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月刊五輪

「五輪を語ろう」 ボランティア、倫理的か 巨大ビジネスの下で=アラウンド・ザ・リングス編集長 エド・フーラ

 <AROUND THE RINGS>

     2020年東京五輪・パラリンピックに向けて、東京都と大会組織委員会は今夏、11万人と想定されるボランティア募集を開始する。彼らは笑顔で特別のユニホームをまとい、観客の道案内、選手らに対する言語サポート、ドーピング検査の補助など大会の舞台裏を支える。加えて、収支という面でも大きな貢献をしている。

     五輪におけるボランティアの概念は1948年ロンドン五輪から始まった。第二次世界大戦後、初開催となる夏季五輪を推し進めるため、主催者側はボランティアを募集した。当時は現在のような数千億円規模の放映権料どころか、スポンサー抜きの大会だった。英国の人々の誇りが大会開催を可能にした。

     当時と比べれば、大会の複雑さや規模、予算は様変わりし、大会そのものをビジネスに変えた。大会後には開催都市に何が残されるかが問われるようになった。

     東京は他のどの五輪よりも、ボランティアが重要となる大会になるだろう。11万人という数字は過去最大規模となる。面接などによる選考、研修後も、輸送や食事、管理からスケジュール調整まで大きな課題が待ち受ける。無償とはいえ、これだけの規模のボランティアを動かすとなるとコストもかなりのものになるだろう。

     大会が始まると、必要な数のボランティアが集まるかどうかという新たな問題に直面する。郊外で開催された平昌冬季五輪は国内各地から参加者を集める必要があり、彼らの宿泊場所を確保する必要もあった。

     海外から東京五輪に参加する場合、とりわけ語学スキルが求められる。専門的な技術が求められる医療などは例外だろうが、リオデジャネイロ五輪などと同様、宿泊費や渡航費は自己負担となる。それでも、参加しようと思わせるものは何だろうか。東京の「ボランティア戦略」を読んだが、チケットの提供など具体的な特典は盛り込まれていない。

     ボランティアは12年ロンドン五輪で「ゲームズメーカー(大会を作る人々)」と呼ばれた。東京でも誇りを抱かせる名前が付けられるだろう。ボランティア精神は、スポーツの世界でも草の根の大会を支えるなど欠かせない。だが、巨大なビジネスの側面を持つ五輪で無償で働くことが公平、倫理的と言えるかどうか。そう問い直す時期を迎えている。【訳・田原和宏】


     ■人物略歴

    エド・フーラ

     米国の五輪専門メディア「アラウンド・ザ・リングス(ATR)」設立者で編集長。1992年バルセロナ五輪から夏冬すべての大会で現地取材をした。ホームページはhttp://www.aroundtherings.com/

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