を外部から補う体制を整備しています。

SHELLY健康増進支援薬局のような「病気になる前から相談できる場所がある」ことをもっとPRしてほしいです。相談のために訪れてよい場所だと分かれば、利用者が増えるはずです。患者さんの不安を感じ取り、「気になることはないですか」などと尋ねてくれる薬剤師には相談しやすいです。

岩月昔の薬局は地域住民が気軽に立ち寄れる場所でしたが、院外処方の普及で調剤中心に変化しました。今後は地域の相談拠点に立ち返ります。

SHELLY安心して相談できる薬剤師や薬局を自分で探したいと思いました。

岩月全国には約6万3000軒の薬局があります。遠慮せず質問し、自分に合う薬剤師や薬局を見つけてください。

岩月 進(いわつき・すすむ)

岩月 進(いわつき・すすむ)会長

1978年、名城大学薬学部を卒業後、塩野義製薬に入社。81年、愛知県刈谷市にヨシケン岩月薬局を開設。2004~10年、20~24年に日本薬剤師会常務理事を務め、24年6月、第26代日本薬剤師会会長に就任。

SHELLY(シェリー)

SHELLY(シェリー)さん

バラエティ・情報番組などに出演するほか、MCとしても活躍。三人の娘の母。

2020年末よりYouTube「SHELLYのお風呂場」で性教育を中心とした情報を発信。現在は日本で活動しつつ、家族とオーストラリアで生活。

2026年10月17日(土)付 毎日新聞朝刊にて掲載
紙面PDFはこちら
薬剤師・薬局の上手な活用法
第1回
見つけよう、私のかかりつけ薬剤師

「かかりつけ薬剤師・薬局」とは、自分にとって「いつもの」「お気に入りの」薬剤師・薬局です。体調や生活リズム、仕事、家族のことまで知っているかかりつけ薬剤師なら、薬の効き方や副作用の現れ方も踏まえ、自分に合った説明を受けられます。気になることを気軽に聞くことができ、夜間や休日にも電話で相談できます。必要なときには医療機関や相談窓口の紹介も。そんな安心が「かかりつけ薬剤師・薬局」です。

複数の医療機関にかかっているとき、処方箋を一つの薬局にまとめれば、薬の重複や飲み合わせをより確実・速やかに確認することができます。近年のデジタル化により、処方箋の情報を事前に薬局へ送っておくことで、薬ができてから受け取りに行くなど待ち時間も短縮できるようになってきました。

薬局では、日ごろから健康な方も、家庭に備える市販薬や健康食品の選び方、健康診断結果の読み解き方や適切な受診先の紹介など、気軽に相談いただけます。薬局の中には、独自のイベント(健康相談、講演、体験、測定など)を行ったり、健康づくりに役立つ情報を発信したりしている「健康サポート薬局」もあります。ぜひ、皆さんの健康づくりに活用してください。

近くにどのような薬局があるかは、厚生労働省の「医療情報ネット(ナビイ)」で検索・比較できます。開局時間や夜間・休日の連絡先、健康サポート薬局かどうかなどを調べ、自分に合う「かかりつけ薬剤師・薬局」を選んでみましょう。薬を安全に、正しく使い、自分の健康を守るために、「いつものかかりつけ薬剤師」を見つけ、その連絡先をスマートフォンや自宅の電話帳に登録してみませんか。

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かかりつけ薬剤師・薬局とは?
第2回
地域を支える一員、薬剤師の役割は?

日本は2025年以降、約25年間にわたり年間約160万人が亡くなると推計され、「多死社会」を迎えています。2000年には看取りの約81%が病院でしたが、2023年には65.7%まで低下する一方、在宅での看取りは13.9%から17.0%へと増加しています。これは在宅医療の提供体制が整備されてきたことも一因と考えられます。また、内閣府の調査では、人生の最期を迎えたい場所として「自宅」を希望する人が最も多く、住み慣れた地域で自分らしく暮らし続ける「エイジング・イン・プレイス」の考え方が広がっています。

