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Promises 2020への約束:海外で邁進 トライアスロン高橋×カヌー矢沢

サングラスをかけ、走るポーズをするトライアスロン女子の高橋侑子選手(左)と加圧ベルトを付けてポーズを取るカヌー女子の矢沢亜季選手=渡部直樹撮影

月刊東京五輪

海外で邁進 トライアスロン高橋×カヌー矢沢

 2020年東京五輪・パラリンピックで活躍が期待される選手たちが競技の枠を超えて語り合う「Promises 2020への約束」。今回は海外を拠点に実力を伸ばしている女性アスリートが対談した。ともに今夏のジャカルタ・アジア大会で金メダルに輝いたトライアスロンの高橋侑子(27)=富士通=とカヌー・スラロームの矢沢亜季(27)=昭和飛行機工業。海外での経験や20年東京五輪に懸ける思いを率直にぶつけ合った。(対談は11月17日に実施)【構成・円谷美晶】

    笑顔で質問に答えるトライアスロン女子の高橋侑子選手=渡部直樹撮影

    ジュニア時代から意気投合

     ――以前から親交があるとのことですが、初めて会った時の印象を教えてください。

     矢沢 高校3年生だったよね。

     高橋 JOC(日本オリンピック委員会)のジュニア選手の研修会でグループが一緒でした。競技は違うけど、同い年で意気投合しました。

     ――ずっと連絡を取り合っていたのですか。

     高橋 そうですね。いろいろなところで活躍を聞いて、頑張っているなと思いました。なかなか大会で一緒になることはないです。

     矢沢 15年にロンドンで合宿をしていた時、たまたま高橋選手の試合があり、ちょうど休みだったので観戦しに行きました。

     ――お互いの競技の印象は。

     矢沢 トライアスロンは3種目あるので、聞いただけでも大変。苦しいイメージがあります。

     高橋 スラロームは見ているだけで魅力的。トライアスロンも自然が相手だから、共通点はあるのかな。

     ――何をきっかけに競技を始めたのですか。

     矢沢 父が元々、カヌーやラフティングなどアウトドアのスポーツをやっていました。父と一緒にスラロームをしていた兄(一輝、リオデジャネイロ五輪代表)の練習を見に行った時、楽しそうだったのでやってみたいと思って始めました。普段は陸の上で生活しているから、水上の感覚はなかなか経験できません。自分だけのボートに乗って好きなところに行けるのが楽しかったので、やってみようかなと。試合に出ると、同い年の子に負けたら悔しいという気持ちになり、小学6年生の頃にはどんどん(競技へ)入っていきました。

     高橋 私の父はトライアスロンが趣味でした。子どもの頃から運動が好きで、知らない間に泳いだり、走ったりしていました。初めてトライアスロンの大会に出たのは小学2年生の時です。小学校で競泳、中学校では陸上もやったけど、思うような結果を出せなくて……。トライアスロンの試合に出たら全国大会で優勝できました。三つ(3種目)そろうといいのかなと思って。高校からトライアスロンに絞りました。

     ――相手の競技について、聞きたいことはありますか。

     矢沢 栄養ドリンクを補給するタイミングは? 気になる。

     高橋 スイム(水泳)の時は補給しない。バイク(自転車)にはボトルを二つ差し、中身はもちろん自由。あとは栄養のジェルをバイクにテープで貼り付ける。(バイクの距離は)40キロで1時間程度だから、好きなタイミングでとります。

     矢沢 補給してすぐは、絶対に走れない。おなかが痛くなりそう。私は試合前のアップが終わってから、バナナやおにぎりを補食としてとります。

     高橋 基本的な質問だけど、(試合の)距離は決まっているの?

