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新型コロナウイルスの影響で各大学はこの1年間、構内立ち入り禁止によるオンライン授業やサークル活動禁止などの措置をとった。学生たちはそんな状況下でこの1年、どのような学生生活を送ってきたのだろうか。全国の毎日新聞「キャンパる」で学生記者として活躍する6人に、オンラインでその思いを語ってもらった。(3月22日毎日新聞朝刊@大学で記事掲載。デジタル版は詳報です)【まとめ・内山勢】
キャンパる
1989年2月、毎日新聞東京本社管内の夕刊でスタート。学生記者が取材し記事化する。その後全国に広がった。今回参加した4キャンパるはその中でも活発に活動している。
参加者(大学・学年は3月現在)=所属キャンパる
司会:畠山恵利佳(津田塾大4年)=とうき
ょう
山岡立樹(大阪芸術大4年)=おおさか
増田裕太(静岡大3年)=しずおか
若杉悠里(奈良県立大2年)=おおさか
名越彩璃(宇都宮大2年)=とちぎ
鈴木彩恵子(日本女子大1年)=とうきょう
キャンパる活動も支障
畠山 全国のキャンパるの活動状況はどうですか?
山岡 他の地域のキャンパると交流できるとあって今回の座談会を楽しみにしていました。おおさかの会議は毎週火曜日の午後7時に、毎日新聞大阪本社に集まってやっていました。会議では「これを取材したいです」というのを提案して、編集長(毎日新聞社員)が判断して採用するという形です。ただ、会議は昨年の3月ごろからできなくなりました。みんなともう1年も会っていません。みんな、どうしているのかなあ。
畠山 いまはオンラインで会議を行っているのですか?
山岡 いえ、メールで連絡を取り合っています。
増田 「しずおかキャンパる」(毎月掲載)の紙面は、「地域メディア論」の授業と、授業の履修を終えた人でつくるサークル「しずおかキャンパる編集部」で並行して取材を行って紙面を作っています。授業は対面でしたが、サークルは現在(コロナで)取材活動が止まっています。コロナの前は毎月最終水曜日に定例の編集会議を行っていました。サークルメンバーが集まって、企画案や取材状況について「こんなの取材してみたい」「いま取材はこんな感じ」とか話し合っていました。
畠山 とちぎキャンパるはいかがでしょうか。
名越 とちぎキャンパるも、しずおかと同じで、授業とサークル「とちぎキャンパる編集室」で並行して作っています。今年度は前期に「地域メディア演習」の授業がないので、前期はサークルとして、記事を毎月書いていました。その時はオンライン会議システム「Zoom(ズーム)」で毎週土曜日の朝に、取材の進捗(しんちょく)状況を確認したり、次の企画についての話し合いだったりを行っていました。私は市役所にオンラインでなく直接取材に行きました。
畠山 オンラインで会議をやっているという点では、とうきょうキャンパるも似ています。
鈴木 とうきょうキャンパるは、毎週火曜日の午後6時からオンライン(Zoom)で会議をやっています。ゲラチェックのときだけ集まれる人は東京本社に集まります。でも基本的にはオンラインで、取材も大体がオンラインという感じです。
オンラインで理解進まず
畠山 授業はどういう状況でしたか?
増田 授業は先生ごとに全然違うというか、映像を準備してレジュメも例年使っているのに比べて説明をすごく細かく作って気を使ってくれている先生がいる一方で、ワードでちょっとだけ文章を書いて「ここの部分、教科書読んでください」で、はい終わりみたいな先生もいたので(全員うなずく)、学校側として授業の基準とかを作ってくれた方が学生にとってはこの授業をちゃんと取ろうとか思うんじゃないかと思います。
畠山 そうですね。実技を売りにしていた授業ほど、オンラインに切り替わったときの対応がすごく期待はずれということはありますよね。確認ですが、基本的にみなさん授業はオンラインで、ゼミなど少人数の授業だけハイブリッド(対面とオンラインの併用)ですか。
若杉 そんな感じです。
山岡 そんな感じでしたね。
名越 宇都宮大学は、後期から必修の授業だけ対面授業の許可が出て、私は週4で学校に行っていました。
畠山 鈴木さんは1年間ほとんど大学に行けなかったのでは?
