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倉重篤郎のニュース最前線

元毎日新聞政治部長のベテラン記者が、各界の論客らと共に、政局や政策などの最前線を徹底分析します。

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菅政権は覚めない悪夢だ! 政界指南役・田原総一朗×地方メディアの旗手・五百旗頭幸男

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五百旗頭幸男監督=大阪市淀川区で、河出伸撮影
五百旗頭幸男監督=大阪市淀川区で、河出伸撮影

危機管理不能、貧相な言葉、支持率低下のスパイラル いまこそ「はりぼて政権」を撃て

 

 地方テレビ局が市議の不正を暴いて辞職に追い込む過程を描いた映画『はりぼて』が昨年来好評だ。映画はメディアと市民の「はりぼて」をも追及していく。果たして国政はどうか。政界ご意見番の田原総一朗氏と、地方ドキュメンタリーの俊英・五百旗頭幸男監督が、悪夢の菅政権とメディア・国民の関係をえぐる――。

「はりぼて」という言葉がある。辞書には「見かけは立派だが、実質の伴わないことやもの」とある。

 今の菅義偉政権がまさにそれであろう。7年8カ月に及ぶ官房長官経験で危機管理には長(た)けているし、叩(たた)き上げ政治家として意識は庶民に近い、との触れ込みが、4カ月のコロナ対応で一気に化けの皮がはがれた。最悪事態の想定という基本がわかっていないし、医療崩壊がもたらす災厄と「Go To」による経済効果の軽重を判断し切れなかった。国民に訴え鼓舞する言葉も持っていなかった。

「見かけ」をでっち上げた責任の一端はメディアにある。特に内閣記者会の罪は重い。1日2回の記者会見でかくも長きにわたり、国民への説明能力向上を共に図る機会を持ちながら答弁を拒否、あるいは「控える」ことをやすやすと許してきた。国会での野党の追及も然(しか)り。1強体制下の与党もまた腫れ物に触るようだった。その意味ではメディアも野党も与党も「はりぼて」製造責任を免れない。では、そういう体制を選んできた国民はどうなのか。

 そんな問題意識で製作された映画がある。タイトルも「はりぼて」である。別に国政を描いたものではない。定数40人のうち14人が辞職した富山市議会の政務活動費不正受給問題を地元「チューリップテレビ」が追ったドキュメンタリーだ。だが、そこには日本の民主主義の縮図が垣間見える。

 筋立てはこうだ。市議会に君臨するボス議員の政務活動費の使い方がどうもおかしい。情報公開で入手した匿名扱いの資料から、ボス関連と推測されるものを抜き出し使途の実際をチェックした。政務報告が行われた、とされる公民館があればそこまで足を運び、資料作成した、とされる印刷屋がいればその真偽を質(ただ)すなど地道な取材を重ねた。

 最初のうちは、余裕をもって記者をいなしていたボスも、矛盾点を突き付けられるうちについに屈服、不正を全面的に認めることになる。ボスの落城は地方政治の現場を一変させた。影響下にあった議員たちが我も我もと告白・辞職ドミノに走り、出直し選挙で議会の顔ぶれが一新された。

 胸のすくスクープ物語であった。ボスを追い込むメディアが弱小後発ローカル局であることも共感を誘う。

 ただ、この作品は奇麗ごとでは終わらなかった。出直し選はしてみたものの、騒ぎが収まると、新人だらけの議会はかえって活力を失い、市民の議会監視活動も熱を失っていった。要は元の木阿弥(もくあみ)、昔ながらの利益誘導市政という日常が復活しただけだった。特ダネをものにしたメディア側もまた問題を抱えていた。黒澤明の名作「生きる」の最後を彷彿(ほうふつ)させる展開だ。

 その負の部分にもカメラを向けたことで、タイトルの「はりぼて」がさらに意味を持ってきた。つまり、見掛け倒しの無内容は、市議会だけではなかった。民主主義を共に支えてるはずの市民やメディアもまたはりぼてだったのではないか。そんな問題意識が共感を呼んだのか、昨夏より全国で順次公開され2万4000人の観客を動員、この種の作品としては珍しくロングラン上映となった。

 どうだろう。国政のいまあるを暗示してはいないだろうか。五百旗頭(いおきべ)幸男監督(42)と、田原総一朗氏(86)にはりぼて化した日本政治について語り合ってもらった。五百旗頭氏はチューリップテレビのキャスターとして市議会追及報道に携わり、取材記者であった砂沢智史氏と2人で監督し、この映画を製作した。

はりぼての自民に国民は投票してきた

田原 チューリップテレビは不正を徹底取材し市議14人も辞職させたが、これで富山市議会は変わった?

五百旗頭 変わらないから僕らは映画を作った。辞職ドミノ後、議会改革も行われたが、本質的に何が変わったかというと、むしろ議員の質は悪化した。二元代表制として市長との間に緊張関係が必要なのに、市長が若い議員を嘗(な)め議会の牽制(けんせい)能力が落ちてしまった。

田* ただ、それを選択したのも選挙民だ。彼らには不正追及も大事だが、利益誘導への期待感が強い。そこがまた不正の温床となる。

五 市民からすると、不正を糺(ただ)すことが全体の利益になるはずだが、どうしても道路、公民館建設といった地域エゴが優先される。議員も地域の御用聞きになっている。「はりぼて」の一番の主人公は実は市民だ。最初は笑って見てくれるが、…

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