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MGC イチおし

福士加代子が現役最強 衝撃的だった2002年釜山アジア大会

2019年の名古屋ウィメンズマラソンでMGC出場権を獲得し、笑顔を見せる福士加代子=ナゴヤドームで2019年3月10日、大西岳彦撮影

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東京本社運動部・石井朗生

 日本の女子長距離選手で、一番強いのは誰か。過去にさかのぼればさまざまな名前が挙がるだろうが、今も活躍する選手の中では、福士加代子(ワコール)だと断言する。何しろ、他の選手とは経験値が桁違いだ。

 青森・五所川原工高からワコールに入社して20年目の37歳。さまざまなレースで存在感を見せてきたが、今でも衝撃的な記憶として残るのは、2002年秋に韓国・釜山で開催されたアジア大会だ。

 まだ数回しか走ったことがなかった1万メートルで、福士は30分台が狙える速いペースで果敢に引っ張った。私たち記者は「あんなに飛ばして大丈夫なのか?」と心配半分、驚き半分で見ていたが、失速する気配がない。

 福士は終盤で孫英傑(中国)に離されて優勝は逃したものの、自己記録を約50秒も更新し、今も日本歴代2位に残る30分51秒81の快記録で銀メダルを獲得した。レース後には「アジア大会だったから奮発しました。練習のペースランニングをやっている感じだった」とあっけらかんと振り返り、さらに私たちを驚かせた。

 質の高い練習を積んで自信があったのだろうが、本番で力を発揮するのは容易ではない。私はあの時、福士という選手は、自分の感覚と可能性を信じて走りで表現できる類いまれな存在なんだと思った。その後の4度の五輪出場や、13年世界選手権マラソン銅メダルなど数々の活躍も、その表現の結果だ。

 もちろん、毎回必ずうまくいくわけではない。前半快調に飛ばしながらも失速し、最後はフラフラになり何度も転倒しながら完走した08年の初マラソン(大阪国際女子マラソン)も、福士らしい挑戦の結果だったと思う。

 福士が台頭した00年代前半は、日本女子長距離の黄金期だった。00年シドニー五輪マラソン金メダルの高橋尚子に、土佐礼子、山口衛里、渋井陽子、弘山晴美、野口みずき――。日本国内のレースでも1万メートルやマラソンは高いレベルで競われ、マラソンでは多くの選手が2時間20分突破を想定した厳しい練習に取り組んでいた。福士はマラソン初挑戦こそ08年になったが、この時期の厳しい争いで、もまれている。今の若い選手が知らない当時の経験も、福士の強さの土台にある。

 所属先のワコールでは、自身の入社より後に生まれた選手と一緒に過ごし、「若い選手が毎日の積み重ねで変わっていく姿を見て、自分も積み重ねの大切さを実感している」という。速さでは今の若い選手たちに及ばないかもしれないが、長年かけて培った力と、たゆまぬ向上心は、他の選手にない福士の武器だ。黄金期を生きた「最後の一人」として、その強さを今回のレースで存分に表現してほしい。

福士加代子
石井朗生編集委員

石井朗生

 毎日新聞東京本社運動部編集委員。1967年生まれ、東京都出身。92年入社。陸上、アマ野球などを担当し、夏冬計6大会の五輪を取材。デスク業務を経て2018年秋に現場取材に復帰した。大学で陸上の十種競技に挑み、今も大会運営や審判に携わる。最近はアキレス腱(けん)断裂や腰椎(ようつい)すべり症など、ケガの経験が歴戦のトップ選手並みに。

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