ユニバ・トーク

11月14日 断られたグルメマップ

 僕が点字毎日編集部で働いていた20年以上前の話。就職して初めての大阪での1人暮らしにも慣れて、食べ歩きを楽しめるようになった頃だ。ネットもスマホもない時代。お店情報を視覚障害者が探す方法は、口コミくらいしか手がなかった。そこで思いついたのが、点字新聞に特集記事「読者が選ぶ全国グルメマップ」を載せること。読者である視覚障害者自身に、地元で利用しているおすすめ飲食店を紹介してもらうという企画だ。点字メニューがあるとか、盲導犬入店可とか、店内がバリアフリーとか、障害者への配慮があるかなどは問わない。本人が気に入っていればオーケーという基準だ。

     紹介されたお店には、編集部から電話をかけて取材する。記事になれば店も喜ぶだろうが、紹介した読者からも感謝されるに違いない。もっと視覚障害のあるお客さんも大事にしようと思われるかもしれないというのが、僕の狙いだった。

     さっそく読者の一人から紹介された、地元で人気があって読者もしばしば利用するという手打ちそばの店に電話をかけて、話を聞くことにした。当初、電話に出た店主は新聞社の取材と聞いてうれしそうな声だったが、「はい、点字の週刊新聞で、読者の方からお気に入りのお店と伺いました」と説明すると、突然態度が一変した。「ああ、あのお客さんね。正直言って迷惑してるんですわ。ただでさえ人手が足りないのに混んでる時間にやってきて空いてる席まで案内して、メニューを読まされて。点字新聞に載ればそういう方がたくさんやってくるわけでしょ? はっきり言って手間がかかります。取材はお断りさせてください」と言われ、電話を切られてしまった。

     ほかの店からも喜ばれるどころか「うちの店はバリアフリーは何も完備してませんから」「悪いけど全国から食べに来るんだ。障害者に来てもらわなくちゃならないほど困ってねえよ」「コップを倒されたり、店内を盲導犬に歩かれたんじゃかなわない」など、否定的な反応の方が圧倒的に多くてかなりへこんでしまった。

     しかし、考えてみれば当然の反応だったかもしれない。街中の飲食店は障害者施設ではない。視覚障害者専用の新聞なんかに載せられてはたまらないと考えるのも無理はないだろう。障害のある人もない人も当たり前に参加できるユニバーサルデザインの共生社会という言葉は、当時はまだなかった。

     最大の問題は、2020年に東京で開かれるパラリンピックだ。目が見えなくてもできるブラインドサッカー、足が不自由でもボールを飛ばせる車いすバスケットボールなど障害者スポーツはありだと思う。しかし、なぜオリンピックの中に障害者スポーツを入れないのか? 健常者がプレーする障害者スポーツがあってもいいはずだ。どうしてもパラリンピックを別に開催したいのなら、その中に健常者が参加するボッチャやゴールボール種目を設けてほしいと思うがいかがだろう? それならスポーツのインクルーシブデザインだ。【岩下恭士】