メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

大学倶楽部・金沢工業大

ミドル刺激する学び直し「リカレント教育 」

社会人大学院ではミドル世代が増えてきた=東京都港区の金沢工業大虎ノ門大学院

[PR]

 「人生100年時代」が意識されるなか、社会人になってから新しい技術や手法を学び直す「リカレント教育」が注目されている。大学院や資格スクールでは40~50代の姿も目立つ。学びに取り組むミドル世代の意識を追った。

定年後に備えて

 火曜日の午後8時。東京都港区のビルにある金沢工業大学(KIT)虎ノ門大学院の教室ではスーツ姿の人たちがノートパソコンを開き、課題に取り組んでいた。経営管理(MBA)と知的財産マネジメントの修士号を得られる1年制の社会人大学院。第一線で活躍する実務家を講師陣にそろえ、平日夜間と土日曜に開講し、出席できない場合でも後で講義映像を視聴できるなど、忙しい社会人の学びをサポートする。

 学生の業種は多彩だ。加賀谷諭さん(33)は東京都の私立高校の国語科教諭。2015年に広報責任者となり塾や経営コンサルタントとの打ち合わせが増えたことから経営学への関心を高めた。「学びは刺激が大きく、視野が開ける。将来や定年後も差別化できる人材を目指す」と話す。

 04年の開設当初は20~30代が中心だったが、近年は40~50代のミドル世代が入学者の6割近くに。長谷川敬太さん(52)は大手通信会社の知財専門家。経験を生かし、技術力を持つ町工場の経営支援をライフワークにしたいと考えている。「的確な支援に必要な経営学を学びたい」と昨春入学。学びは「社会への恩返しの準備」という位置付けだ。

 グローバル化や技術進歩で社会人に求められるスキルは日々変化しており、高齢化でライフステージも複線化している。大学院で広報を担当する三宅大行さんは「キャリアアップや将来に備えたいという入学動機が多い」という。

経験を社会貢献に

 国が24年度までに10万人の養成計画を掲げるキャリアコンサルタントの養成講座も受講者の半数は40~50代。自らの就業経験を他者への支援に役立てられるという点が注目される。

 電機大手で研究開発部門のマネジャーだった窪田稔さん(54)は15年に希望退職後、養成講座で学び、キャリアコンサルタントの国家資格を取得。東京から古里の京都府に戻り、主に大学のキャリアセンターで学生の支援に当たる。

 退職前はエンジニア職で再就職するつもりだったが、年齢や地域がネックとなり難航した。じっくり自身のキャリアを振り返ると、部下のメンタル相談に応じたり、入社希望の学生に具体的なアドバイスをしたり、キャリア支援の経験やスキルを身につけてきたことに気づき、方向転換した。

 「内定が取れました」。学生が報告に来ればともに喜び合う。研究開発では成果が見えにくかったが、今はダイレクトに反応が伝わる。「学び直しやキャリアの棚卸しが社会に役立っている」と実感する。

 広告大手の部長職、新倉昭彦さん(57)も養成講座を経て国家資格を取得した一人。入社以来、海外営業が長く世界を飛び回ってきたが、14年に赴任先から帰国すれば「今後の仕事は自分でも探してほしい」が上司の意向だった。営業の第一線から降りたことはショックだったが、社内でこれから重要になるキャリア自律支援や人材・組織開発を担おうと一念発起。大学の社会人向け講座にも通い、理論と実務を磨き、研修プログラムづくりを進める。「学びで新たなキャリアをひらく」

環境が整って

 「ミドル世代が会社の枠を超えて学び始めた」。リクルートマーケティングパートナーズ「ケイコとマナブムックシリーズ」編集長、乾喜一郎さんはこの動きを「まなミドル」と名づけ注目する。

 ミドル世代は、バブル崩壊後の低迷期にキャリアを積んできた。役職や実務者の不足から同じポストを長く続け、社内研修も縮小された結果「成長実感が薄く、もやもや感を抱えてきた」。そろそろ定年が見えた今、漠然とした将来不安を抱える一方で、長く社会と関わっていきたいという意識も強い。大学や資格スクールで新たなスキルや知識を獲得することで「もやもや感の解消」につなげたいという思いがある。

 乾さんは「ミドル世代にとって学びのネックは費用・時間・講座の3点だった」という。子の教育や親の介護などで資金の余裕がなく、残業や人手不足で日々忙しく、関心のある講座も少なかった。しかし(1)教育訓練給付金など制度の充実(2)働き方改革で残業が減る傾向(3)経験者を対象とする講座が増加--など環境は変わってきた。

 ただし、個人のモチベーションに頼るだけでは厳しい。社会人の再教育やスキルアップ支援について日本は世界から大きく遅れている。厚生労働省調査によると、民間企業の従業員1人当たりの教育訓練費は月額1112円(16年)でピークの1991年の3分の2。人材サービスのランスタッド(本社・オランダ)が昨夏、33カ国・地域の1・3万人を対象に行った調査では、企業が費用を負担する研修を受けている割合は日本が41%と最低。一方「時代に後れをとらないためスキルアップが必要」と意識する人は84%で世界平均(72%)より高い。

 政府は看板政策とする「人づくり革命」でリカレント教育推進を掲げる。働く人の意欲に応えられる実行力が求められる。【渡辺精一】

費用補助の制度も

 社会人の中長期的なキャリア形成を支援する制度として、雇用保険の「専門実践教育訓練給付」がある。国が指定した講座を受けると費用の補助がある。今年から拡充され活用しやすくなった。

 今月以降に受講が始まる講座から、給付額は受講費用の5割(年間上限40万円)、受講後に資格を取得できた場合は7割(同56万円)になり、従来(最大で6割)より手厚くなった。給付は3年間受け取れるため最大168万円になる。雇用保険の支給要件期間が3年以上(初めて支給を受ける場合は2年以上)あることなどの条件がある。対象講座は、社会人大学院や商業実務、経理、情報処理など。ハローワークやネットの「教育訓練給付制度検索システム」で確認できる。

金沢工業大

公式HP:https://www.kanazawa-it.ac.jp/
所在地:〒921-8501 石川県野々市市扇が丘7-1
電 話:076-246-4784

おすすめ記事
広告
毎日新聞のアカウント
ピックアップ
話題の記事

アクセスランキング

毎時01分更新

  1. 「#FreeAgnes」 日本からも周庭氏逮捕への抗議続々

  2. 家族で登山中に行方不明の小6男児を無事発見 新潟・上越

  3. 周庭氏を逮捕 民主活動家 国安法違反容疑で香港警察

  4. 家族で登山の小6男児が行方不明 新潟・上越で下山途中

  5. 女性に無断で堕胎させた疑いで外科医を逮捕 麻酔薬飲ませる 岡山県警

のマークについて

今週のおすすめ
毎日新聞社は、東京2020大会のオフィシャルパートナーです