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東京へ ともに歩む

毎日新聞

つり輪の試技を披露する弟の谷川翔(上)と補助する兄の航=千葉県印西市で2019年6月13日、滝川大貴撮影

Passion

エースとして「東京」目指す体操男子の谷川兄弟

体操のNHK杯で優勝した谷川翔のあん馬の演技=東京・武蔵野の森総合スポーツプラザで2019年5月19日、宮間俊樹撮影

 体操男子で兄弟そろっての世界選手権代表入りを決めた谷川航(23)=セントラルスポーツ=と翔(20)=順大。最大のライバルで一番の応援者でもある兄弟は、2020年東京五輪に向けて日本を引っ張る柱として期待されている。【円谷美晶】

     5月のNHK杯では、大会史上初の「兄弟ワンツー」で世界選手権代表の座を手にした。4月の全日本選手権を2連覇し、代表入りに王手をかけていた翔は試合前の選手紹介では会場に投げキッス。試合中もカメラに向かってほほ笑む朗らかな一面を見せていたが、表彰式では安堵(あんど)感から大粒の涙をこぼした。

     翔の隣では航がもらい泣きしていた。天真らんまんでいつも笑顔の弟が大きな重圧と戦っていたことを、誰よりも理解していたからだ。「やっと2人で代表になれた。翔はプレッシャーのある中でよく頑張ったなと感動した」と語った。

     2人はともに小学1年から体操をはじめ、地元の体操クラブ「健伸スポーツクラブ」、市船橋高、順大と同じ道を歩んできた。航が順大卒業後も練習拠点は変わらず、「一緒にいるのが自然」(航)という2人は練習中も声を掛け合い、アドバイスをし合う。骨格や体の使い方、感覚も似ているため、お互いの言葉が一番心に響き、吸収できるという。翔は6月の全日本種目別選手権で披露した跳馬の大技「ロペス」の練習中、航から「もうちょっと早く手をつきな」と助言され、コツをつかんだという。

     選手としての持ち味は異なり、航は跳馬やつり輪で高得点を稼げるパワー系。翔は美しく正確な演技で減点が少なく、総合力で勝負する。一方で、ピタリと動かない着地は共通する。健伸スポーツクラブで倉島貴司コーチ(51)から、つま先やひざを伸ばす形、着地の姿勢まで徹底的に基本をたたき込まれた成果で、技の完成度を表すEスコア(実施点)を重視する今の体操界で大きな強みとなっている。

    東京五輪に懸ける思いなどを語り合う谷川航(左)と翔=千葉県印西市で2019年6月13日、滝川大貴撮影
    体操のNHK杯で2位に入った谷川航の跳馬の演技=東京・武蔵野の森総合スポーツプラザで2019年5月19日、宮間俊樹撮影

     10月の世界選手権(ドイツ・シュツットガルト)には、日本男子の「顔」として活躍してきた内村航平(リンガーハット)や白井健三が代表から外れ、若いメンバーで挑む。水鳥寿思・男子強化本部長は「世界から『今の日本(の実力)はどうか』と問われる大会」と位置づけ、日本を引っ張る存在として「谷川兄弟」を挙げた。

     昨年の世界選手権男子個人総合のトップは87点台の争いとなり、今年4月にはロシアのニキータ・ナゴルニーが88点台を出した。2人の今季の得点は84~85点台にとどまり、世界の表彰台を狙えるエースになるためには、もう一段得点を上げなければならない。

     現在、2人は技の難度を示すDスコア(演技価値点)を上げようと取り組んでいる。6月の全日本種目別選手権で、航は得意の跳馬で世界でも成功者の少ない大技「リ・セグァン2」(前転跳び前方屈身2回宙返り2分の1ひねり)を決めて15・233点の高得点をたたき出した。翔も跳馬やあん馬、平行棒で新技に挑み、手応えをつかんでいる。

     航は「もちろん自分が一番になりたい。でも自分だけではなく、お互いに完成度や技を上げていくことで世界一になれる」。翔は「小さい頃からずっと一緒に体操をやってきた。2人で五輪に出て金メダルをとるという最高の形を目指したい」と晴れ舞台での栄光を思い描いている。

    体操の世界選手権代表入りが決まり、笑顔を見せる(左から)谷川航、谷川翔、萱和磨=東京・武蔵野の森総合スポーツプラザで2019年5月19日、喜屋武真之介撮影

    円谷美晶

    毎日新聞東京本社運動部。1985年、東京都生まれ。2009年入社。北海道報道部、千葉支局を経て、東京社会部では気象庁や東京都庁を取材。18年から東京運動部で五輪取材班となり、体操、トライアスロンなどを担当。高校までの部活動は陸上で中・長距離の選手。いつも皇居周りを走っていた。