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東京へ ともに歩む

毎日新聞

階段ダッシュを終え、大学の後輩の丸山城志郎(右)とリラックスした表情を見せる大野将平=奈良県天理市内で2019年3月14日午後4時54分、松本晃撮影

Passion

柔道73キロ級・大野 リオとは別ルートで「金」の頂上目指す

 2020年東京五輪でメダルラッシュが期待される柔道の代表争いが本格化する。五輪代表入りに最も重要な世界選手権(8~9月、東京)の代表選考会となる全日本選抜体重別選手権が6、7日、福岡市の福岡国際センターである。7日には代表争いの激しい男子73キロ級があり、16年リオデジャネイロ五輪金メダルの大野将平(27)=旭化成=が15年以来4年ぶりの世界選手権切符を狙う。

    重量級を相手に稽古し、技の威力を磨く大野将平=奈良県天理市の天理大で2019年3月14日午前10時15分、松本晃撮影

     リオ五輪までは柔道私塾「講道学舎」(既に閉鎖)の先輩で、66キロ級で12年ロンドン、16年リオの両五輪銅メダリストの海老沼匡(29)=パーク24=の背を追いかけていた。海老沼のように切れ味鋭い技を目指し、金メダル獲得につなげた。今回は違う。「誰かのまねじゃなく、自分で自分の道を作るしかない」。登山に例えて「リオと違ったルートで登りたい」と語る。

     リオ五輪後、それまでに作り上げた「世界一の大野将平」を4年間維持することは難しいと考え、一度リセットする道を選択した。代表活動から離れて大学院で学び、自らの得意技の「大外刈り」を修士論文のテーマに置いて自分を見つめ直した。客観的に自身の試合の映像を見たことで、「こういうパターンで(技に)入っていることもあるのか」と気づくきっかけになったという。

     東京五輪に向け、17年12月のグランドスラム東京で本格始動したが、故障で3回戦を棄権した。18年4月の全日本選抜でも準決勝で階級を上げてきた海老沼に敗れて世界選手権代表を逃し、アジア大会の代表に回った。不安定な戦いが続いた。

     その間、同級生の橋本壮市(27)=パーク24=が17年8月の世界選手権で優勝して台頭した。それでも「目標は20年に一番強い大野将平でいること」「(橋本には)全く興味がない。まだ比べられる立ち位置にいるとしたら情けない」と自信は揺るがなかった。

     周囲の雑音は聞き流し、自分自身と対話して稽古(けいこ)を重ね、高みを目指し続けた。普段の練習からけがのリスクを冒して、重量級の選手と組んで技を磨いてきた。

     目指すのは100キロ超級で五輪2連覇、世界選手権8連覇の「絶対王者」テディ・リネール(29)=フランス=だ。大野はかつてない期待とプレッシャーのかかる東京五輪では10割の力を出せないことを分かっている。だから五輪連覇を果たすために圧倒的な力を身につけ、「5割(の力)で勝てる選手」を目指している。

     迎える全日本選抜。「自分の精神的な成長を試せるところ。我慢強く、気持ちの入った試合ができればいい」。静かに闘志をたぎらせている。【松本晃】

    (左)115段ある階段をダッシュする大野将平。東京五輪でも高みを目指す(右)天理大のジムで筋力トレーニング。強じんな肉体が技の破壊力を生み出している=奈良県天理市で2019年3月14日、松本晃撮影

    松本晃

    毎日新聞東京本社運動部。1981年、神奈川県生まれ。住宅メーカーの営業を経て、2009年入社。宇都宮支局、政治部を経て16年10月から現職。柔道、空手などを担当。文学部心理学科だった大学の卒論は「電車の座席位置と降りる早さの相関関係」。通勤に一時間半の今に生きているような、いないような。