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東京へ ともに歩む

毎日新聞

2020年東京五輪・パラリンピックのピクトグラムのデザインを担当したチームの中心メンバーでグラフィックデザイナーの廣村正彰さん=東京都港区で2019年4月18日午後4時46分、喜屋武真之介撮影

東京・わたし

「新しいスタンダードを」グラフィックデザイナー・廣村正彰さんがピクトグラムに込めた思い

 2020年東京五輪・パラリンピックで実施する各競技の特徴を分かりやすく伝えるスポーツピクトグラム(絵文字)。生みの親とも言えるのが、グラフィックデザイナーの廣村正彰さん(64)だ。1964年東京五輪を継承しながらも躍動感のあるデザインに仕上げた。さらに静止画だけでなく、ピクトグラムを動画で活用することも検討しているという。【聞き手・田原和宏】

    東京2020パラリンピックスポーツピクトグラム=東京2020組織委員会提供

     ――なぜデザイナーになったのですか。

     ◆高校3年の秋に、このまま推薦で大学に進んでいいのかと悩み、ものを作る仕事をしたいと思いました。武蔵野美術短大を卒業後、進路が決まらずにぶらぶらしていたところ、後に師匠となる田中一光さん(故人)のデザイン室にいた先輩からアルバイトに誘われたのがきっかけです。

     ――どんな仕事を。

     ◆でっち奉公(笑い)。運転手や皿洗い、本棚の整理などです。3年くらいはデザインの仕事をさせてもらえませんでした。溝引きで線を引くぐらいでした。

     ――師匠の田中さんは1964年の東京五輪でピクトグラムのデザインに関わりました。当時の話を聞きましたか。

     ◆折に触れて、聞きました。若い方を集め、(大会組織委員会の事務局があった)赤坂離宮の地下で作業をしたそうです。

     ――言葉の端々に誇りを感じたと。

     ◆デザイナーがものすごく関与した五輪だったと聞きました。当時、統括していたのが勝美勝さん(故人)。それまでのデザイナーは絵描きの延長のようなものでしたが、勝美さんは理論的に世の中と向き合いました。田中先生からは、デザイナーも自分の制作意図を自分の言葉で伝えられないといけないと言われました。

    2020年東京五輪 競技別公式ピクトグラム

     ――前回の東京五輪のピクトグラムについて、どう感じましたか。

     ◆最初から64年のものをリスペクトした作品を作りたいという衝動に駆られました。もう一度、整理して躍動的に作り替えたらどんなにいいだろうかと。他の案を消していくような作業でした。最終的には3案から選びました。

     ――躍動感を出すために工夫した点は。

     ◆バスケットボールは(前回の)ドリブルよりもダンクシュートにしようという意見は早い段階からありました。ただ、ダンクでも手が伸びていた方がいいのか、球を入れるところがいいのかなど、ミリ単位で削ったり、伸ばしたりと地道な作業が多かったです。ボクシングも肩の位置や胸の開きを少しずつ変えながら、この辺りだと決めました。

     ――進化したものを出せたと思いますか。

     ◆日本で再びピクトグラムを作るのならば、新しいスタンダードを提案すべきだと考えていました。機能を追求すれば、それが日本らしさに通じると信じていました。ピクトグラムの「原産国」のプライドを表現できたと思います。

     ――64年大会は、パラリンピックのピクトグラムがありませんでした。

     ◆今回は、五輪との違いをどうつけるか悩みました。サッカーの場合、五輪はダイナミックに蹴ろうとしていますが、パラリンピックはブラインドサッカーです。音がするボールを蹴るため、手前にボールがないと不自然になります。パラの柔道は最初から組み合った状態で競技を始めますが、それでは躍動感が出ません。動きをつけるためにともえ投げにしました。もちろん背負い投げの五輪とは違う投げ技を選びました。

     ――ピクトグラムは競技会場など、さまざまな場面や目的で活用されます。

     ◆これだけテクノロジー(技術)が発達した時代なので、静止画の完成された姿だけでなく、さらにテレビ画面やスマートフォンなど動画として動かせないかと考えています。

     ――実際に会場で見たい競技はありますか。

     ◆僕もやっていた陸上競技。中学時代は100メートルが11秒4と速かった。今では想像できないでしょうけど(笑い)。水泳、バスケットボール、空手など全部見てみたいですね。

    ひろむら・まさあき

     1954年生まれ、愛知県出身。田中一光デザイン室を経て、88年に廣村デザイン事務所を設立。主な仕事に、日本科学未来館、横須賀美術館などのサインデザインなど。95年ニューヨークADC賞銀賞、2008毎日デザイン賞など受賞歴多数。

    田原和宏

    毎日新聞東京本社運動部。1972年、奈良県生まれ。教職などを経て2001年入社。06年からスポーツ取材に関わり、福岡、大阪勤務を経て13年から現職。16年リオデジャネイロ五輪では体操、卓球などを担当。東京五輪取材班キャップ。スポーツクライミングなど新競技にも注目する。職業病なのか、「おかしいやろ」が口癖。