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看護師研修など地元の人材育成も
吉備国際大・高梁キャンパス(岡山高梁市伊賀町)に今年度、医療福祉分野を学ぶ学生らの技術向上などを支援するための「地域医療福祉センター」(スキルラボ)が開所した。より実践的な授業によって、実際の医療福祉現場で求められる処置の仕方を身につけることができる。学生への授業に限らず、地元病院の看護師に対する研修などにも活用される予定で、地域の人材育成につながると期待されている。
センターでは、大きく分けて、救急対応(ICU)▽生活支援技術▽注射・点滴−−の3分野について、人体のさまざまな病状や状況を再現できる人形や模擬装置、医療器具や介護用具を使い、現場を再現した授業・研修を実施する。同様の施設を有するのは、県内では岡山大、川崎医大に次いで3カ所目となるという。
5月14日にあった救急救命法の授業では、理学療法学科と作業療法学科の3年生61人が、人形を使って救命救急法を学んだ。指導した川上照彦教授は「先輩の中には、実習に行った先で目の前で人が亡くなるのを経験した人もいる」と本番のつもりで臨むよう呼びかけ、学生たちは交代で胸骨圧迫、人工呼吸やAED(自動体外式除細動器)の使い方などに取り組んだ。
救急対応の授業に用いられる人形は、成人男女から赤ちゃんまでで各種そろい、教える内容によって使い分ける。人形は、実際のけいれん発作などの症状を再現したり、手首で脈が取れるなど精巧な作りだ。学生が予約すれば授業時間以外でも練習ができるようにしており、和泉とみ代看護学科長は「看護の基礎学習を終えた学生が現場に出るまでの間に具体的な訓練ができる」と利点を語る。
学内での利用だけでなく、新卒で市内2病院に就職した看護師がセンターで研修を受けることが既に決まっている。センターを見学した地元の高梁医師会の仲田永造会長は「病院ではどの分野も人材不足に困っている。離職した看護師が復職する際にも役立つだろう。連携によって医療福祉の分野から地域を再生できるのでは」と期待を寄せる。
将来的には、地元の子どもたちに医療や福祉の現場に関心を寄せてもらうための取り組みなどにも活用する方針。センター長を務める中角祐治保健医療福祉学部長は「地域との結びつきを強め、大学としても差別化を図りたい」と話している。【山本麻美子】