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東京へ ともに歩む

毎日新聞

2020年東京五輪で開閉会式のエグゼクティブ・クリエーティブ・ディレクターを務める映画監督の山崎貴さん=東京都港区で2019年2月26日、根岸基弘撮影

東京・わたし

五輪の開閉会式統括・山崎貴氏「キーワードは『体験』」

 2020年東京五輪・パラリンピックで五輪開閉会式の統括を担当する映画監督の山崎貴氏(54)に、演出で大切にしている理念や東京五輪に込めたメッセージなどを聞きました。【聞き手・倉沢仁志】

     ――開幕まで500日を切りました。

     ◆焦っていますね。至る所にカウントダウン(の表示)があるので、それを見るとキュッと真綿で首を絞められる感じです(笑い)。

     ――五輪統括に就任した際の記者会見では「日本らしさを出していきたい」と抱負を述べられました。日本らしさとは。

     ◆日本人の持つメンタリティーが、世界のこれからの生き方のヒントになりそうな気がします。僕は、映画を作る時に表面的な面白さと、奥深いメッセージを同時に伝えられたらと思って作っているのですが、何かそれに近いことなのかなと思います。

     ――日本人のメンタリティーについて教えてください。

     ◆協調性、献身性などでしょうか。それらをどう、生き方の中に取り込んでいくのかということが、一つの伝えるべきメッセージだと思います。

     ――12年ロンドン五輪の開会式の演出が印象に残っていると聞きました。

     ◆ロンドンの演出は、伏線が疑問に変わり、この謎が何なのかと思ったら、結論が出る。すごく映画的で好きですね。

     ――08年北京五輪も印象に残っていると。

     ◆国自慢だという人もいますが、僕はあの時点で中国の持っているスケールが表現できたと思います。ただ、日本がそういうスタイルでやるかどうかは、別の話。それほどコストをかけないということを模索しないといけない。詳しくは言えませんが、ロンドンや北京で感じた要素を日本用に「翻訳」しないといけないのかな、という気がしていますね。

     ――昭和30年代の東京を舞台にした代表作「ALWAYS 三丁目の夕日」や戦時中が舞台の「永遠の0」などの製作を通じて、日本らしさという視点が養われている面もあるのでしょうか。

     ◆当時の生き方が今の生き方へのヒントにならないかという視点で、ノスタルジーはすごく好きなんですよ。あの時代の作品が増えているので、そういうのが好きそうに見えてしまうのかもしれません。得意ジャンルになりつつあるのかな(笑い)。

     ――閉会式は長崎に原爆が投下された8月9日。何かしら世界へのメッセージにしたいという気持ちはありますか。

     ◆式典の総合統括を務める野村萬斎さんも話していましたが、「鎮魂と再生」というテーマは大切です。でも、世界の視点に立っての鎮魂と再生でないといけない。非常にデリケートなことだし、それをどう織り込み正しく伝えるかは、すごく難しい課題です。

    2020年東京五輪で開閉会式のエグゼクティブ・クリエーティブ・ディレクターを務める映画監督の山崎貴さん=東京都港区で2019年2月26日、根岸基弘撮影

     ――式典は生で見る人以上に、画面を通じて見る人が多いと思います。演出上、この違いをどのように考えますか。

     ◆生の人たちが感じる空気感が、映像でも伝わるようなやり方を考えています。例えばですが、今はモバイル機器が発達しているので、会場の人も機器を見ながら目の前の式典を見るんじゃないかな。だから、今までより(会場と映像の)違いがイコールになるようなやり方は、あるのではという気はしています。長時間外にいる選手に対するケアは絶対必要です。その中で、皆さんが良い気分で大会を見られるようにしたい。もう少し、会場の人たちが選手を直接応援できるような仕組みにできたらと思います。

     ――「体験」というものが一つのキーワードになるのでしょうか。

     ◆体験しかない気がします。バーチャル世界などが発達しているだけに、体験することがより重要な意味を持ってくる。人間本来の姿を取り戻すためには大事なことです。

     ――山崎監督は、最初の東京五輪があった1964年生まれです。2度目の五輪に関わる意義とは。

     ◆運命的ですね。僕らは、「五輪の年」と言われて育っている。今回の東京五輪もまた、後々の人にとって思い出す標識になると思います。関わることができるというのは、不思議な縁を感じますね。当時(生後4カ月)は、テレビの前でじっと見ていたらしいので(笑い)。脳のどこかには記憶があるはずなんですよ。

     ――今回は復興五輪とも位置づけられています。

     ◆道半ばですが、東日本大震災で(世界各国から)心配してもらったことに対して、前向きに頑張っていることを伝える良いチャンスではないでしょうか。立ち直ろうとしていることをちゃんと伝えたいです。

     ――多くの人が式典を楽しみにしています。

     ◆まだどんなものになるかが分からないですからね(笑い)。ただ、楽しみにしてもらっていい。恐らく自国開催の五輪は一生に一度か二度あるかないかだと思います。一緒に体験していきましょう。

    やまざき・たかし

     1964年生まれ。長野県松本市出身。2000年に自ら企画した「ジュブナイル Juvenile」でデビュー。監督を務めた「ALWAYS 三丁目の夕日」は、2006年(第29回)日本アカデミー賞で最優秀作品賞など12部門を受賞する大ヒット作となった。その後も「永遠の0」「寄生獣」など数多くのヒット作を手掛けた。今夏には、戦艦大和を描いた「アルキメデスの大戦」が公開予定。「どうせ○○」という言葉を使わないのがモットー。

    倉沢仁志

    毎日新聞東京本社運動部。1987年、長野県生まれ。2010年入社。高知、和歌山両支局を経て17年から東京運動部。レスリング、重量挙げなどを担当。高校時代には重量挙げで全国高校総体に出場したが、階級で10キロ以上軽い三宅宏実選手の記録には遠く及ばない。