メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

大学倶楽部・愛知大

東海キャンパる 社会映す仲良し親子 名古屋市立大・安藤究教授に聞く

安藤究教授(奥)に取材する学生記者

[PR]

産業構造の変化が親子関係の変化をもたらした?

価値観に共通点多く

 無口で厳格な父、家事の全てをこなす母――。そんな家族はもう古い? みんなで家事を分担したり、親をあだ名で呼んだりと、近ごろ、自分たちの周りでは友達関係のような仲良し親子が増えているような気がする。でも、これって気のせいだろうか。そんな素朴な疑問を専門家にぶつけてみると、さまざまな背景が見えてきた。

     東海キャンパる編集部は、家族の世代間関係について研究している名古屋市立大の安藤究(きわむ)教授(家族社会学)を訪ね、話を聞いた。

    背景に「共有性」

     家族の親密度の変化を測るキーワードとして出てきたのが「共有性」だ。私たちの祖父母世代を「G1」(第1世代。Gはgeneration)、親世代を「G2」、そして20歳前後の我々、子ども世代を「G3」とすると、安藤教授は「『G2』―『G3』の関係の方が、『G1』―『G2』の関係より共有できることや価値観が多く、それが親子の親密度に影響しているのでは」と指摘した。どういうことだろう。

     日本にはかつて「家制度」があった。戸主が家の統率権を持つ、すなわち父親が絶対的な権威を持つというものだ。戦後、家制度は法的に廃止されたが、文化としてのインフォーマルな家制度はしばらく存続した。G1はまさにそのような環境で成長し、価値観を形成した世代だ。

     一方で、G2はそうした文化が薄まった1970年代半ば以降、近代的家族の中で大人になった世代で、私たちG3も同じ。つまり、今の学生と親との関係は共通のステージでの親子関係にあるため、子育ての理想や何を大切にするかという価値観などに共通点が多いという。

     「一緒に漫画を読んだりゲームをしたりということにも抵抗がなくなっている」と安藤教授。2001年の調査で、「親子の付き合いは友人のような関係でよい」と考える親がほぼ半数に上ったというデータもあるそうだ。

     親子の関係性を探るには、家族の中だけに目を向けるのではなく、歴史的背景や家族を取り巻く社会的環境に目を付けることが重要なのだそうだ。

    過保護のワケ

     親密性が増せば「過保護」や「過干渉」の問題も出てくる。親はなぜ子に干渉するのかも聞いてみた。

     安藤教授によると、まず着目すべきは産業構造の変化だ。1次産業から2次産業へ労働人口が移動する中で、子どもは農作業を手伝うような「労働力」から「愛情の対象」になった。いかに多くの愛情と時間とお金を1人の子どもに掛けるか――。工業化の進展で、子を持つ意味が変化したことが要因にあるようだ。少ない子に、愛情の証しとして集中的に資源を投入するという流れは、出生率の低下にもつながっているという。

     さらに戦後、専業主婦化が進むと、子どもへの関わりはさらに顕著になる。子育てを中心的に担ったのが母親だったが、その母親にとっては「子の評価」=「自分の評価」になった。「より突き放せない状況が生まれた可能性がある」と安藤教授は指摘した。

    父子の微妙な関係

     母とは仲が良い一方で、父との関係に苦労している学生もいる。なぜだろう。

     安藤教授が一つの要因として挙げたのは、父親の育児時間だ。母親に比べて圧倒的に短い。週末などにうまく関係を確立できればいいが、できなければ「成長しても接触はないまま」という事態にもなる。10代の子どもとの関係悪化を親が認識しても、母親は子どもとの関係の回復を認識する傾向があるのに対し、父親はそうではないことを示すデータもあるという。

    「親以外」の重要性

     現代は核家族が当たり前となり、家庭内では親子の親密性は高まっているようだ。だが、安藤教授は子どもの発達にとっては親以外の存在の重要性を指摘する。「今は、親戚や地域の人など『斜め上の関係』に注目する子育て支援NPOも増えている。安全な形で、親以外の大人との関係性を作れるような環境が大事になっている」と話した。(まとめ=南山大・近藤素弘、取材=名古屋市立大・足立結、名古屋大・飯嶋千遥、坂口和香奈、宮島麻実、名古屋商科大・伊藤姫莉果、愛知大・永原尚大)


    「親が干渉しすぎ」6割 学生アンケ

     東海キャンパる編集部は6月、「家族にまつわる学生アンケート」を実施。男女64人から回答を得た。

     親が干渉しすぎだと感じたことが「ある」と答えたのは39人で、全体の6割を占めた。

     親子のコミュニケーションについても尋ねた。実家暮らしの学生(50人)では、親との1日の平均会話は「30分程度」が15人、「1時間程度」が13人、「2時間程度」が9人と多かった。一方、1人暮らしや寮など実家以外で生活する学生(14人)では、親との電話の頻度は「必要な時のみ」が8人と過半数。無料通信アプリ「LINE(ライン)」などSNSでのやりとりは、いずれも「必要な時のみ」が最も多かった。

     また、家族との関係を表すエピソードを募ったところ、「親がよくサプライズ企画をしてくれる」(2年女子)、「毎年、夏と冬に旅行へ行く」(2年男子)など親密な関係性をうかがわせるものが多かった。その一方で、父親については実家暮らしなのに「ほぼ会話しない」(4年女子)や「敬語で話す」(2年男子)など、微妙な関係を物語るものも少なくなかった。(まとめ=愛知大・成田篤紀)

    愛知大

    公式HP:http://www.aichi-u.ac.jp/
    所在地:〒461-8641 名古屋市東区筒井2-10-31
    電 話:052-937-6762

    おすすめ記事
    広告
    毎日新聞のアカウント
    ピックアップ
    話題の記事

    アクセスランキング

    毎時01分更新

    1. 「パパ活」「ママ活」待った! 埼玉県警、ツイッターで警告配信

    2. チュート徳井さん設立の会社、1億2000万円申告漏れ 東京国税局が指摘

    3. 再審無罪が確実の元看護助手、安堵の表情「両親が安心する」 滋賀・病院患者死亡

    4. 島根大、4学部で新選抜 へるん入試、21年度「一般、特定型」 好奇心や課題意識を重視 /島根

    5. 即位の礼 来日中のドゥテルテ大統領、饗宴の儀欠席 バイク事故で痛み、前倒し帰国へ

    のマークについて

    今週のおすすめ
    毎日新聞社は、東京2020大会のオフィシャルパートナーです