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1979年を最後に目撃情報が途絶え、絶滅したとされていた野生のカワウソが38年ぶりに国内で発見された。琉球大学の伊沢雅子教授が8月17日、2月に長崎県・対馬で撮影したカワウソの動画を発表した。ニホンカワウソは「絶滅種」に指定されており、環境省は今回の個体がニホンカワウソかどうかの調査を進める。
「対馬で約20年間、調査したが、突然カワウソが現れてとてもびっくりした」。記者会見で伊沢教授が語った。ツシマヤマネコなどの調査で、山林に設置した自動撮影装置が2月6日午前4時20分、カワウソの姿をとらえた。環境省が7月の現地調査でふんなどを採取し、DNA型を調べた結果、カワウソのものと断定。少なくとも2匹いる可能性があり、うち1匹は韓国やロシア・サハリン由来のユーラシアカワウソとみられる。絶滅したニホンカワウソの生き残りであることも否定できないが、伊沢教授は「大陸に分布するユーラシアカワウソが約50キロ離れた朝鮮半島から海を渡ってきた可能性も高い」と指摘する。
ニホンカワウソは明治期まで水辺に広く生息していたが、毛皮を目的とした乱獲などで減少。国内では高知県での目撃例(79年)を最後に確認されず、2012年に「絶滅種」に指定された。
一方、対馬は独自の生態系を有しており、豊かな自然の中で細々と生き残っていた可能性がある。韓国由来説もある。環境省の現地調査に関わった佐々木浩・筑紫女学園大教授は「朝鮮半島から約30キロ離れた韓国の離島にもカワウソが生息し、両者のDNA型は同じ。海流に乗れば約50キロ離れた対馬にたどり着くこともあり得る」と話す。
ニホンカワウソかどうかを判断する作業も難航しそうだ。国内にあるニホンカワウソの標本のうち、保存状態が良く遺伝子解析が可能なのは30個程度で、試料は限られる。【五十嵐和大、阿部周一】