その実現を支える重要な仕組みの一つが在宅医療です。在宅医療における薬剤師の役割は、処方薬を届けるだけではありません。例えば、がん終末期の患者さんが痛みや吐き気などの症状に悩んだ際には、医師や看護師と連携し、症状や生活状況に応じた薬を提案・提供します。また、薬の効果を十分に得るための使用方法や、副作用をできるだけ軽減するための工夫を説明し、患者さんや家族に寄り添いながら支援します。

在宅医療・介護は、多職種が連携して地域で支える体制づくりが進められています。人生の最期をどこで、どのように迎えたいかという考えは一人ひとり異なり、その意思を尊重することが大切です。そのため、普段から家族や医療・介護関係者と話し合う「人生会議(アドバンス・ケア・プランニング:ACP)」の取り組みも重要視されています。薬剤師は患者さんだけでなく家族の不安にも寄り添い、安心して在宅での療養を続けられるよう支援する重要な役割も担っています。在宅医療やお薬に関することは、お近くの薬剤師・薬局へぜひご相談ください。

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第3回
薬局で始めるセルフケアの習慣

皆さんは「セルフケア」や「セルフメディケーション」という言葉をご存じでしょうか。セルフケアとは、日頃から健康づくりや病気の予防に取り組むこと、セルフメディケーションとは、ちょっとした体調不良のときに市販薬(OTC医薬品)などを活用しながら、ご自身で適切に対処することを言います。

近年はインターネットやSNSで健康や薬の情報が手軽に手に入る一方で、誤った情報や、自分に合わない薬の使用による健康被害が問題となっています。ネットを介した糖尿病治療薬の不適切な購入・使用などもその一例です。

薬局では、薬剤師が皆さんのお話を伺い、症状や持病、現在飲んでいるお薬などから適切な判断をします。薬局はそれぞれの地域において医療機関等と連携しており、受診が必要と判断した場合は医療機関をご案内し、市販薬で対応できる場合は体に合ったお薬をご提案します。また、必要に応じて食事や運動など生活習慣の改善についても一緒に考えます。

最近では薬局での緊急避妊薬の取り扱いが始まるなど、薬局の役割はますます広がっています。薬を手軽に購入できる便利さも大切ですが、購入前に薬剤師に相談する"ワンステップ"が、病気の重症化を防ぎ、健康を守ることにつながります。

健康に不安を感じた際、「病院へ行くべきか」「市販薬で様子を見てもよいか」と迷ったら、まずは薬局へご相談ください。「こんなことで相談してもいいのかな」と思うようなことでも構いません。皆さんが安心してセルフケア・セルフメディケーションを実践できるよう、薬剤師は身近な健康の専門家として、皆さんに寄り添い、健康を支えます。

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セルフメディケーションって何?
第4回
探してみよう、薬局製剤

「薬は製薬会社がつくるもの」-そう思っていませんか ?実は、薬剤師が薬局の中で自ら作って販売するお薬があります。それが「薬局製造販売医薬品(以下、薬局製剤)」です。

ここで問題です。この薬局製剤を実際に製造・販売している薬局は、日本全国にどのくらいあると思いますか?(答えは、記事の最後に!)

薬局製剤は、決して新しい薬ではありません。地域の人々の声に応え、薬剤師の知識と技術によって大切に受け継がれてきた、いわば日本で長く愛される"古き良き薬"です。保湿クリームや皮膚の塗り薬、葛根湯などの漢方薬から本格的な風邪薬まで 、何を作るかは薬局次第。各薬局のこだわりや思いがそこに息づいています。気になる症状があれば直接薬剤師に相談しながら選ぶことができるのも大きな魅力です。

最近では、令和9年1月より薬局製剤がセルフメディケーション税制(医療費控除)の対象となることから、密かに注目を集めました。しかし、まだまだ知っている人は多くありません。薬局製剤は単なる「昔ながらの薬」ではなく、患者さん一人ひとりに寄り添い、地域の健康を支えてきた薬剤師の知恵と技術が詰まった逸品です。今もその技術を受け継ぎながら、地域で活躍しているちょっと特別な安心できる薬局があなたの街にもあるかもしれません。

