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文藝春秋で長くノンフィクションの編集者を務めた下山進氏が「2050年のメディア」を展望します。

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第61回 萩尾望都と竹宮惠子 二人の自伝を読む。 その前編

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『一度きりの大泉の話』萩尾望都著 河出書房新社刊
『一度きりの大泉の話』萩尾望都著 河出書房新社刊

 萩尾望都(もと)に『訪問者』という中編がある。萩尾の代表作『トーマの心臓』のスピンオフと言える作品なのだが、マンガのなかで、オスカーの父親のグスタフの目が開かなくなるほど痛くなってしまう、という表現がある。その記憶が蘇ったのは、萩尾が、このほど上梓した『一度きりの大泉の話』を読んだからだ。『訪問者』のグスタフの目の話は、萩尾の実体験をもとにしたものだと気がついた。

 自分のなかで整理がつかないような、あまりに酷いことを言われると、神経性疲労で目が開かなくなるほど痛くなる。グスタフの場合は、妻から息子のオスカーが、自分の子ではないと言われたからだった。そして萩尾の場合は、そのことがまさに『一度きりの大泉の話』なのである。

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