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大学倶楽部・龍谷大

「環境DNA」を研究 1リットルの水で生物把握 理工学部講師・山中裕樹さん

環境DNA分析のパイオニア、龍谷大理工学部講師の山中裕樹さん

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 海や川、湖から水をくみ取り、水に含まれる「環境DNA」を調べるだけで、どんな魚がすんでいるかが分かるという新しい生物調査法が注目されている。希少種の保護エリア設定や外来種の侵入をいち早くキャッチして駆除に役立てるなど、応用にも期待が高まる。環境DNA分析のパイオニアの一人、龍谷大理工学部環境ソリューション工学科講師の山中裕樹さん(39)に先端技術について聞いた。

 ◆環境DNAとは何ですか。

 水や土、空気中に存在するDNAのことです。生物の体表からはがれたり、粘液や排せつ物に含まれたりする細胞のDNAが水などに漂っているのです。魚に限らず、哺乳類や両生類、寄生虫、植物など多くの生物のDNAが水や土にあります。

 ◆どのようにして調べるのですか。

 琵琶湖に、どんな魚がいるかを知ろうと思えば、通常、釣ったり、潜って観察したりしますね。しかし、調べる人の経験や知識などに左右され、隠れている魚を見逃すこともあるでしょう。時間も労力も掛かり、深海や汚染地区では現場にさえ入れません。ところが、環境DNA分析法なら、現場でするのは水を1リットルほどくむだけです。水にはさまざまな生物の遺伝子情報が入っています。後は研究室で水をろ過してDNAを集め、分析、データベースと比較して魚を特定するだけです。世界の魚は4万種と言われますが、私たちは日本や近海の種を多く含む8000~9000種のデータベースを利用しています。沖縄美(ちゅ)ら海水族館(沖縄県本部町)で実験したら、バケツ1杯の水から四つの水槽で飼育されている魚の93・3%にあたる168種を特定できました。アユなど特定の種だけの有無を調べる分析なら半日ほどで結果が出ます。

 ◆きっかけは何だったのですか。

 総合地球環境学研究所(京都市)の研究員だった約10年前、同僚の源利文さん(現神戸大准教授)がコイヘルペスウイルスに感染したコイを水槽に入れ、水中のウイルスDNA濃度を調べたら、予想以上にDNA濃度が高いことに気付きました。「これはどこから来た、何のDNAなのだ」と調べると、なんとコイ自身のDNAだったのです。それまで、魚のDNAが水に溶けて漂い、検出できるとは思いもよらないことでした。さらに「水にあるDNAを適切に調べたら、そこにすむ魚の種類を読み取れるはずだ」と思いついた時は興奮しました。世界初の研究だと思っていましたが、タッチの差でヨーロッパのチームが先に論文を発表しました。しかし、研究の広がりなど今では日本チームが勝っていると思います。

 ◆川の場合、上流の情報をキャッチしませんか。

 DNAは川を何キロも流れるうちに分解したり、川底に沈んだりするので遠くの魚のDNAは検出していないと考えています。他にも、本当に全てのDNAをキャッチできるのか、死んだDNAを検出しないかなど多くの指摘を受けます。新しい分野の研究なので、ブラックボックスが大きく、疑問を一つ一つ潰している段階です。それだけにやりがいがあります。

 ◆研究者を目指した理由は?

 琵琶湖の近くで育ち、魚をよく取っていました。中学生の時に犬を飼いたいと親に言ったら、反対され、代わりに熱帯魚を飼いました。繁殖させたり、水草で水中庭園を作ったりすると面白くて、魚類学者になりたいと思いました。今、地元で続ける自分の研究が大好きな琵琶湖に役立つと思うと本当に幸せです。【北出昭】


 ■人物略歴

やまなか・ひろき

 1979年、旧高月町(長浜市)生まれ。京都大大学院理学研究科博士課程修了。総合地球環境学研究所のプロジェクト研究員などを経て、2013年から現職。

龍谷大

公式HP:http://www.ryukoku.ac.jp/
所在地:〒612-8577 京都市伏見区深草塚本町67
電 話:075-645-7882

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