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神戸大は昨年6月の大阪北部地震を受け、大阪湾の海底の活断層調査に乗り出す。大規模な活断層が見つかれば、都市部の大きな被害を想定した備えが必要となる。同大学海洋底探査センター長の巽好幸教授(マグマ学)は「未知の断層を明らかにしたい」と話す。
大阪北部地震は大阪市や大阪府茨木市、高槻市などで震度6弱を観測し、都市部の生活に大きく影響した。どの断層が動いて大きな揺れになったか断定できず、未知の断層の可能性も指摘されている。
巽教授は海底のマグマだまりなど地下構造の調査が専門。海底の活断層調査に着手する理由を「近畿地方は『直下型地震の巣』だが、陸地以上に海底は調査が手薄」と説明する。
調査は来年4~9月、「反射法地震探査」と呼ばれる方法で行う。神戸大の練習船「深江丸」からエアガンで圧縮された空気を海底に向けて撃ち込み、人工的に地震波を発生させる。地層の境界での跳ね返り方が地層の性質によって異なることを利用し、地下の構造を調べる。最大で地下数百メートル、数万年前の地層まで明らかにでき、過去の地震でずれた断層が分かるという。
既知の活断層には、神戸市沿岸から神戸空港の真下を通り、大阪湾南部に至る約39キロの「大阪湾断層帯」がある。政府の地震調査研究推進本部によると、マグニチュード7・5程度の地震が想定される。京都大防災研究所のシミュレーションでは地震の5分後、神戸市や兵庫県明石市などに最大約4・5メートルの津波が到達するとされる。
湾内の断層調査は重要だが、阪神大震災(1995年1月)の直後に行われて以来手つかずだ。来年の調査について、巽教授は「調査機器の精度が格段に上がり、知られていない断層が多く見つかるはずだ」と強調する。昨年9月の予備調査で既に、新しい断層が見つかっている。
重要な活断層が見つかっても、地震の発生確率が見かけ上低く、防災意識が高まらない可能性がある。実際、大阪湾断層帯による地震発生確率は今後30年で0・004%以下だ。
巽教授らは今年3月、調査や調査結果に関心を持ってもらおうと、インターネットで研究資金を募る「クラウドファンディング」を始めた。6月12日までエアガンの空気圧縮機やボンベのレンタル代など200万円を目標に集める。巽教授は「活断層が見つかっていない、あるいは発生確率が低いとしても、安全だとは言えない。科学者の責務として事実を調べ、発信していきたい」と話している。【松本光樹】