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大人になるにつれて声の調子に敏感になる日本人 田中教授らが発見:表情に注目しやすいオランダ人との文化差は児童期に出現

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 東京女子大学心理・コミュニケーション学科心理学専攻の田中章浩教授、同大大学院生の河原美彩子氏、アムステルダム大学(オランダ)のDisa Sauter(ディサ・ソーター)准教授の研究チームは、日本人とオランダ人の子どもと大人を対象とした国際比較実験によって、相手の感情を読みとる際に、オランダ人は年齢にかかわらず一貫して表情に敏感である一方、日本人は大人になるにつれて徐々に声の調子に敏感になっていくことを発見した。目から入った情報と耳から入った情報を結びつける仕組みが子どもの育つ文化的背景に応じて変化していくことを示す研究結果である。この成果は英科学雑誌「Cognition and Emotion」に掲載された。

 

■研究の背景

 会話の相手の感情を正しく読みとることは、コミュニケーションを円滑にするために必要だ。対面の会話では、表情だけでなく、声の調子も感情を知る手がかりとなる。田中教授らの研究グループは、以前の研究によって、顔から読みとった感情と、声から読みとった感情の結びつけ方は文化によって異なり、東アジア人は欧米人よりも声の調子に敏感であることを明らかにしていた。しかしながら、このような大人にみられる五感を結び付ける仕組みの文化差は、子どもの頃から既に存在するのか、それとも大人になる間に出てくるのかは検討されていなかった。

■研究手法

 顔と声から読みとった感情の情報を、どのように結びつけて相手の感情を判断するのかを調べる実験を、日本人とオランダ人の子どもと大人の計296人を対象に実施した。実験では、登場人物が顔と声によって怒りまたは喜びの感情を表しているビデオ(図1)を視聴して、その人物が「怒っている」のか「喜んでいる」のかを判断してもらった。実験で使用したビデオには、顔と声の表す感情が一致しているビデオと不一致のビデオがあり、感情が不一致のビデオへの回答から、実験参加者が相手の表情と声の調子のどちらに注目していたかを検討した。たとえば、喜びを表す表情と怒りを表す声が組み合わされたビデオに対して「怒っている」と回答した場合、その参加者は相手の声に注目したということになる。本研究では参加者が相手の顔と声のどちらに注目したのか、その割合を文化間・年齢群間で比較した。

【図1】

 実験参加者が視聴したビデオの例。登場人物が、中立的な意味のセリフに怒りと喜びの感情を付加して発話しているビデオを使用した。顔と声の感情が一致するビデオ(たとえば,喜び顔+喜び声)に加え、感情が不一致のビデオ(たとえば、怒り顔+喜び声)も作成した。実験では、登場人物の表す感情が喜びと怒りのどちらであるかを参加者に判断してもらった。

■研究の成果:「日本人は大人になるにつれて声の調子に注目するように変化」

 実験の結果、11~12歳と大人では、過去の研究と同様に、日本人はオランダ人よりも声の感情に注目しやすいという文化差が示された。しかしながら、5~6歳の時点では日本人もオランダ人も顔により注目する傾向にあり、文化差はみられなかった。つまり、顔と声から読みとった感情の情報の結びつけ方の文化差は、幼少期から存在するものではなく、発達に伴って出現することが明らかとなった。

【図2】

 顔と声の感情が不一致のビデオに対して、登場人物の声が表す感情を参加者が回答した割合を比較すると、5~6歳の時点では日本人とオランダ人の間に差がなく顔の感情を選ぶ割合が高かった。しかし11~12歳と大人ではオランダ人よりも日本人の方が声に注目する割合が高くなっていた。

 日本人が大人になるにつれてなぜ声の調子に注目するように変化するのかはまだはっきりとは解明されていないが、「顔で笑って心で泣いて」というように日本人の大人が本心を顔に出さない傾向にあるとすると、偽りの表情に隠された本心を声から読みとろうとする経験を大人になる間に積むことで、徐々に声に注目するようになっていく可能性が考えられる。本研究の結果を日常生活に当てはめると、たとえば日本人のお母さんが小さい子どもに注意をするときに、他人の目を気にして笑顔のまま厳しい言い方で叱っても伝わらないのは、子どもは表情から感情を判断しやすいためだと説明できる。今回の研究成果は、視覚や聴覚などの異種感覚情報を脳内で結び付ける仕組みに文化差が生じるメカニズムの解明や、異文化間・世代間における感情コミュニケーションの行き違いの解消につながることが期待される。

■研究プロジェクトについて

 本研究は日本学術振興会科学研究費補助金基盤研究B(15H02714)、新学術領域研究「トランスカルチャー状況下における顔身体学の構築」(17H06345),NWO grant(275-70-033)、European Research Council (ERC) grant(714977)の補助を受けて行われた。

■論文情報

【題目】Culture shapes emotion perception from faces and voices: Changes over development

【DOI】10.1080/02699931.2021.1922361

【URL】https://doi.org/10.1080/02699931.2021.1922361

【掲載雑誌】Cognition and Emotion

【著者名(所属)】河原美彩子(東京女子大学・日本学術振興会),Disa A. Sauter(アムステルダム大学),田中章浩(東京女子大学)

【本件に関する問い合わせ】

東京女子大学 広報課

電話 03・5382・6476 ファクス 03・3395・1212 メール pr@office.twcu.ac.jp

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