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大学倶楽部・東洋大

1人暮らしの親族、急な入院時に家族は 藤林教授に聞く 「キーパーソン」を決める

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 1人暮らしの母(76)が転倒事故で大ケガをし、入院した。初日の「保険証はどこにある?」から始まり、入院中も「パジャマが足りない!」「手術は誰が立ち会おうか?」と、家族は大混乱。急な入院に慌てないために、どう対応すればいいだろうか。入退院時の準備などを説いた「大切な家族の入院・介護でやるべきことのすべて」(新星出版社)を監修した東洋大社会福祉学科教授の藤林慶子さん(59)に聞いた。

「かかりつけ医」を確認/日程把握に「計画書」/相談支援専門職を活用

 昨秋、遠方の母から携帯に電話があった。「居間で転んじゃった。足が痛い」と叫んでいる。どの程度のケガか電話では分からないため、「病院に行ってみて。足は無理に動かさないようにね」と告げ、電話を切った。

 幸い実家近くには弟が住んでいる。「病院に連れていける?」と連絡すると、すぐに「了解!」との返答があった。近所のかかりつけ医を経て、急性期病院で診てもらうと「大腿(だいたい)骨骨折」と診断された。母はそのまま入院となった。

 身の回りのことは何でも一人でこなしていた母。入院にあたり、慌てふためいたのは本人より、むしろ家族の方だった。「診察券や保険証はどこ?」とタンスをひっくり返して捜し、病院では「既往症」を聞かれても、満足に答えられなかった。

 突然の入院に慌てないために、どう備えれば良いのだろうか。

 「親が還暦を過ぎたら、入院や介護に対する『心の準備』をしておきましょう。65、70、75歳……。親の誕生日を祝う際、少なくとも5年ごとの節目には一緒にいろいろと考えてみるのはいかがでしょうか」

 藤林さんはこう話す。「入院する際に、最も必要なもの」を尋ねると「『保険証』『お薬手帳』は必須でしょう。普段から、親の『かかりつけ医』を聞いておくことも大切です」。入院後には必要となるパジャマやタオルは病院でレンタルできるため、「後日そろえても遅くありません」。

 藤林さんは、病院から真っ先に情報を受け、親戚らに伝える仲介役を果たす「キーパーソン」を決めるようアドバイスする。

 「入院にあたり、誰が最も責任を持つのかを決めておく方が慌てずにすみます」。病院と患者側の情報共有もスムーズ、というわけだ。「患者(親)に5人の子がいても、病院が全員に連絡するのは無理がある。キーパーソンを中心に情報を回すことができれば、効率よい情報の伝達が可能となり、病院も家族も安心です」

 母の入院時、キーパーソンになった私は、親本人に代わってたくさんの「同意書」にサインを求められた。1日複数回、病院から連絡を受けることもあった。手術日や急性期病院からリハビリ病院への転院など重要な案件もあり、仕事をしながら「母に関する連絡も逃さないようにしなくては」と思うと気が気でなかった。

 こんな日々の中、役に立ったのが、病院から手渡された「入院診療計画書」だった。病名や入院期間のめどが記され、退院までのスケジュール(行程表)が添付されている。手元の計画書には「転院は術後12週目を目標」と書かれ、家族の励みになった。資料は携帯電話のカメラで写し、弟とも共有した。母には、これらの資料などをかみ砕くなどし、私から情報を伝えた。藤林さんも「計画書は、退院までの日程感がわかり、家族にとっても参考になりますよ」。

 入院中は、食事やトイレの世話は原則、看護師が担ってくれる。だが、パジャマや下着、タオルなどの洗濯、飲み物や雑貨などの買い置き、コップや歯磨きセットの買いそろえなどは基本的に家族の役割だ。レンタル品を借り続けるのも一手だが、お金はかかる。出費を避けたい場合は自前で用意するのが良いかもしれない。

 入院中は、病院に置かれた相談支援の専門職である「医療ソーシャルワーカー」に相談することが有益と藤林さんは言う。「医療費はどれぐらいかかる?」「退院後の生活はどうなる?」など、家族の不安にも丁寧に答えてくれる。

 母は今回のケガで足の可動域が狭まり、「独居が続けられるか」懸念された。そこで、医療ソーシャルワーカーに相談したところ、急性期病院からリハビリ病院への「転院」、退院後の暮らしを支える要介護認定制度などについて、家族が「知りたい情報」を教えてくれて、精神的にも助けられた。

 藤林さんは「さまざまな機会を捉え、高齢者の医療や介護に関する制度を勉強することも大切です。高額療養費制度では支払った医療費の一部が戻りますので、保険者への請求は忘れずに。差額ベッド代(特別療養環境室料)は全額自費となるため、必要に応じ『民間医療保険』に入っておくのも良いでしょう」。

 急な入院で慌てないためには、「日ごろの備えも必要」と藤林さんは言う。その一つが、独居の高齢者らに自治体が配る「救急医療情報キット」の活用だ。

 母の入院後、遅ればせながらキットを入手した。A4サイズの用紙と封筒が入っており、それぞれに「救急医療情報便」と書かれている。同意者(親)の氏名や生年月日、血液型や本人の電話番号、かかりつけ医などを記入したら封筒に入れ、所定のシールで冷蔵庫の扉に張る。自宅から救急搬送される時は、救急隊がこれを開け、本人の意思をくみ取ってくれる。

 「自治体ごとに内容などは異なりますが、一分一秒を争う緊急時は病状の把握が重要になる」と藤林さん。さらに「不安や困り事があれば、親が住んでいる市町村の『地域包括支援センター』に相談してみてください。ここでは、介護保険制度をはじめ、医療や生活支援など、高齢者に関するさまざまな情報を得ることができます」と助言する。【鈴木美穂】

東洋大

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