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毎日新聞

崩れた体勢からでも精度の高いショットを放つ桃田賢斗=東京・武蔵野の森総合スポーツプラザで2019年7月28日、梅村直承撮影

Passion

バド世界ランク1位の桃田 盤石の強さの秘訣に迫る

 バドミントンの世界選手権(スイス・8月19~25日)の男子シングルスで、世界ランキング1位の桃田賢斗(24)=NTT東日本=は、全種目通じて日本勢初の2連覇を目指す。昨年の世界選手権以降だけでも主な国際大会で8勝と安定した成績を残す、強さの秘訣(ひけつ)に迫った。【小林悠太】

ジャパン・オープンの準々決勝、フルゲームの末に勝利し、喜びを爆発させる桃田賢斗=東京・武蔵野の森総合スポーツプラザで2019年7月26日、喜屋武真之介撮影

 巧みなネット際の小技から角度のあるスマッシュなど鮮やかなテクニックを駆使する印象の強い桃田だが、本人や周囲の認識は異なる。桃田は「きれいに決まるショットは1割程度。相手より考えて、嫌がるコースに打ち、泥臭く拾って、プレッシャーをかけてミスを誘う競技だと思っている」と語る。幼少から「楽して勝ちたい」と強打一辺倒でなく、相手の状態をよく見てショットを打っていたことが今につながっている。

 違法賭博による出場停止から復帰した2017年以降、特にすごみを増しているのが「追い込まれた状態からのショットの精度」。そう指摘するのは桃田がA代表に入った13年から3年余り、代表コーチとして接し、今はライバルチームで指導者を務める舛田圭太・トナミ運輸コーチ(40)だ。

 例えば、奥へ追い込まれた場合、他の選手は全力で後退しながら打つため、ショットの精度が乱れ、甘い返球になる。しかし、桃田は緩いカットで相手コートのネット際ギリギリに返せるため、1球で形勢を逆転してしまう。舛田コーチは「追い込んでいるはずなのに、予想より良いショットが返ってくるため、桃田が何をしてくるのか分からず怖く感じる」と相手選手の心理を分析する。

 桃田は学生時代から部活動が休日でも、うまくなりたい一心で自主的に羽根を打ってきた。加えて、出場停止期間中に体を鍛え直し、速く動きながら打つ際も体のブレが少なくなった。相手を見た上でギリギリを狙うショットは難度が高いが、桃田は「これだけ羽根を打ってきたら、ある程度コントロールできる。ベースは練習」と断言する。

 桃田はさらなる向上も目指している。昨年はレシーブ力を生かした持久戦で、世界選手権優勝や世界ランキング1位をつかんだ。しかし、今年に入って「1位を奪われたくないと守りに入っている。粘り勝ちからもう一つ進化したい」と自分から攻撃を仕掛けるための「スピードアップ」をテーマに掲げる。

 練習では常に速く動くことを意識し、体力的にきつくなっても我慢して自らを追い込む。試合でフルゲームにもつれ込んでも、常に相手を上回るスピードで戦い抜くことが目標だ。ネット前へ果敢に出て、攻め込む場面が目立ち、「決められる回数は増えている」と手応えを話す。

 他国のライバルたちに研究され、得意なコースに打ち込もうとすると、相手が既にその方向へ体を向けていることが増えているという。それでも、「世界ランク1位にしか味わえないこと」と前向きに捉える桃田にはエネルギーが満ちあふれている。

ももた・けんと

 香川県出身。福島・富岡高3年だった2012年の世界ジュニア選手権男子シングルスで日本勢初優勝。14年に国・地域別対抗団体戦の男子トマス杯で初優勝に貢献した。世界ランキング2位まで上がった16年4月に違法賭博行為が発覚して約13カ月の出場停止処分を受け、同年8月のリオデジャネイロ五輪に出場できなかった。17年7月から国際大会に復帰すると、18年にはアジア選手権や世界選手権で初優勝し、同年9月以降、世界ランキング1位を維持している。175センチ。左利き。

小林悠太

毎日新聞東京本社運動部。1983年、埼玉県生まれ。2006年入社。甲府支局、西部運動課を経て、16年から東京本社運動部。リオデジャネイロ五輪を現地取材した。バドミントン、陸上、バレーボールなどを担当。学生時代、184センチの身長を生かそうとバレーに熱中。幼稚園児の長男、次男とバレーのパスをするのが目下の夢。