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テレビが報じない元祖「夜の街」 コロナ禍の吉原

東京・吉原の地図

「夜の街」という表現が独り歩きしている。ホストクラブなどで新型コロナウイルスのクラスターが発生していることから、まとめて〝戦犯〟扱いされているが、現実はそう単純ではない。日本最大のソープランド街、吉原はどうなのか。街を知悉(ちしつ)する書店主が活写する。

 およそ150のソープランドが軒を連ねる東京・吉原。その数、日本最多といわれるが、コロナ禍にあってメディアに取り上げられることはほとんどない。

 新型コロナウイルスの流行の影響で人通りが減ったのかと聞かれても、激減した感じはない。もともと近年は人通りが少なかった。ソープランドという性産業が凋落(ちょうらく)しつつあることに加え、周辺の最寄り駅へ車を出してダイレクトに店まで送迎しているため、いわゆる「ぞめき歩き」(遊廓(ゆうかく)を冷やかしながら歩くこと)がなくなっていたからだ。

 この数カ月、コロナ禍で「夜の街」というフレーズが繰り返し聞かれるようになった。その言葉とともに流れるテレビの映像は大抵、東京・歌舞伎町の様子である。

 私は、かつて吉原遊廓があった地(現・東京都台東区千束4丁目)で、遊廓専門書店「カストリ書房」を営んでいる。開店から4年が経(た)った。「怖い街」と思われがちだが、居心地がよく、家賃も安い。

 もとを辿(たど)れば吉原遊廓は1618(元和4)年、江戸幕府お墨付きの公許の売春街として誕生した。江戸期を通じて江戸に存在した唯一の遊廓だった。

 当初は現在の中央区日本橋人形町あたりに開設されたが、移転を命じられ、浅草エリアに越してきたのは、1657(明暦3)年のこと。一説には江戸が急発展するにつれ、都市の中心にあるのは風紀上よろしからずとの声が高まったためとも言われている。

 太平洋戦争終結後にGHQ(連合国軍総司令部)の指導の下になされた公娼(こうしょう)廃止や、1958(昭和33)年の売春防止法施行など数々の変遷を経て、いわゆるソープランド街に形を変えている。開業から数え、今年で402年目を迎える。

 そして未曽有のコロナ禍――。2月27日、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、安倍晋三首相は全国的な臨時休校を要請。3月1日には、休校の影響で仕事を休まざるを得なくなった保護者の休業補償が発表されたが、当初、厚生労働省は風俗業や接待を伴う飲食業の関係者を補償対象とせず、「公金を投じるのに相応(ふさわ)しくない業種」と説明。このことは多くの批判を招き、一転、修正して補償対象としたことは記憶に新しい。新型コロナから生命を守る目的段階においても、政府自ら差別意識を隠そうとしない姿勢には驚きを禁じ得なかった。

 4月に入り、7都府県で緊急事態宣言が出されたことを受け、東京都では同10日、緊急事態措置として休業要請する施設を発表した。密閉、密集、密接の「3密」が発生しやすい公共施設のほか、キャバレー、ナイトクラブ、バーなどの遊興施設も対象となったが、実はソープランドも含まれていたことは、あまり報じられなかった印象がある。都の発表では、「個室付浴場業に係る公衆浴場」と行政的に正しい記述がなされていたが、これがソープランドであると理解できなかった人もいるだろう。

 名指しで休業要請された後の14日、筆者は吉原のソープランド街を取材した。

 まず、吉原のソープランド営業者及び店舗所有者が加盟する団体の「浅草防犯健全協力会」に話を聞かせてほしいと申し込んだが、「誤解を招きかねない時期なので、コメントは差し控えたい」と言われた。

「自粛警察」と呼ばれる自警意識の持ち主が飲食店に嫌がらせをするに留(とど)まらず、行政自ら「自粛要請に従わない店舗の名称を公表する」などと、本来は強制力のない要請に対してペナルティーを科していた時期にあって、同会の言い分は致し方ないことではあったと思う。

 その日は見事なほどに人通りも全く見られなかった。遊客の声も聞こうと30分ほど周辺を歩いてみても、誰とも出会うことはなかった。

 ソープ店舗はほぼシャッターを…

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