さて、最初の問題の答えです。実は薬局製剤を製造・販売している薬局は、全国でわずか約5%(20軒に1軒)。まさに、知る人ぞ知る"街のこだわりのお薬屋さん" といった存在です。街で薬局製剤を販売している薬局を見かけたら、薬剤師・薬局に聞いてみましょう。あなたの街にも、薬剤師が受け継いできた"古き良き薬"があるかもしれません。

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薬局製剤のご相談はかかりつけ薬剤師・薬局に
第5回
医療DX時代のお薬手帳

「マイナ保険証があれば、お薬手帳はもう必要ないですよね?」

薬局で、このような質問を受けることが増えてきました。確かに、マイナ保険証を利用し、患者さんの同意のもとで処方された薬剤情報などを確認できるようになるなど、医療DXは着実に進んできています。

一方で、マイナ保険証で確認できる情報は5年間しか保存されていません。また市販薬(OTC医薬品)や健康食品、サプリメントの利用状況、さらには「実際にきちんと服用できているか」といった情報も、マイナ保険証だけでは分かりません。これらは、お薬手帳や患者さんからお話を伺うことで得られる大切な情報です。

こうした情報の把握は、お薬の飲み合わせや重複の確認だけでなく、副作用の早期発見や防止、安全な薬物療法につながります。また、旅行先での受診や救急搬送、災害時など、自分で服用している薬を説明できない場面でも、お薬手帳は医師や薬剤師に必要な情報を伝える大切な役割を果たします。

近年では、電子お薬手帳の普及も進み、スマートフォンで服薬情報を管理したり、服薬時間を知らせたり、家族のお薬情報をまとめて管理したりすることもできるようになりました。紙と電子のお薬手帳のいずれかを、それぞれの特長を生かしながら活用することが大切です。

医療DXが進む今だからこそ、大切なのは「マイナ保険証か、お薬手帳か」という二者択一ではありません。それぞれの役割を理解し、必要な情報を適切に医療者につなぐことが、安全で質の高い医療を受けることにつながります。

お薬手帳は、薬の記録を残すためだけのものではありません。ご自身や家族の健康を守り、医療者と情報をつなぐ大切なツールとして、これからも上手に活用しましょう。

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スマートフォンにeお薬手帳3.0アプリを
第6回
子ども達の今と未来を守る学校薬剤師

学校で子ども達の心身の健康を確保するために、医師や歯科医師そして薬剤師は専門家として関わっています。特に、学校環境衛生を維持・管理するためには、学校薬剤師の活動が不可欠です。学校薬剤師は教室の温度や湿度、換気の状態、明るさ、騒音、飲み水などを定期的に調べ、子ども達の学習環境が適切に維持されているかを確認します。また子ども達に、適切な環境で生活することの大切さや、環境衛生の変化が健康に及ぼす影響についても教えています。

近年、子ども達を取り巻く気になる健康課題に一般用医薬品の過剰使用、いわゆるオーバードーズ問題があります。このような一般用医薬品の不適切な使用や、大麻などの薬物乱用を防ぐため、学校薬剤師は薬の専門家として、くすり教育や薬物乱用防止教育に参画し、オーバードーズや薬物乱用による健康被害や薬物が社会に及ぼす悪影響を伝えるとともに、子ども達が薬物の誘惑から逃れるスキルを身につけられるよう取り組んでいます。

オーバードーズを繰り返す子どもは「生きづらさ」を抱えていると指摘されています。指定濫用防止医薬品としての販売規制は重要ですが、学校薬剤師をはじめ、子ども達の周りにいる大人が気づき、寄り添うことで、子ども達の「生きづらさ」を和らげていくことも大切です。

令和8年熊本地震で多くの子ども達が被災しました。薬剤師は被災地への医薬品供給に奔走し、避難所となった学校の環境衛生維持に努めてきました。今後は子ども達の心のケアも重要となります。学校薬剤師は、子ども達の今と未来を守ることを目標に活動を続けています。

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学校薬剤師の活動
公益財団法人 日本薬剤師会