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東京へ ともに歩む

毎日新聞

大学の研究室で柔道の対戦相手の分析をする石井孝法さん=千葉県浦安市明海5の了徳寺大で2018年6月27日午前11時56分、松本晃撮影

Together

柔道と空手の「二刀流」コーチ 情報分析で選手支える石井孝法さん

 柔道と空手の「二刀流」で東京五輪を目指すスタッフがいる。両競技のナショナルチームの情報分析を担当する石井孝法さん(39)。メダル量産に向け、休む間も惜しんで勝利の糸口を探っている。

     石井さんはかつては柔道男子100キロ級のトップ選手で、今の男子代表監督の井上康生氏(40)、同じく男子代表の重量級コーチ、鈴木桂治氏(38)と同世代だ。日本のトップ8人が出場する全日本選抜体重別選手権で3位に入ったほどの実力者だったが、2人の天才の陰に埋もれた。2005年に引退し、筑波大大学院でスポーツ科学やコーチング学を学び、裏方として一流を目指す道を選んだ。

     手腕を発揮したのが16年リオデジャネイロ五輪だ。男子が史上初の金メダルゼロに終わった12年ロンドン五輪から再起を期すために知恵を巡らせ、選手や審判の傾向を分析する新システムを開発した。

     その名は「Gold Judo Ippon Revolution Accordance」。頭文字を取って通称「GOJIRA(ゴジラ)」と呼ぶ。訳すと「金」「柔道」「一本」「革命」「調和」。当時の代表のスローガンだった「革命」や所属企業と代表スタッフの垣根を取り払って強化する「調和」などの思いを込めた。

     ゴジラには海外選手の技をかける方向や柔道着を持つ位置などが12項目で入力されている。世界選手権など主要大会に同行して映像を集め、分析に励んできた。リオ五輪では、男子73キロ級の大野将平(27)=旭化成=に他の国際大会に比べて審判の「指導」を出すタイミングが遅くなっていることを伝えて戦略に組み込まれた。同90キロ級では伏兵の中国選手が準決勝まで勝ち上がってきたが、映像はきっちりと準備していたため、ベイカー茉秋(24)=日本中央競馬会=が慌てることはなかった。この2人の金メダルをはじめ、男子の全7階級でのメダル(銀1、銅4)獲得につなげた。

    分析システム「GOJIRA」の画面。技をかける方向や柔道着をつかんだ場所などを分析できるようになっている=石井孝法さん提供

     その存在は東京五輪に向けて大きくなるばかりで、女子代表の増地克之監督(48)は「情報が少ない1回戦や2回戦の相手でも、すぐに情報を出してくれる。選手が自信を持って戦えている」と感謝する。

     活躍がメディアで紹介されるようになり、全日本空手道連盟の関係者から声が掛かった。空手は門外漢だったが17年末にスタッフ入りすると、持ち前の熱心さを発揮した。16年世界選手権組手女子68キロ超級優勝の植草歩(26)=JAL=らに失点の傾向など、試合を分析しアドバイスを送っている。

     睡眠時間は平均4時間で、午前2時に寝て、6時には起きる。息抜きは週3回のジム通いで、毎回最初の30分で凝り固まった体をほぐし、その後に激しい運動でストレスを発散する。「トレーニングしないと眠くなってしまって。その後はすっきりして集中して仕事ができます」。帰宅して、夜間に再びパソコンに向き合うという。

     「東京五輪までは睡眠不足でも気合で乗り切る。柔道で学んだことを空手で生かす。空手の無駄のない動きは柔道にもつながる」。一流の志で、二刀流を貫く。【松本晃】

    松本晃

    毎日新聞東京本社運動部。1981年、神奈川県生まれ。住宅メーカーの営業を経て、2009年入社。宇都宮支局、政治部を経て16年10月から現職。柔道、空手などを担当。文学部心理学科だった大学の卒論は「電車の座席位置と降りる早さの相関関係」。通勤に一時間半の今に生きているような、いないような。