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大学倶楽部・明治大

金メダリスト・孫基禎さん評伝出版 寺島善一名誉教授

マラソン。孫基禎選手が1着のゴールテープを切る。記録は2時間29分19秒=独・ベルリンで1936年8月9日撮影

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寺島善一・明治大名誉教授

 日本植民地時代の朝鮮に生まれ育ち「日本代表」として1936年ベルリン五輪に出場、マラソンで金メダルを獲得した故孫基禎(ソン・キジョン)さんの評伝を寺島善一・明治大名誉教授(73)が4月に出版した。「祖国なきランナー」として苦難の道を歩みながら、スポーツを通じた平和を願った孫さんの生き様を伝えたい。2020年東京五輪を前に、そして日韓関係が冷え込む今だからこそ――。【大島祥平】

 タイトルは「評伝 孫基禎」(社会評論社)。寺島教授は生前の孫さんと親交があり、本人に聞いた言葉なども多く紹介されている。

 孫さんは1912年、朝鮮半島北部の新義州(現在の北朝鮮)に生まれた。貧しさや差別の中で楽しみを見いだしたのは、走ること。23歳で当時の世界新記録(2時間26分42秒)を出し、翌年のベルリン五輪でアジア勢初となるマラソンの金メダルを獲得した。

 その表彰式で流れる君が代を聞き、孫さんは改めて自分たちの境遇を思い知る。「果たして私が日本の国民なのか」。表彰台でうつむき、月桂樹(げっけいじゅ)で胸の日の丸を隠した。翌年、来日して明治大に入学したものの、政治的圧力で陸上を続けることは禁じられた。その後、半島に戻ってソウルに住んだが、南北分断で故郷を失い、朝鮮戦争では北朝鮮に狙われるなど、朝鮮の歴史を象徴するような人生を歩んだ。寺島教授は83年に日本で開催された「スポーツと平和を考える会」の会合で、孫さんと知り合った。その後も交流を続けたが、孫さんは植民地時代について「終わったこと。前向きに考えよう」と、恨みは一切、口にしなかったという。私財を投じて後進を育成し、2002年に90歳で亡くなるまでスポーツを通じた日韓交流などに力を尽くした。

 日本の戦後復興の象徴とされた64年東京五輪から半世紀が過ぎ、2度目の東京五輪が来年に迫る。寺島教授は「日本は差別がなく、尊厳を認め合う社会になったのか。多文化共生社会として世界から人々を迎えられるのか。考えるべきことは多い」と問う。

 昨年の平昌冬季五輪スピードスケート女子500メートルでは、優勝した小平奈緒選手が2位になった韓国の李相花(イ・サンファ)選手をレース後に抱きしめ、たたえ合った。「孫さんが一番願っていた光景で、生きていたら『スポーツにこれを求めていたんだ』とおっしゃると思う。2人の姿こそがオリンピズム(五輪精神)」と語る寺島教授。孫さんが訴えた「スポーツと平和、友好」という理念を胸に、呼びかける。「今の日韓関係も、互いに尊厳を認め合えれば、もっと歩み寄れるはず」

 問い合わせは社会評論社(03・3814・3861)。

明治大

公式HP:http://www.meiji.ac.jp/
所在地:〒101-8301  東京都千代田区神田駿河台1-1
電 話:03-3296-4545

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