鈴木 同じ学科の友達がひとりもいなかったので課題のこととかを相談する人がいませんでした。(大学が)そういうのを見かねて、同じ学科の人で集まるオリエンテーションを後期に対面で開いてくれたり、オンラインでもサポートしたりしてくれました。対面のときは予定が合わなくて行けなかったんですが、いろいろ開催してくれたのはよかったなあと思います。
後期に1回だけ同じ学科の学生を6人集めてプレゼンをしてくださいという授業があって、その時に初めて学科の人としっかり話をしました。その時にまとめて分からないことは聞いてみたんですけれど、その時しか集まっていないので、それ以降、全然話とか連絡をとっていません。ですので、分からないときは先生にメールしたり、学校生活で分からなかったら学生課に電話をかけたりするようになりました。
語学授業みたいな少人数の授業だったら、工夫して対面でやってもよかったんじゃないかと思っています。
山岡 大人数で対面授業をやったときは密過ぎました。
畠山 大人数でやったときがあったんですか?
山岡 ありました。昨年11月ごろに対面授業になったんです。「ソーシャルディスタンスを取ってください」という張り紙があって、席も1席ずつ空けるようになっていたのですが、みんな久しぶりだから、ほとんどが密になって話していました。
畠山 理系の実験系だとか、芸術の実技はオンラインでは、授業レベルが保たれないのではないですか?
山岡 保たれなかったですね。
名越 私は理系なので本来なら測量実習が前期にあったのですが全部中止になりました。それで夏休みに対面での集中講義になったんですが、本来なら測量実習と一緒に測量学という座学があって、その測量学は中止にならずにオンラインでやったので、実習と座学を並行してどの場面でどの方法を使って計算するかを勉強していくはずだったんです。それが離されてしまって。実際に機械とかの使い方も何か分からないまま座学の計算だけどんどん難しくなっていって、そういう部分はすごく理解しづらかったです。
畠山 さっき、鈴木さんも授業の中で課題が分からないところを聞くにしても同じ学科の友達がいないという話をしていましたが、課題について友達に聞きたいというときにどういうふうにしていましたか?
名越 1年生のころだと、「空きコマ」の時間に友達と話したりとか、テスト前だとみんなと集まって勉強してたりとか、聞き合っていました。それができなくなってしまったのでLINEで聞くのですが、途中の計算式はなく、答えを聞くのに近いものになってしまいました。
畠山 議論ではなくて結論になってしまう。
名越 そうです。計算で分からないところがあってLINEで聞いたら、計算の説明を文字ですることは難しいこともあり、自分はこうやったよという答えを送り合うことが多くなってしまったので、そういう面で不便だったなあと思います。
畠山 若杉さんも名越さんと同じ2年生ですが、1年生のときと友達付き合いに変化はありましたか?
若杉 1年のときにできた友達が2年のときも一緒におる、という感じですね。2年生になってゼミが始まり、同じ興味を持った学生が集まったので友達になれると思ったのですが、やっぱりZoomでしか関わりがないので仲良くなれなくて。結局1年のときにできた友達か、サークルの同期としか関わりがないのは残念だなあと思っています。
オンラインサークル活動も申請
畠山 部活・サークル活動は? 増田さんは陸上部でやり投げをやっていますよね。
増田 部活ごとに対応が違うという感じです。昨年5月末まではキャンパス内完全に立ち入り禁止だったので、活動が何もできなかったんですけれど、僕らは屋外の部活なので6月ぐらいから普通に週5で再開していました。ただ、屋内系の部、バレーボールとかバスケットボールとかは、体育館だと密閉してしまうので、再開したのは確か夏休みごろからだと思います。
若杉 ここ1年ぐらい活動するときに大学に申請書を出さなくてはいけないんですが、誰が参加するとか、検温して何度だったとか、体育館借りるんやったら感染しないように「こうこう気をつけます」という書類をいっぱい書かなくちゃいけなくて。最初の時なんかは大学から「これでは対策が少ないです」と書類を返却されたりとか、対面の活動だけでなく、オンラインでの活動も全部書いてださなくちゃいけなかったり。なんか、なぞ。(一同「へえー」)
鈴木 以前まで入っていた部活では、緊急事態宣言中は自主練習という形でした。(5月に)宣言が解除されてからは、毎週対面で練習を実施していました。ただ、大学側からは部活動としての時間を2時間以内に収めてくださいと言われていて、時間内に活動を収められない場合は自主参加という感じでした。
畠山 新歓とかもなかなかできない中で、どういうふうに部活やサークルを見つけましたか?
鈴木 大学で部活とかサークルの新歓をZoomでやるので、興味がある人は参加してくださいという感じでした。私もそれに参加して、部活の様子がどんな感じかなって一旦見てから、参加を決めました。あとツイッターとかインスタグラムとかを部活ごとにやっていて、DM(ダイレクトメール)をくださいと案内があり、割と入りやすかったのです。
畠山 自分からアクションして参加しないと部活やサークル参加も難しいかもしれないですね。
鈴木 そうですね。コロナでなかったら見学があると思うんですが、やはり見学があった方がどういう活動をしているのかより分かると思います。
畠山 名越さんはサークル活動はしていましたか?