     矢沢 コースによって違う。250メートルから300メートル。長くて400メートル。

     高橋 でも、(川の流れに逆らって)上がって行き来するよね。

     矢沢 そんなに(笑い)。「アップゲート」といって、川の下流から上流に通過するゲート(旗門)があって、そこを上るイメージが皆さん強いみたい。アップゲートのところだけ回転する感じなので、上流にまでこぎ上がることはあまりない。失敗したら、そういう場合もあるけど。

    記者の質問に答えるカヌーの矢沢亜季選手=渡部直樹撮影

    世界トップの技術、吸収できる環境

     ――2人とも海外を拠点に活動しています。どうして国内ではなく海外を選んだのですか。

     高橋 トライアスロンは国の垣根を越えてチームで活動している選手が多いです。世界ランキング上位の選手たちが集まって練習しているのを見て、純粋にすごく興味がありました。東京五輪を見据えても、タイミングは今だなと思ったのが17年。まず米国のサンディエゴに拠点を移し、インターナショナルのチームに入りました。英語もそれほど話せず初めは大変でしたけど、コーチもチームメートも本当に良くしてくれました。今では成績も安定し、結果も出るようになり、行って良かったです。

     矢沢 16年10月から日本代表のコーチがスロベニア人になったこともあり、昨年からスロベニアに拠点を移して練習しています。昨年はオフもスロベニアにいました。友達がいないし、休みは1人で出掛け、寂しいなという気持ちになったこともありました。私も英語はそこまで話せないけれど、コーチとのコミュニケーションや生活するには困らないくらいは話せるので、あまり苦労はしませんでした。

     ――拠点を移したことで強化できた点は。

     高橋 スイムが一番伸びたと実感しました。以前は先頭集団で上がれる時と、そうでない時の差が激しかったです。今は安定して自分のパフォーマンスを出せるようになりました。全体的にタフになったと思います。練習方法はすごく特別なわけではありません。オフなく毎日コツコツと同じことを積み重ね、力が付いてきたかな。

     矢沢 一番良い点は人工コースで練習できる環境だということ。常に大きな流れの所で練習できるので、判断力や対応力が身についたと思います。あと、海外だとトップ選手と一緒にこいだり、見たりすることもできるので学ぶことも多い。

     ――海外生活で気になることは。

     矢沢 自転車は何台持って行くの?

     高橋 1台しか持って行かない。壊れた場合は状態によるけど、現地で直せる場合は直すし、直せない場合は日本から送ってもらう。カヌーは何艇持って行くの?

     矢沢 カヌーは1艇だけ持って行く。パドルは予備で2、3本ある。本当に壊れたら注文して頼むしかないけど、練習してて壊れたことはないので。

     高橋 でも、岩とかたくさんあるよね?

     矢沢 人工コースだと、岩はない。すべてプラスチックで、障害物はあるけど隠れているようなものはない。そこまでのアクシデントは人工コースではないんです。

     ――日本に帰ってきたら絶対に食べるものはありますか。

     矢沢 結構、日本食が恋しくなり、必ずおすしを食べます。

     高橋 毎年5月に横浜、10月にお台場で試合があるので、その前後に帰ってきます。(米国の)サンディエゴでは日本食も結構あり、たまにおすしも食べに行きました。日本のようなおすしではなく、カリフォルニアロールみたいなものです。

     矢沢 私は自炊をしています。炊飯器を買って、なるべく日本と近い味にして、必ずお米を食べるようにしています。

     ――一番得意な料理は何ですか。

     矢沢 向こうは薄い肉をあまり売っていません。アジアンショップで見つけた薄い肉を買い、しょうが焼きなどを作っています。

    トライアスロンの日本選手権で初優勝した高橋侑子=東京都港区で2018年10月14日、芳賀竜也撮影

    チームメートに日本食振る舞う機会も

     高橋 チームメートと曜日ごとに担当を決めて食事を作っています。日本食を作ってほしいと言われ、お好み焼きやそばを作りました。ご飯を炊いて手巻きずしも。中身はツナとかスモークサーモンが多いですが……。

