メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

ALL FOR 2020

東京へ ともに歩む

毎日新聞

学生時代からペアを組んできた東野有紗(左)と渡辺勇大=東京・武蔵野の森総合スポーツプラザで2019年7月24日、喜屋武真之介撮影

Together

バド渡辺、東野ペア 福島での中高6年間に親の支え

 バドミントンの世界選手権(スイス・8月19~25日)で、混合ダブルス世界ランキング3位の渡辺勇大(22)、東野有紗(23)組=日本ユニシス=は日本勢で同種目初のメダル獲得を目指している。2人とも12歳で故郷を離れ、福島県の強豪で中高6年間を過ごした。躍進の背景には親の支えがあった。【小林悠太】

2010年4月、富岡一中に入学し、寮の前で記念撮影する渡辺勇大(右)と父雅和さん=雅和さん提供

 渡辺は東京都出身、1学年先輩の東野は北海道出身で、小学校卒業後、福島県で中高連携で強化を行う富岡一中、富岡高を進学先に選んだ。インドネシア人コーチもいる環境での練習が、現在の積極的に攻めるスタイルにつながっている。

 渡辺の父雅和さん(51)は、栃木・作新学院高で全国高校総体の出場経験もある競技経験者だ。小学2年からバドミントンを始めた渡辺は小学6年時の全国大会のシングルスで3位に入るなど全国トップクラスに成長すると、複数の学校から勧誘を受けた。雅和さんは高校時代の一つ後輩の大堀均さん(51)が富岡高監督だったため「預けるなら、均しかいない」と考え、渡辺も富岡行きを望んだ。

 しかし、富岡では朝から走り込みがあった。初めて味わう厳しい練習に、入学式直後から毎夜、渡辺は父に「もうダメ。無理」と泣きながら電話した。ある日、雅和さんは覚悟を決めて言った。「もう帰ってきていいよ。ただ、走って帰ってきなさい。鍵は閉めておくからな」。入学して1カ月もすると、練習に慣れ、電話が鳴ることはなくなった。

 雅和さんは「今後のために厳しく言った」と当時の心境を語り、渡辺も「僕を一番理解してくれている。あの時、しかってくれたから続けていられる。分岐点だった」と振り返る。

高校時代、大会後に会場で記念写真を撮る東野有紗(左)と母洋美さん=洋美さん提供

 一方、東野の母洋美さん(56)は、中高時代に陸上短距離で全国大会に出場したスプリンターだった。バネの強さを継いで、小学生から全国大会に出ていた東野が富岡一中から勧誘を受けると、洋美さんは「まだ12歳で(子育ては)親の責任。どこでも付いて行く」と決めた。洋美さんは夫と長男を北海道に残し、東野と福島へ引っ越した。

 東野が中学2年だった2011年3月11日、東日本大震災が起きた。一時的に北海道へ戻った。地元の友人や家族全員がそろった生活が楽しく、福島へ戻ることが怖かった。「戻りたくない。絶対に嫌」と話すと、洋美さんは「絶対に行くべきだ」と説得した。そしてまた2人で、部の新たな活動拠点となった猪苗代にアパートを借りた。

 東野が高校を卒業し、日本ユニシスに入社してからも、洋美さんは東京で一緒に過ごす。食事や生活面のサポートだけでない。東野の体を見てくれるトレーナーを探し、汗の量が多い東野の特注のシューズや靴下の手配も行ってきた。洋美さんは「娘と五輪を目指してやると覚悟を決めている。今、うまくいっている以上、生活スタイルは変えられない」と言い切る。東野も「心の支えになってくれている。母が付いてきてくれて良かった」と感謝する。

 日本では年代別の混合ダブルスの大会がなく、他の4種目に比べ、強化が遅れてきた。富岡は将来を見据え、積極的に混合ダブルスを行う珍しいチームだったため、渡辺が中学3年、東野が高校1年だった12年春のインドネシアでの大会からペアを組み始めた。18年11月以降、世界ランキング3位をキープする2人は、親への思いも胸に、日本の混合ダブルスの新たな歴史を築いていく。

わたなべ・ゆうた

 東京都出身。福島・富岡高3年時の2015年に全国高校総体で単複2冠を果たし、世界ジュニア男子ダブルス3位。16年に日本ユニシスに入社すると、同年秋から遠藤大由とペアを組み、17年の全日本総合選手権は男子ダブルスと混合ダブルスで2冠。167センチ。左利き。

ひがしの・ありさ

 北海道出身。福島・富岡高1年だった2012年から渡辺勇大と混合ダブルスを組み、14年の世界ジュニア3位。全英オープンで17年3位、18年優勝、19年2位。全日本総合選手権は2連覇中。160センチ。右利き。

小林悠太

毎日新聞東京本社運動部。1983年、埼玉県生まれ。2006年入社。甲府支局、西部運動課を経て、16年から東京本社運動部。リオデジャネイロ五輪を現地取材した。バドミントン、陸上、バレーボールなどを担当。学生時代、184センチの身長を生かそうとバレーに熱中。幼稚園児の長男、次男とバレーのパスをするのが目下の夢。