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大学倶楽部・龍谷大

京できょうを生きる 文学部准教授の野呂さん 「私も同じ」に心救われ

「龍谷アドバンスト・プロジェクト」(RAP)で高校生を指導する野呂靖さん(右端)
全国から高校生が集まり行われたRAPの開会式

 「この人物は誰ですか」

     パワーポイントで映し出された肖像画は、江戸幕府初代将軍の徳川家康。龍谷大学文学部准教授、野呂靖さん(39)は答えを待たずに名前を明かし、「みんな、知っているよね」と柔らかな表情を見せた。

     8月21日、龍谷大大宮キャンパス(京都市下京区)の教室での一コマだった。ただ、席を埋めるのは大学生ではなく、高校生だ。

     浄土真宗本願寺派(西本願寺)の関係学校法人で構成される「龍谷総合学園」。ここに加盟する、全国の高校から集まった生徒約30人が、野呂さんが今から何を話そうとしているのか、興味津々で聞いていた。

     高校生が主体的に課題を見つけ、自分の意見をまとめて発表する「龍谷アドバンスト・プロジェクト」(RAP)。10回目となる今年は龍谷大などを会場に21日から2泊3日の日程で開かれた。「仏教」「法学」「経営」の三つの分科会があり、高校生計約90人が参加した。

     「仏教」の責任者で講師を務める野呂さんは「見方を変えれば『世界』が変わる」をテーマにし、「社会を変える方法」の探究を課題とした。事前に各校にこう伝えた。「みなさんの身近にある課題(もやもやしていること)の解決に向けて、自分たちにできることは何か。『もやもや』の原因についての多角的・複眼的な探究を踏まえたうえで、未来に向けて提言しましょう」。課題を解決するため、今の自分に何ができるか。その熟考を目指す内容だった。

    根拠ある主張、大事に

     しかし、何ができるか考える前に、自らの固定的な見方を離れ、さまざまな角度からものごとを捉えることが大切だ。野呂さんが語り始めた徳川家康の話は、新しい見方につながるエピソードだった。

     最晩年の家康は仏教各宗派の僧侶を集め、仏教の教義(思想)に関する論義(ディベート)を数多く行っていた。従来の説では、この論義は僧侶の管理や寺院統制のためと理解されていた。ところが、最近の研究によると、いかに罪悪を消滅させ、成仏に至るかという、極めて宗教的な課題の解決を、家康が求めていたことが明らかになりつつある。

     「悪人は成仏できるか?」「悪い行いが良い結果を生むことはあるか?」。家康はこういうテーマで論義をさせ、その内容をじっと聴いていたとされる。戦いにつぐ戦いで多くの命を奪った家康にすれば、人ごとではなかったのだろう。

     野呂さんはこのような最近の研究を紹介することで、多角的なものの見方の重要性を高校生に訴えた。そして最後にこう結んだ。

     「研究課題の作成のポイントは、他人ではなく、自分の疑問、考えを意識し、自分の意見を主張すること。また、その主張は感想や思いつきではなく、証拠をできるだけ示す根拠のある主張でなければいけない」

     人に左右されない生き方とは、自分で自分の生きる道を見つけていくことだ。そのためには、しっかりと自分の考えを持たなければならない。自信を持って生きていくうえで、それはとても大切と、野呂さんは思う。

     「生きる価値」とは何なのか。「生きる意味」とは何なのか。その問いの答えを探すためにも、自分の主張は極めて重要と考える。

     野呂さんは主張に「根拠」も求める。その理由は「主張を仲間と共有するため」と言う。

     根拠を示さず話すだけでは、「あなたはそう考えているんですね」で終わってしまう。根拠を示せば、それが糸口になってみんなで検討ができる。議論することでお互いの理解が深まる。話し合って分かり合えれば、孤独感から解き放たれ、自分が救われることにもつながっていく。野呂さんには、その救われた経験がある。だから実感を持って語ることができる。

    孤独への答え求め

     龍谷大で日本仏教の思想を研究する野呂さん。鎌倉時代など中世が専門だ。学生に仏教学を教え、ゼミでの指導も行っている。

     寺ではなく一般家庭で育った。それにも関わらず、進路に選んだのは龍谷大文学部仏教学科だった。

     子供の頃から人と関わるのが苦手で、友だちができなかった。高校時代は「昼休みが苦痛で、校庭の周りを一人で歩くこともあった。本当に孤独だった」。「死んでしまいたい」と思うことも何度もあった。

     自分が抱える悩みを解決するヒントはないか。宗教への関心はそういう気持ちから生まれた。

     大学時代に読んだ、親鸞の「歎異抄(たんにしょう)」。弟子の悩みに「私も同じだった」と答えた親鸞の言葉に触れ、「私も同じだった」と言ってくれる人がいるという関係性にとても感動し、思わず泣いた。今の活動の原点だ。

     孤独だった少年が若き研究者となり、「いのち」の問題にいろんな角度から取り組んでいる。【玉木達也】

    龍谷大

    公式HP:http://www.ryukoku.ac.jp/
    所在地:〒612-8577 京都市伏見区深草塚本町67
    電 話:075-645-7882

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