     ――海外生活で困ることはありましたか。シャンプーとかお気に入りの物が使えないのでは。

     高橋 私は大体、日本から持って行きます。

     矢沢 私はトリートメントだけ持って行って、シャンプーとかは現地で買っています。できるだけ現地の物で対応するようにしています。日本ではこだわるけど、練習するために海外へ行っているので。カヌー以外のことにお金や時間を使ってしまうと、別の目的になってしまう。そういうところはしっかりとメリハリを付けています。

     ――今日は「こだわりの品」を持ってきてもらいました。

     矢沢 これは加圧ベルトといって、体に「圧」をかけて圧迫し、外すと血が流れる。血のめぐりが良くなる。一種のトレーニングウエアみたいなものです。

     高橋 サングラスです。これはアジア大会に出場する日本のオークリーのサポート選手向けで、選手のためにみんなでカラーをそろえて作ってもらいました。アジア大会モデル、という感じ。バイクは風もあるし、アジア大会では日差しも結構強かったので、必須アイテム。競技を始めた時からオークリーを使っているので、こだわりです。

    東京で納得できる結果を

     ――東京五輪には、どんな気持ちで臨みますか。

     高橋 私は東京生まれの東京育ち。(選手として)一番いいと言われている時期(年齢)に、どんぴしゃで来る東京五輪ってすごく運命的なものだと思う。自国開催の五輪でどれだけやれるかというのはすごく楽しみ。まだまだやることはたくさんあるけど、一歩一歩前に進んでいきたい。

    第39回NHK杯全日本カヌースラローム競技大会の女子カヤックシングル決勝で優勝した矢沢亜季=富山市で2016年4月3日、三浦博之撮影

     矢沢 前回が初めての五輪だったけど、ワールドカップや世界選手権とは全く別の大会。普段より観客もたくさんいて、そういう雰囲気に少しでも慣れれば良かったけど、ちょっと準備不足だった。リオで得た経験をしっかり東京五輪につなげたい。しっかりと結果を求め、納得できる試合にしたいです。

     ――具体的にどんな結果を求めていますか。

     矢沢 前回の五輪で羽根田(卓也)選手がメダルをとって、私も他の選手も勇気づけられました。一番いい色のメダルをとれればいいけど、しっかりとパフォーマンスをして、納得のいく結果で終わりたいです。

     高橋 メダルは一番の目的だけど、矢沢選手の言うように自分の持っている力をしっかり出して納得できるレースができたら結果につながると思います。

     ――まだ競技についてよく知らない人もいると思います。認知度を上げるために何が必要ですか。

     矢沢 (所属する)会社で体験イベントをやっているのですが、そこで一人でも多くの人にカヌーを知ってもらえればいいと思います。自分が成績を出して報道してもらって、カヌーのスラロームという競技を知ってもらいたい。

     高橋 私も一緒です。子ども向けのトライアスロン教室やイベントを通して、どういう競技か少しずつ伝えられているかなと。やっぱり結果を出して競技を取り上げてもらえると、認知度は一気に上がる。いろいろな所で発信できたらと思います。

    アジア大会で獲得したメダルを手に笑顔を見せるトライアスロン女子の高橋侑子選手(左)とカヌー女子の矢沢亜季選手=東京都千代田区で2018年11月17日、渡部直樹撮影

     たかはし・ゆうこ 東京都三鷹市出身。中学3年から本格的にトライアスロンを始め、法大時代に日本学生選手権4連覇を果たす。2016年世界大学選手権優勝。17年1月から米カリフォルニア州サンディエゴを拠点に、多国籍チームでトレーニングしている。ジャカルタ・アジア大会は個人、混合リレーで2冠。10月に日本選手権を初制覇した。

     やざわ・あき 長野県飯田市出身。兄一輝の影響を受け、小学3年から競技を始める。2014年仁川アジア大会のスラローム・女子カヤックシングルで銅メダル。兄とともに16年リオデジャネイロ五輪に出場した(予選敗退)。17年5月から活動拠点をスロベニアへ移し、ジャカルタ・アジア大会は同種目で日本勢初の金メダルを獲得した。