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大丈夫か2020年東京五輪 テレビ各局悲鳴 アナウンサーが足りない!?

完成した国立競技場。2020年東京五輪・パラリンピックのメインスタジアムとなる=2019年11月30日午後0時10分、本社ヘリから

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 開幕まで250日を切った2020年東京五輪。先月に締め切られたチケットの2次抽選販売の申し込みも好調だった。ただ、会場で競技を見られるのは一握りの人だけ。テレビ観戦が主役だろう。ところが、その五輪中継を支える実況のアナウンサーが「足りないのではないか」と心配する声が聞こえる。

〈伸身の新月面が描く放物線は、栄光への懸け橋だ〉

 記憶されている方も多いだろう。2004年アテネ五輪の体操男子団体総合。最終種目の鉄棒で冨田洋之が着地を決め、日本が28年ぶりの金メダル確実になった瞬間の実況だ。今でもスポーツ中継の名ゼリフとして語り継がれる。担当アナはNHKの刈屋富士雄氏。今は解説主幹を務める。

「実は、着地する前から金メダルは分かっていました。2位との点差を考えると、途中で(大技の)コールマンを決めた時点で、着地で尻餅をついても、日本は1位になれるとね」

 確かに映像を見返してみると、着地前から〈栄光への……〉と始まっている。名ゼリフは試合の流れや大技を決めた時の得点、失敗の際の減点を計算し尽くした〝職人芸〟だった。

 「もっと強調したい言葉もあった」と刈屋氏。実際、日本の最終得点が表示されると、実況に力を込めた。

〈体操ニッポン、日はまた昇りました〉

 刈屋氏は1996年アトランタ五輪でも実況を担当した。この時、日本の男子体操は団体総合で10位に沈んだ。金メダルを獲得したロシアのコーチから、記者会見場で声をかけられた。隣の通訳に確認すると、「ひどいことを言っていました。『体操ニッポンは沈んだ。日はまた昇らない』みたいなことを」と教えてくれた。

「それ以来、日本が金メダルを取ったら〈日はまた昇りました〉と言ってやろうと決めていました」。夏季五輪を取材・実況して4度目、体操に携わって14年で、刈屋氏にとって「初めての金メダル」となった。

 そもそも、五輪の中継については、通常のスポーツなどとは異なり、各局が共同して制作にかかわる。近年では、NHKと日本民間放送連盟でつくるジャパンコンソーシアムが、アナウンサーやスタッフを派遣して放送(中継映像)を制作する。

 実況アナウンサーについては通常、NHKと在京キー局の計6局で構成される。人数は計20人あまり。半数はNHKが占め、民放局からは2人前後が参加している。

 来年7月24日から8月9日にかけて、33競技339種目が行われる「東京五輪」について、どの局がどの競技を放送するかは今後正式決定する。担当アナウンサーが決まるのもこれからだ。いずれにせよ、NHKはもとより、「民放のスポーツアナウンサーにとって、一生に一度の晴れの舞台」(元スポーツアナ)というように、各局の精鋭アナウンサーたちにとって勝負どころとなる。

 しかし、である。放送関係者は、特に民放局の現状についてこう指摘する。

「来年の五輪は、過去に担当したスポーツアナの『再登板』でしのげるかもしれない。だが、その後の人材がいるだろうか」

 つまり、アナウンサーが育っていないというのだ。スポーツは筋書きのないドラマと言われる。スポーツアナは、台本や原稿に頼らず、目の前で起きる現象を即座に言語化する「速写描写の能力」(刈屋氏)が問われる。もちろん、担当競技に対する造詣も求められるが、何より必要なのは「経験」と言っていいだろう。

 ある民放のスポーツ担当者も語る。

「うちはスポーツ実況ができるアナウンサーが少なくなった。だから、同じ人が何度も五輪に『出ている』。スポーツアナを育てるには時間がかかるから」

民放は〝強み〟持つ競技に配置か

 各局がスポーツアナを育てられなくなっている理由は二つある。複数の関係者が口をそろえるのが、プロ野球の地上波中継の激減だ。

 2000年代初頭までテレビの地上波では、どこかで巨人戦のナイター中継をしていた。だが、視聴率の低迷もあり、07年ごろから巨人戦ナイター中継は減り、現在は皆無に等しい。スポーツアナを求める場が少なくなったということだ。

 ただ、前出の放送関係者は、こう指摘する。

「世界陸上ならTBS、世界水泳ならテレビ朝日、サッカーなら日本テレビがクラブワールドカップ(W杯)を長く中継してきた。フジテレビならバレーボールW杯、テレビ東京は卓球の世界選手権かな。各局に〝強み〟を持つ競技はある。これは『その競技なら、話せるアナウンサーはいる』ということでもある」

 他競技の実況経験を生かすことで、東京五輪も乗り切れるのではと見通す。「ただ、最近の国際大会とかを見ても、実況アナの顔ぶれに新味がない」とも。

 そして、もう一つの理由が、民放各局の財政事情だ。

 テレビ局OBは嘆く。

「テレビ局も経営が…

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