名越 私はアカペラサークルに所属しています。通常は、新歓ライブを毎年3日間ぐらいかけてやって、そこで1年生に入ってもらうという形でしたが、昨年4月は新歓ライブが中止になってしまいました。新歓はオンラインで、普段だと新入生30人ぐらいが希望して入部するんですが、今年度は7人ぐらいでやっぱり少なめな感じです。
畠山 歌うと飛沫(ひまつ)が飛ぶので、対面練習は厳しいかもしれないですね。
名越 大学が歌だけでなくスポーツも全サークルを活動禁止にしました。各サークルが活動を再開してほしいと学長に要望書を出したことで、申請が通ったサークルから週1回で2時間以内いう制約はありますが、できるとところまできました。アカペラサークルも去年の末ぐらいにやっと申請が通ったんですけれど、年明けにもう1回栃木県が緊急事態宣言の対象になってしまい、またサークル活動が全面禁止になってしまいました。この1年間まったく集まれず、入部した1年生もサークルとして活動ができていない状況です。
大学の学びを考える機会に
畠山 オンライン授業やサークル活動の禁止で不満はありませんか?
山岡 学費ですね。大学は、授業料は返さないと言っています。5万円の給付金が学生に支給されましたが、それだけ。オリエンテーションがなくなったので、郵送で全部送られてきた。オンラインで授業の履修登録をしてくださいね、と。慣れていなかったから、とても大変やったですね。同じ仲間で急にやめるとかあって。なんとか助けたかったんですけれど。
畠山 コロナ禍で、大学の学びそのものについて考える機会もあったと思いますが。
山岡 自分と向き合える機会になりました。大学や就活、友達、生活……。コロナ禍で学んだというか、感じられたなあと思います。
増田 ちょうど僕は就職活動があって、夏ぐらいから自己分析とかいろいろやり始めました。そもそも自分って何で陸上競技やっているのか、そもそもなんでこの大学選んだのかなど自分の過去を深掘りする機会になりました。本当に自分自身と向き合う時間がすごく増えたなあと感じます。
畠山 大学は授業そのものとか、サークル活動というより、コミュニティーとしての場と言いますか、それがなくなってしまったというのがやっぱり一番大きい。
山岡 大きいですね。(一同うなずく)
名越 私はこの1年間あんまりプラスのイメージがなくて、やっぱり、ずっとオンラインになってしまって、すごい量の授業と課題にずっと追われてて、私出身が鹿児島なので、帰省もずっとできなくて、1人暮らしなので、精神的にもすごいホームシックになってしまいました。大変な1年だったなという感じだったので、プラスなことは、あんまり思いつかない。
若杉 仕方ないというあきらめの気持ちが多いから、良かったなあとか悪かったなあとかよりは現状を受け入れようという気持ちを持ったなあというのはあります。オンラインだからこそできること、いろんなことが変わって、サークルの新歓もオンラインでした。例えば、オープンキャンパスの実行委員とかもやっていたんですけれど、動画作って、YouTubeに上げたりとか。新しいことに挑戦しようとかできる機会になりました。
外とのつながり希薄
畠山 1年生の鈴木さんはさきほども話していましたが、大学生活の始まりから、オンラインということで一番大変だったのかなと思います。正直どうですか?
鈴木 なんか、あんまりよく分からない1年で、自分が思い描いていた、友達と遊んでとか大学のキャンパスに行ってとかまったくなくて、結局コロナだったからバイト以外はほとんど家にいました。4月はどういうふうに履修届を出していいのかとか、オンライン授業も課題がすごく多くて、全然うまくやりきれないところもあって、家にいても焦っている感じでした。友達もいないし、ああどうしようかって思っていたんですが、10月ぐらいから、バイトを始めて外とのつながりを持てたことで、何となくずっと閉じこもっているばかりじゃなくて、外に出て人とのつながりをもった方がいいなあとか、そこらへんからポジティブになれました。ただ、大学生活としては、この1年は想像とは違うものでした。
畠山 自粛生活では何をしていましたか?
