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倉重篤郎のニュース最前線

イタリア人名物記者が再告発 安倍首相はなぜ責任を取ると言わないのか

首相官邸に入る安倍晋三首相=東京都千代田区で2020年4月20日午前9時51分、竹内幹撮影

 緊急事態宣言時の安倍首相記者会見で、ただ一人、コロナ政策の責任を追及したのは、イタリア人名物記者だった。外国特派員協会の理事も務めたその人、ピオ・デミリア氏が、日本のコロナ対応の根本的な問題点を指摘し、改めて首相の責任を問う。

 前号に引き続きコロナ問題をどう報道するか。メディアの役割を考えたい。

 今ほど人々がメディアを通じて日々情報を取り、世の中どうなるか知りたい、と思っている時はないのではないか。多くの記者が、発信者が、媒体がそのニーズに応えようとこれまた日々格闘している。新聞、テレビ、SNS然(しか)りである。

 その中で、私の目を引いたものを二つ取り上げたい。一つは、山中伸弥京都大iPS細胞研究所所長の発信である。ネット上に自前のサイトを起(た)ち上げ、医療従事者の保護、検査体制の強化、ワクチン・治療薬開発への集中投資など五つの緊急提言を発表、自らの目でチェック、拾ってきた「重要で信頼できる」情報を整理したアーカイブ的機能を併せ持たせている。

 提言は、まさに今の専門家会議主導の議論に欠落した部分を突き、選び抜かれた情報は、基礎データから、世界レベルの先端的論文にまで及び、我々の視野を広げてくれる。緊急事態宣言後には「国や自治体の指示を待たず、自分を、周囲の大切な人を、そして社会を守るための行動をとりましょう!」との呼びかけを追加、安倍晋三政権の対応への不信感をあからさまにした。コロナとの闘いを「長期戦」と位置づけ、今は「全力疾走」が必要で、その後は「持久走」となる、との捉え方もわかりやすい。ノーベル賞受賞科学者としての知性と使命感が光る。

 もう一つは、BS・TBSの「報道1930」だ。この間、連日コロナ問題に絞った番組を展開、与野党関係者と医療専門家を呼び、安倍政権の一連のコロナ対応が果たして的確なのかどうか、医療現場などから上がる声をその場で与野党関係者にぶつけ、政治に対し具体的に問題解決を促すスタイルを続けている。

 特に、PCR検査件数がなぜ増えないか、については執拗(しつよう)に追及、韓国など検査先進国との比較、検査制限による現場の混乱などを繰り返し取り上げた。その結果、検査抑制を医療崩壊防止のためだと正当化していた与党出席者の発言が微妙に変わり、ついには一刻も早い検査拡大に賛同せざるを得なくさせた。検査拡大の具体策も積極的に紹介した。特に保健所迂回(うかい)方式には説得力があり、政府部内での検討を約束させた。テレビの特質を生かし成果を得たケースと言えよう。

 ここで1人のイタリア人記者に登場願う。ピオ・デミリア氏である。現在の肩書はイタリアのニュース・チャンネル「スカイTG24」極東特派員。日本滞在40年、35年はジャーナリストのキャリアを持つ。日本外国特派員協会で理事や副会長を歴任、内外の著名人を同協会に招き、自らの司会で会見を数多く仕切ってきた名物記者でもある。

 前号でも触れた緊急事態宣言時の安倍首相記者会見(4月7日)で、唯一首相の政治責任を問い質(ただ)した人物である。質問打ち切りを通告された後の駆け込み質問。さぞかし、聞き足りないこと、首相答弁に思うこともあるだろう。この際、本誌上で再質問していただくことにした。取材はデミリア氏の提案で、氏の自宅に近い都内の公園で行った。間隔をあけてベンチに横並び、マスクをしたまま前を向きながら話を聞いた。

 まずは、会見に参加した経緯から聞かせてほしい。

「日本には、封建時代としか思えない記者クラブ制度があり、外国人記者がなかなか参入できなかった歴史がある。特に遅れていたのが首相官邸、警察、宮内庁クラブだが、小泉純一郎政権からその規制が緩み、今では首相会見は外国人記者でも15人までは事前登録すれば参加できる」

「ただ、参加者はわずか。AP、ロイターといった通信社と米国の大新聞くらい。手を挙げてもどうせ当ててくれない。僕の体験では当たる確率は1%だ」

 今回は参加した。

「緊急事態宣言後の歴史的会見だし、コロナ感染がすごい状況になっているイタリアの記者として、日本国首相に直接質問、答弁を引き出したかった。ただ、あの晩ですら外国人記者は僕を含めて3人だった」

 官邸HPで再確認すると、あなたが質問したのは会見が始まってちょうど1時間ほどたった時だった。

「ずっと手を挙げていたが、全然当たらない。司会者(内閣広報官)が次の日程を理由に会見を打ち切ろうとしていた。最後は記者として非常手段に出た」

 あなたは「外国人記者にも一つ当ててください」と立ち上がった。それを見て安倍氏が司会者に当てるよう指示、質問が実現した。

「(2001年7月の)ジェノバサミットの時も小泉純一郎首相会見で、立ち上がって『ちょっと待ってください。外国人記者にも』とやったことがある。緊急時はメディア側も緊急対応が必要だ。司会者にではなく安倍首相に向かって手を挙げた。外国人記者から1問くらいいいでしょう、と。安倍氏がOK出してくれた。そこは感謝している」

 広報官の仕切りに問題?

「僕もずっと外国特派員協会で司会してきたが、安倍政権のやり方はおかしい。手を挙げた順番を記録して、その順に当てるのが紳士ルールだ。ダライ・ラマ、ゴルバチョフ、小泉純一郎、菅直人各氏を呼んだ会見を司会してきたが、ずっとこの手順でやってきた」

 あなたは、冒頭イタリア人記者であることを強調、「ずっと日本に住んでいてイタリアには帰っていません」と笑いを誘った後、ロックダウン措置を続ける欧米と日本の「天国のように」緩い行動規制を比較、これは行政責任者としての「一か八かの賭け」だとし、「失敗だったらどういう責任を取るか」と質した。

「イタリア人記者に対して、安倍首相から一言だけでもコンパッション(思いやり)の言葉が欲しかったが、それが全くなかった。わざとではないが、首相としてはいかがなものか。あの自己中心主義のトランプ米大統領ですらジョンソン英首相のコロナ感染にコンパッションを言った。首相の話はあたかも『俺たち日本人はうまくやっているが、あなたがたは衛生感覚がなってない、もっとお風呂に入れ』とでもいう、ちょっと冷たい対応だった」

 責任問題に対しては、「最悪の事態になった場合、私たちが責任を取ればいいというものではありません」という答えだった。

「ちょっと理解に苦しみました。ただ…

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