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「ベイビーステップ」絶対にあきらめず一戦一戦着実に 車いすテニス橘龍平さんの憧れ

テニス漫画「ベイビーステップ」を手にする車いすテニスジュニア選手の橘龍平さん=東京都品川区で2019年10月26日、宮間俊樹撮影

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 一つ一つの試合で自分を成長させ、決してあきらめない――。車いすテニスの国内ジュニアランキング1位の小学6年生、橘龍平さん(12)=千葉県浦安市=はテニスマンガ「ベイビーステップ」(勝木光作、講談社)の主人公からそんな姿勢を学んだ。大人になってパラリンピックに出ることが目標だ。【五十嵐朋子】

マンガ「ベイビーステップ」の表紙=Ⓒ 勝木光/講談社

 大学までサッカー選手だった父航平さん(42)の影響もあり、小さい頃はサッカーが大好きだった。先天的な背骨の疾患の影響で6歳から車いす生活に。競技を始めたのは小学1年生の時だ。

 「友達の紹介で地元のテニススクールに見学に行って、すぐに好きになりました。最初は競技用の車いすを持っていなかったので、相手の打った球に追いつくのが大変でした。2カ月くらいかかって初めてコート内に打ち返すことができた時はうれしかったです」

 小学5年生の時、「ベイビーステップ」と出合った。

 「お父さんに買ってもらって、1週間くらいで47巻全てを読みました。主人公のエーちゃんの、試合で絶対にあきらめないところがすごいなと思っています。エーちゃんは試合中も相手の球のコースをすべてノートに記録して、分析をしっかりしながら戦います。そこは見習いたい」

 同作は主人公の「エーちゃん(丸尾栄一郎)」が高校1年生でテニスに出合い、プロを目指す物語。部活ではなくテニススクールが舞台で、技術や戦術、トレーニング方法などが理論的に描かれているのが特徴だ。

マンガ「ベイビーステップ」の一場面。「テニスというスポーツは、全ての球(ボール)に追いつきそれをコントロールできれば、理論的には負けない!!」--コーチのこの言葉を胸に主人公エーちゃんはコントロールを磨いていく=Ⓒ勝木光/講談社

 「テニスのことが本格的に描かれていて、若手プロがツアー下部大会からだんだん上に上がっていくことを知りました。いちばん好きな場面は、エーちゃんが世界ツアー進出を決める最終巻で、そこだけで20回くらいは読んだかもしれません」

 マンガに出てきた場面が実際の試合で役に立ったこともあった。物語の序盤で、エーちゃんは別のテニスクラブに所属する荒谷寛と対戦する。経験値もパワーも上回る荒谷に対し、エーちゃんは意表を突いたアンダーサーブで対抗した。

プレーする車いすテニスジュニア選手の橘龍平さん=東京都品川区で2019年10月26日、宮間俊樹撮影

 「今年の春、神戸であった大会の日の朝、突然首が痛くなってしまいました。サーブで上を向くことができないので棄権しようかと思ったけど、30分くらい『やれることはないかな』と考えてアンダーサーブでやることにしました。対戦相手がアンダーに慣れていなかったこともあって勝てました。あきらめずに考えてみれば何か方法があるんだなとわかりました」

 「よちよち歩き」を表す「ベイビーステップ」という言葉には、「一歩一歩着実に」という意味も含まれている。主人公のエーちゃんが生真面目な性格を生かして練習メニューをきっちりとこなし、一戦一戦を勝ち抜いていったように、橘さんも今年8月、目標だったジュニアランキング1位を達成した。

 「来年までは国内の大会に出て、再来年くらいから世界の大会や大人の大会に出たいです。今、練習ではバックハンドのスピンを頑張っているのですが、片手で打つのでパワーが必要。もっとご飯を食べて体を大きくしたいです」

 マンガが少年の夢の道しるべになっている。

電子コミック本格化、「ケータイ小説」ブーム

 「ベイビーステップ」の連載が始まった2007年は「消えた年金記録問題」が取りざたされたり、食品の相次ぐ偽装が発覚したりするなど、安全・安心への信頼が揺らいだ年だった。

 一方のマンガ界では、水木しげるの「のんのんばあとオレ」が仏アングレーム国際漫画フェスティバルの最高賞「最優秀コミック賞」を受賞。日本のマンガ文化が世界で認められた。また「ビッグコミックスピリッツ」で連載されていた浦沢直樹さんの「20世紀少年」シリーズが7年間の連載を完結した。各出版社が電子コミックの販売に力を入れ始めたのもこのころだ。

 スポーツ界では男子ゴルフで石川遼選手が15歳8カ月で最年少優勝を飾り、「ハニカミ王子」のニックネームでも話題を集めた。サッカー界では日本代表を率いていたオシム監督が病気療養で途中退任した。

 世間ではネットカフェ難民が急増。「ワーキングプア」と呼ばれる人たちの存在が社会問題としてクローズアップされた。また携帯電話で手軽に書いたり読んだりできる「ケータイ小説」も女子高生を中心にブームとなった。

ベイビーステップ

 2007~17年に講談社の「週刊少年マガジン」で連載された。高校1年生でテニスを始めた主人公、丸尾栄一郎がプロを目指す物語。生真面目な性格でオールAの成績にちなんで「エーちゃん」と呼ばれる丸尾だが、運動不足解消のために始めたテニスにのめりこむ。作者の勝木光さんの連載デビュー作。綿密な取材に基づいたリアルな描写が注目され、中高生からプロのテニスプレーヤーまで広く読まれた。14年にNHKでアニメ化、16年にはアマゾン・プライム・ビデオでドラマ化もされた。

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