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専修大学人文科学研究所は6月1日、軍隊を持たず非武装中立を貫いてきた中米コスタリカの歩みをテーマにした第1回公開講演会を同大生田キャンパス(川崎市多摩区)で開いた。川崎市民ら約70人が参加し、軍事力と平和の意味を考えた。
コスタリカは1948年、大統領選の不正をきっかけに内戦が勃発。野党側が勝利し、前大統領派が多数を占めていた軍隊を廃止した。軍事予算をゼロにし、教育と医療の無償化、環境保全に力を入れる福祉国家を実現させた。その結果、「軍隊はいらない。平和が文化」という意識が市民に定着し、2016年の「地球幸福度指数」で1位となっている。
今回の公開講演会は、専修大の中村友保名誉教授がドキュメンタリー映画「コスタリカの奇跡~積極的平和国家のつくり方」(米国・コスタリカ合作、2016年)の共同監督のマイケル・ドレイリング(Michael Dreiling)氏と親交があることから実現した。ドレイリング氏は社会学者で、現在、米オレゴン大学で教授を務めている。
講演会で参加者は最初にこの映画の短縮版(57分)を鑑賞した。紛争の絶えない中米で軍隊を廃止した国の平和維持は平たんではなかった。米国から基地を造ることを迫られ、隣国の侵攻を受けたこともある。そのたびに、国連や欧州と交渉し、国際的な連帯や国際法を有効に利用することで危機を乗り越え、中立を保ってきた。映画は歴史的映像を織り込みながら元大統領や学者、市民らへのインタビューを通してコスタリカの70年を紹介している。
上映後、ドレイリング氏は「映画で証明されているように、コスタリカは軍がなくても人々は平和で安定した暮らしを送っている。国が小さいからそれが可能だとは決して言えない」と話した。世界最大の軍事力をもつ米国は、地球幸福度指数で100位以下であることも指摘した。日本については「戦後大きな経済成長を遂げ、教育水準の高さや持続可能な社会環境の構築、先端技術などさまざまな面で世界から注目されている。技術の進歩だけでなく、国際的な場所で平和のリーダーとして活動してきた。その姿勢を大切にしてほしい」と語った。会場からは多くの質問が出て、ドレイリング氏は丁寧に答えていた。