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映画「ヒトラーと戦った22日間」 ホロコースト映画注目の中、封切り

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試写会で握手するガルージン駐日ロシア大使(左)と、イスラエル大使館のサビオンバイダーゴルン公使 拡大
試写会で握手するガルージン駐日ロシア大使(左)と、イスラエル大使館のサビオンバイダーゴルン公使

「未来の視点」持ち、歴史学んで 法政大教授・金原瑞人さんに聞く

 第二次世界大戦下のナチスが、現ポーランド東部に建設したソビブル絶滅収容所で起きた脱出劇を描いた映画「ヒトラーと戦った22日間」が日本で封切りとなった。ソ連軍将校らによる1943年の蜂起が題材だが、今なぜホロコースト(ユダヤ人大虐殺)映画が注目されているのか。訳書「ナチスに挑戦した少年たち」が話題の法政大学教授、金原瑞人さん(63)に聞いた。

 戦後73年が経過し、戦争体験者も少なくなるなか「映画や小説を通し、忘れてはならない歴史を学ぶことがこれまで以上に重要になる」と金原さんは語る。

 ソビブルはアウシュビッツ・ビルケナウと並ぶ絶滅収容所だが、日本ではほとんど知られていない。金原さんは「劇中は残虐行為の数々が映し出され、凄惨(せいさん)さに目を奪われがちだが、この行為を行ったドイツと日本は、当時同盟を結び、一緒に戦っていた。この事実を直視し、人ごとにしないことに、日本で上映する意味がある」と指摘する。

 当時と現代日本の状況を比べ、金原さんは「情報の量も種類も圧倒的に増えたが、国民の多くは情報操作の危機感に乏しく、政治にも無関心だ。近年は『政権批判はかっこ悪い』との風潮もあり、むしろ国民の意識は当時に近づいている」と懸念する。

 金原さんは、ドイツ神学者マルティン・ニーメラーの言葉に由来する詩「彼らが最初共産主義者を攻撃したとき」の一節をひき、疑問を投げかけた。「過去の歴史が示すように、世の中が誤った方向に進み始めると、流れを止めることが難しい。ならば、今の日本はどの段階にあるのか。国民は果たして声を上げることができるのだろうか」と。

 映画や小説には、絶望や困難に立ち向かう人たちの姿が描かれている。金原さんは「自分の行動が10年、20年後どう評価されるかという『未来の視点』を持ち、行動することが何より大切だ。歴史を学び、深く知る努力をすることが、こうした視点を養うことにつながる」と語った。

東京女子大で試写会 駐日露大使ら出席

 映画「ヒトラーと戦った22日間」(コンスタンチン・ハベンスキー監督)の日本公開を記念し、都内で関連イベントが開かれた。

 9月4日は東京女子大で試写会があり、ガルージン駐日露大使、イスラエル大使館のサビオンバイダーゴルン公使も出席した。

 ガルージン氏は、移民問題などで右傾化が進んでいる欧州の現況に触れ「再びナチスとイデオロギーを称賛する醜い現象が起きている。ナチスに勝利し確立された平和がいかに大きな代価を払って獲得されたか、記憶を伝えていかなければならない」と語った。サビオンバイダーゴルン氏も「絶滅収容所の一つで起きた勇気の物語だ。二度とホロコーストを起こさせてはならない」と訴えた。

 試写後のトークイベントで、東京女子大の芝健介名誉教授は「歴史が攻撃される時代に入っている。事実を重んじない傾向が強くなっているなかで、ナチスのこうした側面を知ることには意味がある」などと訴えた。

 映画は、ヒューマントラストシネマ有楽町(東京都千代田区)などで公開中。【鈴木美穂】

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