鈴木 主にSNSやYouTube、テレビを見たりしていました。そういうのを見過ぎて、夜更かししてしまうこともたまにありました。
山岡 僕はアマゾンプライムを見ていました。あと、ラジオアプリのradiko(ラジコ)をよく聴いていました。ぼく大阪なんですけれど、SBS(静岡放送)や東京のTBSラジオとかニッポン放送とかいろんな地域のラジオを聴くようになりました。そのことをキャンパるのコラムで書いたら、TBSラジオさんからお礼状が届きました。うれしかったです。
増田 すごーい。
若杉 私、実家から大学に通っているんですが、大学に行っていたときは、大学終わったあと結構友達と食べに行ったりして家に帰るのが遅くなったりしていたのですが、コロナになって家でZoom授業終わったら、晩ご飯をなんか作ろうかなあという気になって。いままで家の人が作ってくれていたんですが、いまは私が作ろうかなあという気になったのがいいかなと思います。
畠山 家事に参加したり、家族の時間が増えたり、結構家庭内の変化はあるのかなあと思います。
鈴木 外に出られないなあというので、すごく出たい出たいと思うときがあって、でも家族と一緒にご飯食べたりしているので、(コロナを)うつしたりしたらいやだなあと思ってやっぱり外出るのやめようって思って。何回も何回もその葛藤ばかり。
畠山 家族と一緒に住んでいるとね。名越さんは1人暮らしでつらかったんじゃないですか。自粛生活で外にも出られないですし。
名越 そうですね。(昨年4月の)緊急事態宣言が出る直前に帰省してて、帰るタイミングで、1人暮らしのところ(宇都宮)に戻るか、オンライン授業になるのは決まっていたので、実家に残るかということですごく迷ったんですけれど、アルバイトのシフトがもう組まれちゃっていて、帰るしかない状況になってしまって。そこからはずっと1人暮らしだったんですけれど、やっぱり1年生の頃だと、結構毎日のようにサークルとかがあったりして、そのままご飯行こうという流れがあったんですけれど、やっぱり(コロナ禍になって)1人暮らしなのでご飯もずっと1人だったり、友達にも会えなかったりという面ではすごく寂しいというか孤独感はありました。でも、結構家にいる時間が増えた分、家族とテレビ電話したりという機会は増えたかなと思います。
オンライン就活の難しさ
畠山 増田さん、少し就活について触れましたがもう少し詳しくお願いします。
増田 3年の夏ぐらいから就活を意識し出して、夏休みはインターンシップにぽろぽろ参加していたという感じですね。インターンに参加した企業は、地元の企業や生命保険会社に参加しました。僕らはコロナで「22卒」(2022年卒業)の採用が厳しくなると言われていたので、インターンの倍率が跳ね上がったらしいんです。実際インターンに参加した人に聞いても、企業から今年の倍率はとんでもないから、ES(エントリーシート)が通っただけでもすごいよ、と言われた方もいたりとか、そういった感じでしたね。インターンシップ全部に言えるんですけれど、正直すごくやりにくくて。
畠山 オンラインということ?
増田 全部オンラインでしたね。事業立案とか、どこに出店するとか、グループワークをやるんですけれど、正直すごくやりにくくて、アイデア出しとかもすごく出しにくいですし、多分対面でやると、グループとは言いつつも個々で話したりとか、そういうのができるとは思うんです。けれど、オンラインだとそれがどうしてもできないので、アイデアをまとめたりとか、そういう作業には本当に苦労したので、僕はインターンシップに対しては楽しかったなという印象はなにも持っていません。
畠山 オンラインのインターンって、パワーポイントで説明があったあとに企業側からテーマが投げられて、振り分けられて話して、グループごとに結論出して発表するのをオンライン上でやるって感じですか?
増田 おっしゃる通りです。そんな感じですね。
畠山 そんなので会社の雰囲気とか分かるんですか?
増田 企業によっては、僕らの場合だと、「今年はインターンからしか取りません」という企業もあって、なので参加せざるを得ないなというところもあったんです。ただ、会社のオフィスの雰囲気が知れるわけではないですし、かといって社員さんの雰囲気も話し方でなんとなくは分かるんですけれど、ちゃんとつかめるわけではないので、重要だといわれている割には、個人的には重要さをあまり感じられなかったなというのが正直なところですね。
若杉 今年がそうやったから私たちの世代もそう(オンラインでのインターンシップに)なるのかなあと思います。
畠山 何を見て判断した方がいいのか。判断材料が圧倒的に少なくなって、情報だけが増えてその中でどう選べばいいのかみたいな。
名越 そうです。それを聞きたい。
増田 企業にもよりますが、やっぱり企業側も危惧していると思うんですよ。学生側に自分たちの雰囲気を伝えられていないというのをすごく心配していて、なので頻繁に社員座談会を開いてくれる企業も結構あって、それは選考とは関係なかったりするので、積極的に参加するようにしています。
畠山 まだまだコロナ感染は収束していません。お互い頑張っていきましょう。