ユニバ・トーク

3月1日 迷惑な障害者

 20年前、僕が休職留学していたカナダ・バンクーバーでの体験だ。公共バスを降りた際にアジア系の老女が運転手に乗り換え方法を聞いていたのだが、英語がよく分からないらしく何度も聞き返していた。結局、運転手が一緒に降りて、乗り換えるべきバスの止まる停留所まで彼女を連れていき、戻ってくると何もなかったかのようにバスを走らせた。その間、5分余り。僕ら乗客は車内で待たされることになったわけだが、誰一人とがめることもなく、静かに待っていた。ちなみに僕のような視覚障害者は運転手のすぐ後ろの席に座らされて、目的地に着くと運転手が教えてくれることになっている。ところがこの運転手、告げられていた目的地を忘れることがしばしばだ。すると周りの乗客が覚えていて「グランビルアイランドに着きましたよ!」などと口々に教えてくれる。

     先月20日に開かれた日本財団パラサポセンターのワークショップでカナダ在住20年のアイススレッジスピードレース金メダリスト、マセソン美季さんが「日本に帰ってくると自分が障害者だったことを思い出す」と話した言葉が心に残った。

     エレベーターが設置されていない駅ホームで、彼女の車いすを昇降させるためにエスカレーターを一時的に止めた駅員がホーム上の人々に向かって行ったアナウンス「ご迷惑をおかけして申し訳ありません。ご協力お願いいたします」。

     駅員としてはエレベーターを設置していない不備をわびたのかもしれない。しかし「車いすが来なければエスカレーターは止まらないわけで、迷惑なのは車いす。私たち障害者ということになりませんか?」とマセソンさんは訴える。

     冒頭に紹介したバンクーバーの運転手は、バスに戻ったときに「ご迷惑をおかけしました」とは言わなかった。たとえバスが遅れても困っている人を助けることが優先されなければならないという暗黙の了解が乗客との間にあるからだ。さて2020年の東京、僕ら日本人は同じような態度を示せるだろうか?【岩下恭士】