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東京へ ともに歩む

毎日新聞

2020年東京五輪で4大会連続の公式ストリンガーを務める玉川裕康さん。4大大会では錦織圭や大坂なおみら日本選手のサポートもしてきた=東京都港区で2019年4月22日、松崎進撮影

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五輪4大会連続で公式ストリンガーに ヨネックス・玉川裕康さんのこだわり

 2020年東京五輪でテニスのラケットのストリング(糸)を張り替える職人「公式ストリンガー」に、スポーツ用品メーカー「ヨネックス」が選ばれた。五輪では08年北京大会から4大会連続となる。北京の頃から選手を支え続けてきたストリンガーの玉川裕康さん(42)は「五輪で4大会連続のストリンガーは異例なこと。東京で開催される五輪で担当できるのはとても楽しみ」と開幕を心待ちにしている。【浅妻博之】

    テニスラケットのストリングを張る職人「ストリンガー」の玉川裕康さん=東京都港区で2019年4月22日、松崎進撮影

    歴史的快挙の陰には常に

     ヨネックスのストリンギングチームは02年に発足し、国内外で約620人が所属している。鳥取市でテニスショップを経営している玉川さんはメンバーの一人で、ヨネックスから委託されてストリンガーを担当してきた。

     12年ロンドン五輪では、男子シングルスの錦織圭(29)=日清食品=が日本男子で88年ぶりに8強入り。16年リオデジャネイロ五輪で錦織は銅メダルを手にした。日本勢96年ぶりのメダル獲得の裏で、玉川さんはストリンギングチーム唯一の日本人として大会に携わった。

     4大大会でも重責を担っている。1月の全豪オープンでは、女子シングルスで日本選手初の頂点に立った大坂なおみ(21)=日清食品=のストリングの張り替えも担当。歴史的快挙の陰には、常に玉川さんがいた。

     ラケットに張る糸は種類によって反発力や耐久性、打球感などが変わる。気温や湿度などでも感覚が変わるため、選手は最も神経を使う。1試合平均で6、7本のラケットを用意するが、打つたびに糸は伸びてしまう。そのため、試合中に何度も交換する選手もいる。通常1ポンド(約0.45キロ)単位のテンション(張る強さ)で調整するが、0.1ポンド単位の微調整を求める選手もいるという。

     「気温や湿度などを考えながら0.5ポンドのわずかな差でも出さないといけない。どんな環境でも違和感が出ないようにするのが仕事」と玉川さん。選手が何を求めているのかを理解し、安定かつ繊細な作業を繰り返すことで、選手との信頼関係を築いてきた。

    2016年のリオデジャネイロ五輪で使っていた専用の機械を使い、手際よくテニスラケットのストリングを張る玉川裕康さん=東京都港区で2019年4月22日、松崎進撮影

     北京五輪で初めて担当した日本選手は、当時18歳の錦織だった。初めての国際大会だったこともあり、「緊張で張った部屋ぐらいしか覚えていない」と振り返る。

     経験を重ねて迎えたリオ五輪の記憶は今でも鮮明だ。錦織とガエル・モンフィス(フランス)との準々決勝。「錦織選手は6本のラケットを用意してコートに入り、そこから延べ9本張り替えた」。リオは湿度が高いうえに気温の寒暖差が大きく、テンションの変化も激しかった。「普通は試合中に9本も替える選手はいない。錦織選手のプレーには、それだけ勝ちたいという必死さが見えた」

     東京五輪では、大坂や錦織にメダルへの期待が高い。「担当した選手が結果を出してくれるとやったぞという気持ちになれる」と玉川さん。日本勢初の金メダルを手にしたラケットに巡り合うことを夢見ている。

    浅妻博之

    毎日新聞東京本社運動部。1982年、新潟市生まれ。スポーツ紙で校閲業務をして、2007年入社。山形支局、東京運動部、大阪運動部を経て、18年10月から東京運動部でテニス、バスケット、カヌーなどを担当。リオデジャネイロ五輪も現地取材して、テニス取材も全豪、全仏、ウィンブルドン、全米の4大大会を制覇した。高麗人参エキスを毎朝飲んで、健康維持を目指す。