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東京へ ともに歩む

毎日新聞

2018年のシカゴ・マラソンから帰国し、日本記録更新を祝う横断幕に迎えられた大迫傑=成田空港で2018年10月10日午後3時32分、石井朗生撮影

Together

大迫傑、サニブラウンを支える 自称「陸上マニア」の敏腕トレーナー

大迫傑の特徴について語る帝京大スポーツ医科学センター助教の五味宏生さん=東京都八王子市で2019年5月25日、新井隆一撮影

 2020年東京五輪マラソン代表選考会「マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)」が9月15日、東京五輪とほぼ同じコースで行われる。男子で有力候補の一人、2時間5分50秒の日本記録を持つ大迫傑(28)=ナイキ=のトレーナーを務めるのが、帝京大スポーツ医科学センター助教の五味宏生さん(35)だ。男子100メートル日本記録保持者のサニブラウン・ハキーム(20)=米フロリダ大=のトレーナーでもある五味さんは、「陸上マニア」を自称するほどの熱意でアスリートを支えている。【新井隆一】

     早大入学後にトレーナーとなった五味さんにとって、後輩の大迫は初めて会った頃からインパクトのある存在だった。入学直前に早大の練習に参加した大迫は、指導者から1万2000メートルの練習を提案されると、数週間後のレースから逆算し、8000メートルにしたいと主張したという。「そんな子は見たことなかった。突き抜けていく子は、自分を主張できる」と五味さん。さらにトレーニングで一切の妥協がなかったことも印象に残っている。心肺機能の強化を図るために標高の高い場所で合宿をすると、「きついっすね。でも、この時期やらなきゃ駄目ですね」とこぼしながら、黙々とメニューをこなした。

    2019年の日本選手権男子200メートルの表彰式で笑顔を見せる優勝したサニブラウン・ハキーム(中央)、2位の小池祐貴(左)、3位の桐生祥秀=福岡市の博多の森陸上競技場で2019年6月30日、久保玲撮影

     一方、五味さんもトレーナーとして献身的にサポートしてきた。帝京大では陸上の実技やスポーツコンディショニング論などの授業を担当しつつ、国際大会前などは大迫やサニブラウンに同行。大迫の高地合宿では一軒家で寝食をともにしながら、体のケアに細心の注意を払った。「ほんの0・3%ぐらい貢献できたら」と五味さんは控えめだが、米国に拠点を移した大迫が今も信頼を置く腕利きトレーナーだ。

     五味さんの熱意の原動力は「探求心」にある。東京都出身で元々は野球少年だったが、中学から陸上の道に進んだ。入学当初は「(足は)速くも遅くもない」存在だったが、体の成長とともに頭角を現し、110メートル障害で3年時には東京都で上位の成績を収めた。

     陸上専門誌を毎月買うのが楽しみで、バイオメカニクスや最新のトレーニング理論を学ぶのが大好き。だが、都立戸山高に進学後、競技成績が落ちた。「俺は練習をこんなにやっている。速い人たちと何が違うんだ」。悔しさとともに、大きな疑問を抱くようになった。その答えを見つけるために、早大スポーツ科学部で運動生理学や解剖学を学び、専門学校に通ってはり師ときゅう師の国家資格を取得。大学院に進み、現在は別の選手の練習メニューも組んでいる。「何でこんなに速いのか知りたいだけで、ここまで突っ走ってきた」。五味さんは今も陸上少年のように目を輝かせる。

     「東京五輪では(大迫やサニブラウンらが)思い描いている結果を残してほしい」。関わった選手が世界一になる目標をサポートすることが、五味さんの生きがいである。

    新井隆一

    毎日新聞大阪本社運動部。1977年、東京都生まれ。2001年入社。大阪運動部、松山支局、姫路支局相生通信部を経て、07年秋から大阪、東京運動部で勤務。リオデジャネイロ五輪、陸上世界選手権(モスクワ、北京、ロンドン)、ラグビーワールドカップ(W杯)ニュージーランド大会などを取材。高校野球の監督経験もある。