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毎日新聞

アーバンスポーツのPRに力を注ぐIOC委員の渡辺守成氏(右から5人目)=東京都渋谷区で2019年3月21日、佐々木順一撮影

東京・わたし

IOC委員・渡辺守成氏「JOC、組織としてどうしたいのか」

 2020年東京五輪・パラリンピック招致を巡る贈賄容疑で、フランス司法当局から捜査を受けている日本オリンピック委員会(JOC)の竹田恒和会長(71)が、6月の任期満了をもって会長職を退任するとともに国際オリンピック委員会(IOC)委員を辞任しました。日本人で唯一のIOC委員となる渡辺守成氏(60)に、スポーツ界として取り組むべきことなどを聞きました。【聞き手・田原和宏】

    アーバンスポーツの普及や振興に努めるIOC委員の渡辺守成氏=東京都渋谷区で2019年3月21日、佐々木順一撮影

     ――竹田氏の退任表明をどう受け止めていますか。

     ◆苦労して東京五輪を招致されただけに無念、断腸の思いだったと思います。ただし、事態を収拾するという点では正しい判断でした。五輪開幕まで500日を切りました。一日たりとも無駄にはできません。

     ――竹田氏は歴代最長の10期18年もJOC会長を務めました。任期中に竹田氏のリーダーシップ不足により、JOCの存在感が低下したと指摘されています。

     ◆厳しい言い方ですが、JOCが組織としてどうしたいのかが見えません。私が身を置くビジネスの世界では、まずはビジョンありきです。戦略、戦術はその後に続きます。東京五輪はとても重要なイベントですが、あくまで戦略、戦術。東京五輪によって何を目指すかが大切です。

     JOCは金メダル30個を目指すと言いますが、メダルを強調したばかりにつぶれる選手が出て、パワーハラスメントも起きました。JOCが何をすべきか、現実を見つめれば答えは出てくるはずです。

     ――竹田氏の後任にはどのような資質、能力が求められますか。

     ◆本来ならばビジョンを描ける人物が望ましい。ビジョンや夢を描けば、みんなが勝手に動き始めます。国際体操連盟(FIG)の会長として私が示したのは「体操をサッカーのようにする」こと。ビジョンを示せば、国内競技団体(NF)などから「こうすれば渡辺の夢に近づくのでは」といった提案が寄せられます。

     ただし、いまは緊急時です。世の中からスポーツ界はインテグリティー(高潔性)が低下していると見られています。国民の期待に応えられるようなインテグリティーの高い組織になることが最優先すべきです。

     ――IOCは竹田氏の続投に懸念を示していたということですが、どう感じましたか。

     ◆「困惑している」という声は聞いていました。IOC関係者の来日予定がキャンセルになったという話もありましたが、懸念があるのだと思います。リスクマネジメントが最優先される風潮が強いのも、バッハ会長の危機感の表れではないでしょうか。

     ――JOCは竹田氏らの続投を念頭に「選任時70歳未満」とある役員の定年規定を改正しようとして批判されました。スポーツ庁も役員任期の上限を10年とする案を示しています。

     ◆不祥事が起こるたびに言うのですが、スポーツ界の常識と社会の常識がかけ離れすぎています。スポーツ界が近づける努力をしなければ、国民からの信頼を得られません。スポーツは本来、社会よりも高いインテグリティーが求められるはずです。

    「今、考えるべきは東京五輪後」

     ――日本アーバンスポーツ支援協議会の会長も務めています。アーバン(都市型)スポーツに注目する理由は何ですか。

     ◆スポーツが今の時代、若者のニーズに合っていないと感じるからです。「スポ根」ではありませんが、昔はつらく苦しい練習に耐えて頑張る姿が手本でしたが、今は違います。

     アーバンスポーツの選手は自分の壁に挑むというスポーツ本来の精神を残しながらも、自分がやりたいこと、楽しいことを追求します。トラディショナル(伝統的な)スポーツの選手は現役を引退したらもう見たくない、やりたくないとなりがちですが、もっとアーバンスポーツから学ぶ必要があると思います。

     ――昨年に続いてアーバンスポーツの国際大会「FISE(フィセ)」が4月に広島で開催されます。

     ◆昨年の今ごろはアーバンスポーツと聞いても知る人はほとんどいませんでしたが、今は違います。今年は集客のためのコンサートもしません。昨年の集客は8万6000人でしたが、今年は20万人を目指します。20万人を超えればコンテンツとしての価値が生まれます。そうなったら初めて入場料をいただこうと思います。

     ――東京五輪の開幕まで500日を切りました。今、考えるべきことは何ですか。

     ◆「大会後」です。大会後の姿で五輪の評価が決まります。ビジネスの世界では20年以降、「五輪不況」を懸念する声があります。五輪後、経済成長率が鈍化する傾向があるからです。「五輪不況」を避けるには、日本の経済界と一緒に対策を考えなければいけません。

    わたなべ・もりなり

     北九州市出身。東海大在学中にブルガリアで新体操と出合い、ジャスコ(現イオングループ)入社後、競技の普及に尽力した。日本体操協会理事、専務理事を歴任。2013年から国際体操連盟理事を務め、16年10月に会長に選ばれた。18年10月、国際オリンピック委員会(IOC)委員に就任。

    田原和宏

    毎日新聞東京本社運動部。1972年、奈良県生まれ。教職などを経て2001年入社。06年からスポーツ取材に関わり、福岡、大阪勤務を経て13年から現職。16年リオデジャネイロ五輪では体操、卓球などを担当。東京五輪取材班キャップ。スポーツクライミングなど新競技にも注目する。職業病なのか、「おかしいやろ」が口癖。