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東京へ ともに歩む

毎日新聞

2020年東京パラリンピックのメダルのデザインを手掛けた松本早紀子さん=東京都渋谷区のNHKホールで2019年8月25日午後7時22分、手塚耕一郎撮影

東京・わたし

パラリンピックメダルのデザイナー松本早紀子さんが「扇」に込めた思いとは?

 東京パラリンピックのメダルのデザインが発表されました。表裏ともに「扇」をモチーフとし、人々の心を束ねて世界に新たな風を吹き込むとのメッセージが込められています。214件のデザイン案の中から採用されたのは、博報堂プロダクツのデザイナー、松本早紀子さん(30)の作品です。作品に込めた思い、パラスポーツの印象、東京大会に期待することとは? 【聞き手・芳賀竜也】

    2020年東京パラリンピックで選手に授与するメダルのデザインに込めた思いを語るデザイナーの松本早紀子さん=東京都中央区で2019年8月26日午後3時28分、芳賀竜也撮影

     ――「扇」をモチーフとしたデザインは日本らしく、東京大会にぴったりです。ポイントを教えてください。

     ◆選手を主役にしたいとの思いがあったので、扇骨を支えている真ん中の部分を「要」といいますが、その部分がアスリート自身だと考えました。その要の部分が一番突出したデザインになっており、メダルを取った方自身が「自分が主役なんだ」ということを分かるようなデザインになっています。

     ――デザインコンペには、どのような経緯で応募しましたか。

     ◆会社の上司から「五輪・パラリンピックメダルのデザインコンペをやるみたいだぞ」との話があり、社内で話題になりました。こんな機会はめったにないので、「絶対無理だろう」という気持ちを抱きつつ、応募してみました。

     ――これまでにメダルをデザインした経験はありますか。

     ◆全くありませんでした。飲食店のキッズメニューに付いてくる「おまけ」とか、何かしらの懸賞に応募したら抽選で当たるものとか、そうした販売促進物のデザインをしていました。金属は恥ずかしながら、どういう工程を踏み、どういう加工ができるのかの知識もありませんでした。しかし、「これを表現したい」というものはいろいろあったので、専門家のアドバイスをいただきながら、今のような形になりました。

     ――初めてデザインしたメダルを見た時は、どのように感じましたか。

     ◆公表される1週間くらい前に見たのですが、すごく輝いていました。銀と銅メダルには硫黄のすすで曇りを付ける「いぶし」の加工がされているのですが、その結果、重厚感が増しました。今回のメダルは皆さんが使わなくなった携帯電話や小型家電の「都市鉱山」から生まれる貴金属が使われたこともあり、より一層、重みを感じました。「私がデザインして作りました」と言っていいのかと思うぐらいです。そうした思いもあり、より一層美しく見えたような気がします。

     ――メダルのデザイナーとして発表され、周囲の反応はいかがでしたか。

     ◆すごく喜んでくれました。「自分の親にも言っておくよ」とか「パラリンピックをすごく観戦したくなった」とか。正直に言うと、私もそこまでパラリンピックに関する知識があるわけではなかったので、このメダルをきっかけとして、パラリンピックを見たいと思う人が少しでも増えてくれたら、私がデザインした意味もあったのかなと思います。

     ――2013年9月に東京パラリンピックの開催が決まった時は、どう感じましたか。

     ◆「どうせ私、行けないじゃん」と思って……(笑い)。チケットは絶対当たらないだろうし、仕事でも関わらないだろうし。「何らかの形で関われたらいいな」とは思いつつ過ごしていましたが、まさかこんな重要なポジションを任せていただけるとは想像すらしていませんでした。

     ――ご自身のスポーツ経験は。

    東京パラリンピックのメダルデザインが発表され、あいさつするデザイナーの松本早紀子さん=東京都渋谷区のNHKホールで2019年8月25日午後5時31分、手塚耕一郎撮影

     ◆それが、からっきしだめで、運動神経がほとんどないんです。小さい頃は、両親とスキーに行ったり、母が好きな卓球をしたりしましたが、実際には地面に置いてあるサッカーボールを蹴ることができず、足が表面をかすって「空振り」してしまうほどでした。

     ――スポーツが得意な人は、どう映りますか。

     ◆すごくかっこいいなあと思っていました。なんであんなに速く走れるのだろう。なんでいとも簡単に跳び箱ができるんだろう。「こうやって跳べばいいんだよ」と言われますが、全く要領を得ません。鉄棒もできませんでした。よくアスリートに焦点を当てた番組を見るのですが、そのひたむきさに感動します。プライベートでも競技に集中したり、食事制限を徹底したり、目標に対してひたむきに進んでいく姿は、五輪もパラリンピックも関係なく、輝いてるなって思います。

     ――障害者との関わりはありますか。

     ◆同僚で色覚に障害のある人がいますが、「この色の差が分からないから、白黒のコピーを取って確認してみた方がいいよ」など、さまざまなアドバイスをいただいています。「自分の見え方や考え方が普通だと思ってはいけない」と考えさせられます。

     ――東京大会に望むことを聞かせてください。

     ◆パラリンピックを調べてみると、すごく面白いスポーツがあったり、アスリートの方々の姿がすごくかっこよかったり、尊敬できたりします。五輪もパラリンピックも分け隔てなく、スポーツとして楽しいからみんなで見に行こう、って思えるような大会になればいいですね。

    まつもと・さきこ

     1989年、千葉県浦安市生まれ。多摩美術大美術学部グラフィックデザイン科卒業。2014年に博報堂プロダクツに入社し、飲食関連企業の子供向け玩具・販促グッズデザインや、住宅メーカーの来場者向け販促グッズデザインを担当。同社プロダクトデザイン部所属デザイナー。

    芳賀竜也

    毎日新聞東京本社運動部。1976年、北海道生まれ。2002年入社。北海道報道部を振り出しに東京運動部で水泳、フィギュアスケート、パラスポーツ、東京社会部で東京都庁などを担当。五輪・パラリンピックを夏季2回、冬季4回取材。趣味は歯磨き、靴磨き、床磨き。