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毎日新聞

ジュニア時代から欠かせない「相棒」のラケットで、強烈なショットを放つ大坂なおみ=東京・アリーナ立川立飛で2018年9月21日、渡部直樹撮影

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大坂なおみ支える「相棒」 進化続けるラケット

 テニスのラケットは、選手のプレースタイルを明確に反映している。ジュニア時代からスポーツ用品メーカー「ヨネックス」のサポートを受けてきた世界ランキング1位の大坂なおみ(日清食品)は、ラケットの進化とともに成長し、21歳にして世界トップの座を射止めた。5月26日に開幕する全仏オープンで4大大会3連勝を目指す大坂を支える「相棒」であるラケットには最新の技術が詰まっている。【浅妻博之】

     2008年、当時ヨネックスの社長だった米山勉会長の元へ一通の手紙が届いた。差出人は米フロリダ州で暮らしていた大坂の母環(たまき)さんで、用具などの面で「サポートをしてほしい」とつづられていた。

     大坂はまだ10歳でアマチュア選手だったが、米山氏から派遣された米国在住の担当者は、素質の高さを報告。「モニター契約」による用具の提供が始まった。それから11年。「小さい頃からずっと使っているヨネックスのラケットは自分の手の一部のよう」と大坂が語ったように、ヨネックスの提供したラケットは、スケールの大きなテニスで観客を魅了する大坂の力を最大限に引き出してきた。

     15歳だった13年9月にプロへ転向した大坂は、翌年にヨネックスともプロ契約を結んだ。ヨネックスの特徴は、球に最も力を伝えやすいスイートエリアが一般的な円形のラケットに比べて7%も広い。さらにその年から新たに提供した「EZONE」というモデルも大坂の成長を後押しした。爆発的な(Explosive)力を生み出すというメッセージが込められたもので、空気抵抗が少なく「パワーのあるボールを打ちたい」という大坂側の要望とも合致した。

    大坂の使用するラケット(左)は一般的なラケットに比べ、スイートエリアが7%広い=ヨネックス提供
    ヨネックス新潟生産本部で大坂のラケットを担当しているテニス開発課の壱岐駿介さん=新潟県長岡市の同本部で2019年5月9日、後藤由耶撮影

     ラケットは約2年ごとに改良を重ねてきた。先端のフレームにはテニス界初となる航空宇宙用のカーボン素材を取り入れ、「スピード」と「強さ」を兼ね備える。改良を重ねた現在の「EZONE」は18年から使用しているが、以前よりも振り抜きやすく、スイングスピードが上がった。パワーが売りのモデルは、大坂の成長とともに進化した。

     大坂のラケットは、ヨネックスが市販向けに製造しているタイプ(305グラム)よりもやや重い。ヨネックス新潟生産本部で大坂のラケットを担当しているテニス開発課の壱岐駿介さん(28)は「パワーのある大坂選手は少し重めの方が力を伝えられる。重量と感覚の微妙なバランスを考えている」と説明する。

    ヨネックス東京工場ストリング開発課長の伊香龍太さん=埼玉県八潮市のヨネックス東京工場で2019年4月26日、後藤由耶撮影

     ラケットに張るストリング(糸)の組み合わせにもこだわりがある。糸は縦と横で違う種類を張るが、縦糸には耐久性とコントロール性に優れたポリエステル素材、横糸には動物の腸を使った天然素材のナチュラルガットを使ってパワーを伝えやすくしている。縦の方が横より長いため影響を及ぼしやすいとされ、力が強くて球が飛びすぎないようにコントロールする狙いもあった。

     昨年の全米オープンを制した時は、縦にポリエステル素材、横にナイロン素材の組み合わせで、ナチュラルガットは使っていなかった。しかし昨季に比べて体幹が強くなった今季から、横糸を変えた。ヨネックスが作るポリエステル素材の縦糸もより重い球が打てるように進化しており、パワーの生きる組み合わせだ。

     1月の全豪オープンも優勝し、4大大会2連勝を果たした大坂。同社東京工場ストリング開発課の伊香(いこう)龍太課長(32)は「回転量が増えて伸びのある球が打てている印象。相手も打ちにくそうに感じる」と話し、さらなる活躍を期待している。

    大坂なおみのプロ転向後のラケット

     年       種類    特徴

    2014~15年    EZONEAi98 空気抵抗を抑えた形状でスイングスピードが上昇

     16~17年    EZONEDR98 スイートエリアを広げ、航空宇宙用のカーボン素材をテニス界で初採用

     18年~     EZONE98   さらにスイートエリアを拡大。フレームの先端部に高弾性カーボンを搭載

    ※ラケットは市販向けに製造しているタイプから、重さやグリップの素材などを自分好みに改良している

    浅妻博之

    毎日新聞東京本社運動部。1982年、新潟市生まれ。スポーツ紙で校閲業務をして、2007年入社。山形支局、東京運動部、大阪運動部を経て、18年10月から東京運動部でテニス、バスケット、カヌーなどを担当。リオデジャネイロ五輪も現地取材して、テニス取材も全豪、全仏、ウィンブルドン、全米の4大大会を制覇した。高麗人参エキスを毎朝飲んで、健康維持を目指す。