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東京へ ともに歩む

毎日新聞

インタビューに答える川野将虎=埼玉県川越市で2019年9月11日、根岸基弘撮影

Passion

五輪代表権獲得へ挑む、競歩の逸材・川野将虎 成長支えた同級生ライバル

全日本競歩能美大会男子20キロ競歩で2位でフィニッシュする川野将虎=石川県能美市で2019年3月17日、久保玲撮影

 陸上競技の競歩の逸材が、東京五輪代表に挑む。27日の全日本50キロ競歩高畠大会(山形)に出場する21歳の川野将虎(まさとら)=東洋大。男子競歩は今秋のドーハ世界選手権の50キロで鈴木雄介(31)=富士通、20キロで山西利和(23)=愛知製鋼=が金メダルを獲得した。東京五輪でも金メダルや複数メダルを狙う。50キロで日本歴代2位の記録を持つ川野だが、成長を支えたのは同学年のライバルの存在だった。

     川野が注目を集めたのは、4月の日本選手権50キロ競歩(石川)だった。20キロ世界記録保持者の鈴木に次ぐ日本歴代2位の3時間39分24秒で2位。既に世界選手権代表の座は3枠のうち2枠が決まっており、鈴木が3枠目に入ったため代表の座こそ逃したが、高い将来性を示した。

     178センチの長身で、世界ランキングは9位。大学駅伝界の名将、酒井俊幸・東洋大監督(43)の妻でもある瑞穂コーチ(42)は「50キロの選手で20キロも1時間17分台のスピードを持つのは鈴木、川野らと数少ない。川野も世界チャンピオンを目指せる」と太鼓判を押す。

     静岡・御殿場南高で競歩を始めた。2年時は全国高校総体で2位に入り、3年時はU20(20歳未満)世界選手権代表となった。だが、世代ナンバーワンの称号は、東洋大のチームメートに譲った。同じ静岡出身で、同学年の池田向希(21)が昨年5月の世界競歩チーム選手権20キロで優勝したからだ。

    全日本競歩能美大会男子20キロ競歩でコースを周回する2位の川野将虎(左)。右は優勝した山西利和、中央は3位の池田向希=石川県能美市で2019年3月17日、久保玲撮影
    室内でトレーニングに励む川野将虎=埼玉県川越市で2019年9月11日、根岸基弘撮影

     池田とは普段もよく一緒に昼飯を食べる仲良し。だが、ライバルの優勝はうれしさと同時に「本当に悔しかった」という。その晩、川野はモヤモヤした気持ちを振り払おうと、一人で何十キロも寮の周辺を歩き続けた。「いろいろと自分を見つめ直したかった」。だが、半年後には練習中に右足首靱帯(じんたい)を痛めた。全治2カ月の重傷で、「もう競技に戻れないのでは」と何度も不安に駆られた。

     だが、ライバル心が川野を奮い立たせた。けがを治し、今年3月の全日本競歩能美大会20キロでは池田に競り勝ち、山西に次ぐ2位。さらに、2回目の50キロだった翌月の日本選手権50キロも鈴木に次ぐ2位。ともに後の世界選手権金メダリストに敗れただけで、東京五輪代表の有力候補に名乗りを上げた。

     「川野は池田に負け続けても悔しさを内に秘めて笑顔だった。だから、2人でやってこられた」と瑞穂コーチ。さらに「以前はレースの作戦をチームメートに事前に話してしまう人のよさがあったが、けがをしてから勝負に徹するようになった」と精神面の成長も認める。

     川野は「東京五輪は池田が20キロ、僕は50キロで金メダルを取りたい。コーチや酒井監督に2人で金メダルを持ち帰るのが一番の恩返し。それができるように頑張ろうと、池田とはよく話す」と力を込める。

     ドーハ世界選手権20キロで池田は6位入賞を果たしたが、代表決定は次のレース以降に持ち越した。一方、川野は高畠大会で日本勢トップになれば東京五輪代表が決まる。「優勝して代表権を勝ち取りたい」。2人の夢を実現するため、第一歩を刻みにいく。【新井隆一】

    新井隆一

    毎日新聞大阪本社運動部。1977年、東京都生まれ。2001年入社。大阪運動部、松山支局、姫路支局相生通信部を経て、07年秋から大阪、東京運動部で勤務。リオデジャネイロ五輪、陸上世界選手権(モスクワ、北京、ロンドン)、ラグビーワールドカップ(W杯)ニュージーランド大会などを取材。高校野球の監督経験もある。