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「エースをねらえ!」松岡修造さんを鼓舞し続けた「メンター」 宗方コーチが与えくれた気づき

記者の質問に答える元テニス選手の松岡修造さん=東京都港区で2019年11月18日、藤井達也撮影

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松岡修造さんの愛読書「エースをねらえ!」の表紙©山本鈴美香/ホーム社漫画文庫

 元プロテニスプレーヤーでスポーツキャスターの松岡修造さん(52)にとって、「エースをねらえ!」(山本鈴美香/集英社)は「メンター」(指導者)のような存在だ。現役時代は自分を励まし鼓舞してくれたし、引退後は人生のさまざまな場面で「気づき」を与えてくれた。「この本に出会わなければ、今の自分はなかった」とまで言い切る。【川崎桂吾】

 「国内での試合なら全巻持って行きました。海外ツアーでも必ず何冊か選んでカバンに入れていました。試合中もコートチェンジの間にページを開いたりして。セリフに赤線も引いていましたね」

 10歳で本格的にテニスを始めた松岡さん。米フロリダ州にテニス留学し、1986年にプロに転向したが、傍らにはいつも「エースをねらえ!」があった。

 「僕は昔、才能がない、才能がないとずっと言われていました。でも努力なら人には負けないという自信はあった。そういうところを主人公と重ねながら読んでいました」

お蝶夫人と熱戦を繰り広げる主人公・岡ひろみ©山本鈴美香/集英社

 「エースをねらえ!」は主人公・岡ひろみがコーチの宗方仁の指導でテニスの才能を開花させ、世界を目指す物語だ。「スポ根マンガ」の代表格として知られているが、松岡さんの心に響いたのは「言葉の強さ」だった。

 「一番印象に残っているのは、宗方コーチが『庭球訓』を引用して、主人公を諭す場面です。『この一球は絶対無二の一球なり。されば身心をあげて一打すべし』の一節ですね」

 庭球訓は第1回全日本庭球選手権(1922年)覇者の福田雅之助が残した言葉だ。テニス選手の間では有名だったが、マンガで読んだ時、腹に落ちる感覚があったという。

「この一球は絶対無二の一球なり」。主人公の岡ひろみを諭すコーチの宗方仁©山本鈴美香/集英社

 「95年のウィンブルドンでは勝ち上がるごとに怖くなりました。どうしても余計なことを考えてしまう。でも『この一球』と唱えると雑念が一切消えて、目の前のことに集中できたんです」。松岡さんはこの大会で日本人男子としては62年ぶりにウィンブルドンでベスト8に進出した。

 「マンガって絵のイメージの強さもあってか、言葉がすっと入ってくるんですよね。それはコーチの言葉とも似ていて、メンタルトレーナーみたいな役割があるんだと思います。僕にとっては『エースをねらえ!』がそうでした」

 作中で主人公の岡ひろみは「日本庭球協会」のジュニア育成プロジェクトで発掘される。松岡さんも引退後はジュニアの育成に取り組み、錦織圭選手(29)らを見いだした。

「コートでたよれるのはじぶんの力だけだ。力をだすには自信がいる。自信をつけるにはとことん練習することだ」。コーチの宗方仁の言葉が主人公の岡ひろみを奮起させた©山本鈴美香/集英社
記者の質問に答える元テニス選手の松岡修造さん=東京都港区で2019年11月18日、藤井達也撮影

 「今の時代、スポ根マンガのようなシゴキは絶対に許されません。でもスポーツに根性が必要だという事実は変わっていないし、永遠に変わらないと思う。大事なのは指導方法であり、選手の可能性を信じること。そして『気づかせる』ことだと思うんですよね。それは宗方コーチからヒントをもらった気がします」

 松岡さんは現在、日本オリンピック委員会の「東京2020オリンピック日本代表選手団公式応援団長」として全国を飛び回っている。

「僕が一生懸命に東京五輪を応援しているのも、みんなに気づいてほしいからなんですよね。五輪の魅力に。始まってから盛り上がるのもいいですが、あらかじめ魅力に気づいてもらえれば、もっと入り込める。選手の活躍に感動できる。そう思うんです」

 スポ根で人生を学んだ松岡さんが今、五輪ムーブメントを引っ張っていく。

オイルショック、巨人V9達成

 「エースをねらえ!」の連載が始まった1973年は、「オイルショック」に揺れた一年だった。イスラエルとアラブ諸国による第四次中東戦争の余波を受け、日本国内ではトイレットペーパーの買い占め騒動が起きた。

 マンガ界では「週刊少年チャンピオン」(秋田書店)で天才外科医が主人公の「ブラック・ジャック」(手塚治虫)の連載が始まった。手塚をめぐっては「全盛期を過ぎた」との声が高まっていたが、医療マンガというジャンルを開拓し、同作の爆発的な人気によって復活を遂げたとされる。また、この年には「週刊少年マガジン」(講談社)で連載され、社会現象を巻き起こした「あしたのジョー」(原作・高森朝雄、作画・ちばてつや)が完結した。

 スポーツ界ではプロ野球の巨人がV9を達成。ドラフトでは栃木・作新学院の江川卓投手が大学進学を理由に指名を拒否する騒動が起きた(後に巨人に入団)。一方、64年東京五輪のマラソン男子で金メダルを獲得した「裸足のアベベ」が41歳の若さで死去した。晩年は交通事故の影響で半身不随となる悲運に見舞われていた。

 この年は「いったい日本はどうなるのだろうか」「ちょっとだけよ」「せまい日本そんなに急いでどこへいく」が流行語となった。出版界では小松左京の「日本沈没」がベストセラーとなった。

エースをねらえ!

 1973年から80年にかけて「週刊マーガレット」(集英社)で連載されたテニスマンガ。主人公の岡ひろみが「お蝶夫人」(竜崎麗香)らとの対決や交流を通じて成長し、コーチの宗方仁に導かれながら、世界で通用するプレーヤーを目指す物語。アニメ化や映画化もされ、幅広い人気を得た。

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