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これは、アレだな

/7 「ひきこもり」について=高橋源一郎

高橋源一郎氏

 わたしの知人にも、それから、彼らの息子にも、いわゆる「ひきこもり」がいる。その数は少なくない。

 この問題に関して、現在もっとも優れた知見の持ち主が、精神科医の斎藤環さんであることに、異論をさしはさむ者はいないだろう。わたしも、斎藤さんの本、たとえば『社会的ひきこもり』や『ひきこもり文化論』などで、たくさん勉強をさせていただいた。その斎藤さんは、『中高年ひきこもり』(幻冬舎新書)で、いまや「ひきこもり状態」が深刻なのは、若者ではなく中高年だという指摘をしている。読んでいると、「8050問題」から孤独死まで、足下が揺らいでいるような気がしてくるのだ。

 とはいえ、わたしは、斎藤さんを差し置いて、なにか「ひきこもり」(斎藤さんの定義でいう、「社会的ひきこもり」)について論じてみようというのではない。ある印象に残ったシーンのことを書いてみたいのである。

 斎藤さんの『ひきこもりはなぜ「治る」のか?』を読んでいて、久住昌之原作・谷口ジロー作画で名高い『孤独のグルメ』(扶桑社)のことが出てきた。ちょうど本棚にあったので、斎藤さんが指摘する箇所を読んでみた。「第12話 東京都板橋区大山町のハンバーグ・ランチ」である。

 主人公の井之頭五郎が、とある洋食屋に入る。ランチタイムだ。「当店のオススメ」である「大山ハンバーグランチ」を注文して待っていると、イヤな事件が起こるのだ。「事件」と呼ぶほどのものではないが。店主でもあるシェフが、ひとりしかいない中国人店員のやることなすことに、ことごとく文句をいうのである。

「ホラ! こんな石鹼の泡のついたコップで水を出しちゃダメだろ!?」

「バカ それはジャンボ焼きの皿だろ いつになったら覚えるんだ!? とにもォ…」等々。

 その様子を見ていた五郎は、我慢できなくなって立ち上がると、カウンターに料金を置き、「人の食べてる前で あんなに怒鳴らなくたっていいでしょう」という。そして怪訝(けげん)な顔をする店主にこう付け加える。

「モノを食べる時はね…

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