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東京五輪世代となるサッカー男子U22(22歳以下)日本代表は17日、五輪世代としては国内初試合をエディオンスタジアム広島でコロンビアU22代表と対戦する。A代表出場経験もあり、J1広島で正GKとして活躍する大迫敬介(20)にとって本拠地での代表戦は「特別な思いがある」。東京五輪への選考レースが激しさを増す中、スポーツトレーナーの兄絢一郎さん(22)と誓った「兄弟での日本一」を胸に試合に挑む。【丹下友紀子】
鹿児島県出水市出身の大迫は、兄とともに小学1年でサッカーを始めた。すぐさま「プロになる」と公言し、ノートに目標を書き込んだり、自宅のテレビを占領して自らのプレー映像を何度も見返したり。中学では年代別日本代表から声がかかり、高校入学時には複数のJクラブから勧誘された。
一方の絢一郎さんもサッカーを続けてはいたが、高校3年の練習中に右肘脱臼骨折や靱帯(じんたい)損傷などの大けがをし、考え方が変わった。「敬介はどんどんはい上がっていくのに、自分には何の目的もない。何をしよるんやろか……」。入院中のベッドで背けてきた現実に目を向けた。
「日本を背負ってやろう。日本一の兄弟になろう」と、病院を訪ねてきた大迫と約束を交わした絢一郎さん。プロを目指して広島の下部組織に加入した大迫に対し、退院後の絢一郎さんはアスレチックトレーナーを目指して専門学校に進むことを決めた。大迫は15歳、絢一郎さんは18歳の春にそろって鹿児島を飛び出した。
絢一郎さんは2年間勉強に明け暮れ、2017年に合格率10%という難関のアスレチックトレーナーの資格を取得。ちょうど同じ年、大迫も高校3年で広島とプロ契約を結び、幼い時からの夢を実現させた。
今年5月、大迫はプロ契約から3年目にデビューを果たしたプロ選手として、絢一郎さんは前座試合のフェリシドフットボールクラブのトレーナーとして、広島の本拠地・エディオンスタジアム広島のピッチの上で“再会”した。
来年の20年、2人は大きな転機を迎える。大迫は「東京五輪に絶対出たいと思ってきた」と力を込める。絢一郎さんは看護師資格が取得できる来春から、筑波大付属病院(茨城)でスポーツナースとして働くことが決まっている。兄弟が追い求める夢はそれぞれだが、「いつか2人で同じピッチに立ちたい」。その思いは、ともにサッカー少年だった時と変わっていない。