5月7日 記者の条件

竹内明さん(写真右)と筆者=提供写真

 4月19日、「ニュース報道から学ぶ心のバリアフリー」をテーマに、誰もが参加できる共生社会を考える特別授業が神奈川県茅ケ崎市の県立茅ケ崎高校で開かれました。

     神奈川県内で3校が指定されているインクルーシブ教育推進校の1校になっている同校は、障害の有無や国籍に関わらず、多様な個性を持つ子供たちが共に学べるインクルーシブ教育に力を入れており、公立の高等学校ではまだまだ少ない地域の知的障害児なども積極的に受け入れています。当日は全校生徒900人が体育館に集まり、スクリーンに映し出された映像や新聞記事を熱心に見つめていました。

     特別授業講師には、ニューヨーク支局特派員として黒人差別の問題などを手がけたTBSテレビ報道局総合編集センター長の竹内明さんと、毎日新聞社の全盲記者である私が登壇、人種差別や障害者差別の現状について分かりやすく解説しました。

     オウム真理教事件や国松孝次・警察庁長官狙撃事件など未曽有の大事件を追った竹内さんは、2015年11月のフランス同時多発テロを取り上げて、イスラム教徒移民2世の実行犯を生んだブリュッセル・モレンベーク地区を「テロリストの巣窟」として紹介。「飲酒が禁じられているはずのイスラム教徒がバーを営み、違法薬物や銃火器などを取引している。テロを生むのは宗教対立などではなく、同じフランス語を話しながら社会からは受け入れられない阻害されたマイノリティーの怒り、白人至上主義による人種差別こそテロの引き金」と説明しました。

     次に、記者の条件について竹内さんは「あきらめない情熱」と「人の意見に流されないこと」を挙げました。竹内さんは「警察庁長官狙撃事件を15年間、取材し続けました。この事件はレッテルを貼ってしまったがために、真実からどんどん離れてしまった。色眼鏡で見ないこと、物事を決めつけないことが大切」と訴えました。

     一方、12年4月23日付の毎日新聞朝刊コラム「記者の目」で私は「オリパラ統合への期待」として、「全世界が一つになることを目指すオリンピックなのに、パラリンピックを別に開いて障害者だけ別扱いするのは史上最大の差別」と訴えました。また、「相模原障害者施設殺傷事件を引き起こしたのは植松聖被告ではなく、問題なのは障害者を閉鎖的な施設に隔離する日本社会。当たり前と思っているニュース報道にも疑いの目を向けてほしい」と話しました。

     竹内さんは21年前、それまで点字新聞の編集に携わっていた全盲の私が新たな形で情報発信する道を開いてくれた毎日新聞の大先輩記者、竹内宏二さんのご子息でした。「あきらめない情熱」のご縁を感じました。【岩下恭士】